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「ハハッ!」


「どうしたの?」


いきなり笑い始めたファーレに何が起こったのかと訝しげな視線を向けると小さく首を振り何でも無い事を顕してきた。


「ふふ。茶化してくれて構わないよ。でも本当に夢現の状態で瞳に映る君の姿は美以外の何者でも無かった。きっとあの光景だけならただの崇拝で終わっていただろう。」


(崇拝??)


雰囲気で感じ取ったのだろうが、心の声が漏れたのかと思い心臓が大きく跳ねたが続く全く予想していない言葉に固まってしまい、これの後ろにぞろぞろ付いてくる大勢の同級生達の姿が浮かぶと意思と関係なく口元が引き攣った。


「それがどんな事をしても手に入れたいと思いが変わったのは俺を探しにきた愛犬に舐められている姿を見た時だった!」


「……!?あれを見ていたの?!」


それまで黙って聞いていたがあの現場を見られていた事に衝撃を受け大きな声でファーレに問いただしてしまった。


「あぁ、溺れかけていたからそんなにはっきりと見えていたわけじゃないが、君が犬に戯れられ全身を舐められる度に身体を小さく震わせながら飛び跳ね、口を両手で押さえているのに漏れ出る声、頬が薄いピンク色染まり潤みを帯びでいく瞳……あの時の君は頭から離れなかった。


(……やめて!やめて!やめて!やめて!

やめてーーー!!)


聞かれて嬉しくなったのかうっとりとした表情であの時の事をはっきりと見えていないと言いながらも詳細に語りだし第三者から見た自分の姿に固まり動けずにいると、全身に熱が回り暑くなってくる筈が冷や汗が止まらず顔だけが冷えていき、いい加減耳を塞ぎたくなった瞬間あの時の自分の耳から離れない同仕様も無い言葉をファーレが口にしようとした。


それに犬を止めようと意を決して口から手を離し「まっん〜〜!」


ーーバン!!


瞬反射的に身体が動きファーレの口を自分の両手で強く押さえ続く言葉を遮った。


「…もうその話は…やめて。」


恥ずかしさから下を向き精一杯の声を振り絞り話しの中断を伝え目が潤み始めた視界は少し歪んでいた。


(もう2度と思い出したくも無いのに!!)


そんな思いが届いているのかいないのか、ファーレは優しく両手に触れてくると、身体がビクついた隙に手を外され何をまだ話す気かと潤む瞳で睨み付けたファーレは少し寂しそうな表情に変わってい。


「……その後君を調べてエクソルツィスムス家の令嬢だとわかった。溺れた時に助けて貰ったから会って礼がしたいと父に頼んで手紙を送ったが、まさか礼も婚約の話しも断ってくるとは思わなかったよ。」


「あぁそうなの……。」


その後の自分とは関係にない話しに安心してソファーに座り直して聞いたが、全く知らない話しにきっと父が胃を痛めながら断ってくれていたのだろうと当時事を振り返る。


「それでもまた会えた時に直接伝えようと思っていたのにあの日以降君が公の場に姿を現す事が無く、それで心配になってラヴーシュカを君の屋敷に潜り込ませて様子を報告させていた。」


(ラヴーシュカが来た時と言えばまだ半引き篭もりの時期ね…来たばかりで私の行動に慌てていたわね。)


もう部屋だけの引き籠りには飽き屋敷の外にも良く出ていたが、門外に連れ出されそうになると屋根に上り抗議をしては上まで迎えに来てくれたお兄様と良く落ち怪我をしていた時期だった。


「8歳の頃に……正直に言って少し気持ち悪いわね……。」


余りにも違いすぎる幼少期に本音が漏れてしまうと、あの時に見せた呑み込もうとする笑顔を浮かべだした。


「ハハッだいぶ拗らせているから、君への気持ちはちょっと気持ち悪い何て優しい物じゃないよ。」


「へぇゃ!?」


隣に移動してきたファーレの足で身体を固定されると徐に首筋に手を這わせて来る感触に昔の思い出に浸って油断をしていた口からは声が漏れた。


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