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「……何がかしら?」


もうこれとの話しを続けることを諦め取り敢えず言いたいことを言わせようと続きを促す。


「有能な暗殺者が傷だらけで屋敷に入ってきたり、自分の侍女が婚約者と恋仲になったのを目撃したり、タイミング良く婚約者の浮気が父君にバレたり……そして婚姻後の逃亡資金を稼ぐ為の店のオーナーがボイティだと何故あのシュランゲが掴めないのか?」


「…手紙は何となく…だけど……それ全部…あなたが?」


それは余りにも衝撃的過ぎた。

手紙については想像していたがまさかモイヒェルやラヴーシュカ、シュランゲの件もこれが裏で動いていたとは想像もしていなかった。


「そう全部俺が君と結ばれる為に努力した結果だよ。それにモイヒェルから優良な婚約者候補を探すと聞いていたから君が他の相手を探そうとしたことも知っていたよ。」


「…いえ?…待って頂戴……?だって貴方と知り合ったのは1年前じゃない。モイヒェルは3年前、ラヴーシュカは10年も前には知り合っていたのよそんな事ありえない…。」


ラヴーシュカやモイヒェルに裏切られていた衝撃もあったが、それよりも全てこれより先に知り合っていたよりも前の出来事に、頭が勝手に思い出を遡り始めるが更に混乱を深める一言を告げてくる。


「13年前だよ。」


「え?」


今まで思い出していた日々より前の話しに記憶を探していた頭の中は停止して真剣な表情のファーレの顔を見つめた。


「君と俺が知り合ったのは13年前の5歳の時だ。」


「5歳の時?……そんなの全く記憶にないけれど。」


静かに確信を持った声で告げられるが5歳と言えば殆ど…いや一切屋敷内から出ることなく引き籠り生活を始めた頃だった。


(あの頃に会っていたのは屋敷に居た人だけよね…?あ、でも引き篭もりが1番酷かった頃に確か医師(せんせい)は居たけど…ファーレと関係は無いわよね…?勘違いかしら?)


確実に覚えている程引き篭もりを続けていた時期に会ったというが全く記憶に無い思い出にファーレの思い違いを疑い始めた。


「君はそうかも知れないけど俺は良く覚えている。

乗ってた小船が池で転覆してしまって溺れかけていた時君が助けてくれた。」


「………。」


(あの頃屋敷の中だけで外に出た記憶も、まして同い年の子と遊んだ記憶なんて無いけれど…転覆……溺れ…う~ん…………あっ!?)


余りにも力強い言葉に瞼を閉じて頭を働かせ始めると、奥の方に眠っていた忘れ去りたい記憶と共にその前後の記憶が蘇り池で自分よりも小さな赤髪の少年が溺れていた事を思い出した。


「あの時の年下の小さな男の子?!」


驚きにより目を見開き大きな声で叫ぶようにファーレに閉じた扇を突き出すと、その勢いにファーレも驚いていたがその顔を微妙に歪ませた後に眉を寄せ小さく自嘲した。


「………そうあの頃は君よりもずっと小さかったから年下だと思われても仕方が無かったと思う。」


「………。」


自分が言った一言に居た堪れなくなり扇で口元を隠すと続くファーレの言葉を黙って聞き始めた。


「僕が溺れている事に気づいた君が池に飛び込み沈みかけた僕を引き上げ泳いで岸まで上げてくれたあの時に俺は人魚が助けに来てくれたんだと思った。」


(わぁ、メルヘンね………。)


人魚との何処かで生息している絵に残すことも出来ない程の美しさを持つ架空の存在に例えられ、目が細くなりこれの目と頭の中がどうなっているのかと心配になりながら心の距離は遠ざかった。


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