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難しい顔で儀式を遠くの建物から見続けていたモイヒェルは、ボイティが乗っている神輿が通る場所で舞い続ける大量の花弁のような紙吹雪が時間は掛かっているが出て行った教会の門の方へと近付いて来たことを確認して少し表情を緩ませた。


「然し…うちとは違う派手さだな……。」


「そうだな。」


自分の国とは違う落ち着きのある華やかな婚姻の儀式に漏れる独り言に返って来た同意の言葉の主に辟易して顔が歪んだ。


「………場所を変えたのにまた来たのか?」


「今回他は置いてきたからそんな顔をするよ。」


そう悪戯が成功したような顔で笑うプトゥに冷めた視線を向けた後また正面を向き直り舞い上がっては散っていくその華やかな様子を眺め始めた。


「………。」


「なぁ、何で場所を変えたんだ?」


建物を曲がりまだ距離はあるが後は真っ直ぐ進めば式が終わる所まで進んだだろう神輿に間に合うのかと少し緊張し始めた所で、見飽きたのか少し退屈そうに窓枠に顎を乗せたプトゥが場所を移動した理由を聞いてきた。


「………建物の上からもあの紙吹雪を降らせ始めたから移動した。」


「別に問題無かった場所だろう?」


「……見上げていた者達もいた。そんなの分からないだろう……。」


出て来た時に近くで見た神輿の上でヒラヒラと舞う白や淡桃、濃桃色の紙吹雪が降り注ぎ幸せそうな笑顔で手を振る2人の姿を思い出してしまい、また少しザワついた胸に気が付かないフリをした。


「ッ!!まぁいいや。」


本当の理由は伝えずそれらしい答えを口にしたが何故かプトゥは含み笑いをして肩を震わせ始め、その様子が横目に映り無性に腹が立ったが、無視して少しずつ近付いているのだろうその儚い風景を意志とは関係なく憂いを帯び始めた瞳で眺め続けた。



「……。」


「……。」


教会の門がまた開き始めたのをただ黙って見続け何とも言い難い雰囲気になった。


「ああ!」


が突然隣のプトゥが思い出したかの様に大きな声を出した。


「……お前…?」


プトゥに射殺さんばかりの視線を向けて睨み口を塞ごうと手を伸ばすが後ろに退いて躱されるとニヤっと嫌な含み笑いを浮かべた表情で見つめて来た。


「そう言えば、何かあったらと紛れ込んだダンツァとリウスから伝言があった。」


「彼奴等は勝手に…。」


「花嫁の身体に無数の口吻の跡が付いてるってさ。」


「………そうか…。」


勝手に潜り込んだ2人に脱力を感じたが続くその情報に近くで見た時に既に気が付き、何なら少し動きが可怪しかった首にも何かあるんじゃないかと思い出し眉を顰めてしまう。


「フッ!クックッククックック!!」


「何だよ!」


「いやぁ、お前の顔面白いなって。」


「はぁ?」


「じゃあ戻るな!!」


本当に可笑しそうに笑って消えたプトゥに何とも言えない感情が渦巻くが少し騒がしくなった教会の方に急いで視線を戻す。


「上手くいけば…。いかなければ二度と……。」


初めて祈るような気持ちでギリギリ間に合っただろうその光景が頭の中に浮かんだ。


ーーー


(漸く戻ってきたわ……。)


見覚えのある広い街路に出て来たが、予定より長くなっていた顔見せに表情筋も限界を迎え、いつの間にか目元では痙攣が起こっていた。




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