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トンネルから出た所で少し強めの風が吹き反射的に目を瞑り被っていた帽子が飛ばされないように手で押さえるが、長い髪は風に捕まり舞い上がった。


(!?凄い風ね、驚いたわ。)


強風が収まるのを感じ目を開くとまだ緩やかに吹く風により靡く髪を目で追い、池の反対側の葉が茂る木々が枝を小さく揺らし合わせた爽やかな音を響かせる様子に意識が向き目を遣りつつ再び歩き始める。


(あれは…?何かしら?)

 

庭との距離が近づいていくと、手前の木の幹で揺れ動くはずのない映る影に疑問を覚え、その場で立ち止まり目を凝らして見れば遠かったが影の主はよく知る人物達だった。


(??…オクラドヴァニア?と…ラヴーシュカ…?あんな所で何をしているのかしら…?)


それは父と話し合いをしている筈のオクラドヴァニアとただいま部屋を整えている筈の自分付きの侍女の1人であるラヴーシュカだった。


(2人だけなの……?え……!?……えええええぇぇ??!)


向かい側は風が強かったのか木の幹の下で身体を寄せ合っていた2人がお互いに見つめ合うと抱きしめ合い口吻を交わしだした。


(…何が?いつから?!いえ!!それより取り敢えずこの場から離れないと!!)


あまりにも衝撃的な場面を目撃してしまい驚きと困惑から立ち竦みかけたが思考が身体を動かし、急いでその場を離れると来た小道を少し速めに戻り始めた。


(取り敢えず此処まで来れ……)


「お嬢様そんなに急いでどうかなさいましたか?」


「?!……リヤン…。」


(あぁ、お茶の事をすっかり忘れていたわ…どうにかしないと…。)


小道を半分程戻るとお茶を淹れる準備をして東屋に向かっていた侍女のリヤンと出会し、自分が何故東屋に向かっていたのかを思い出したがこのまま向こうに戻ることは出来ず何か適当な理由は無いか考え始める。


「ええと…少し体調が悪くなってしまったのよ。お茶は中止して部屋に戻るから貴方も屋敷に戻って頂戴!」


「……かしこまりました。」


が、慌てた思考では良い理由は思い浮かぶはずも無くその上一刻も早く部屋に戻りたい気持ちが勝り、元気よく体調不良によるお茶の中止を伝えると、怪訝そうな顔をしたリヤンをその場に1人残し小道をまた戻っていく。


(何も思い浮かばなくて押し切るしか無かったけれど今はそれどころじゃないのよ!!)


ひたすら部屋を目指し到着すると直ぐに寝室の部屋に入り、勢いよくベットに倒れ込み先程見た光景によって戸惑い混乱した思考を落ち着かせようと枕に顔を埋めた。


(どうしましょうあの2人が付き合っていたなんて誰かに知られたら大変なことになって………あれ?でも知られたら私から婚約解消でき……いえ!待って?もしこのまま知られなかったら?……知られなければこのままでも?…そうよ!!寧ろその方が良いわ!婚姻式を迎えた後ラヴーシュカを伴ってヴィルカーチ侯将家嫁げば彼の相手をする必要は無いし、私は彼の隣に立つだけの白い婚姻生活が送れるかもしれない!そうなれば逃げる理由も無くなるのよ!)


混乱した頭が冷静になり彼ら2人の関係を落ち着いて考え始めると、このまま表沙汰にならずに2人の関係が続いていけば自分にとって大変都合の良い状況が出来上がる事に気がつき世界が一変した。


(……もしそうなったらなんて素敵なの!!!)


余りの名案に先程まで顔を埋めていた枕を胸元に抱きしめ直すと嬉しさのあまり興奮して左右の足を動かしベッドの上で弾ませた。


(あの時は自分を呪ったけど、今はあの時の自分を褒めてあげたい!!)


ある理由から元々誰とも婚姻する気が無く様々な人達との顔合わせも父の手前仕方が無く無視せずこなしていたが、オクラドヴァニアとなら婚姻出来るのかもしれないと無意識に小声で呟いたのを聞いた家令が父に伝えた事により両家同士が直ぐに婚約を決めたらしい。


(あぁ、心配事の無い婚姻を結べるかもしれないなんて…これ以上の幸せはないわね!)


正式に決まった後に理由を尋ね聞かされた、思い当たるが自分の記憶にないうっかりに落ち込みもしたが、そのお陰で態々勘当同然で婚姻後直ぐに飛び出さなくても済む状況になり乗り気で無かった婚約相手との婚姻生活にも前向きになれた。


(こうなったら私が絶対に他の人達から2人を護ってみせる!!)


自分と彼らの幸せの為に密かに応援し護る事を勝手に心に決め、枕から離した片手を前に突き出し握りしめて拳に変えると力を込めた。


(今日のお茶会は気持ちが軽いわ〜。)


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