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ーーー


「…………!!」


「…………ろう?」


「…………ないよ。」



話し声が聞こえて目を薄く開けると声の主がファーレとスヘスティー公将家家長だと分かった。

 

「目が覚めたか?」


「ボイティ!!」


「ファーレ!!お前はそこから動くな。義娘よ具合は悪く無いか?」


「…………。」


誰かが向かい側の相手に対して底冷えする声で言葉を掛けるのが聞こえると、横から心配そうに顔を覗き込み苦しげな声で体調を確認された。


(……誰だったかしら?)


然しまだ働かない頭はその問いかけに言葉を返せずだた相手ををぼんやりと眺めた。


(ここにいるのはファーレ!!とスヘスティー公将家家長?…私何が………!?)


暫くして働き始めた頭がファーレに唇を重ねられた後に意識が薄れていった事を思い出すと視界がはっきりとして横になっている少し怠さを感じる身体を起こし座り直す。


「お義父上様ご心配をお掛けして申し訳ございません。少し怠さは感じますが具合は大丈夫ですわ。」


「そうかそれならば良かった。水は飲めそうか?」


「はい、頂きま…す?」


水を受け取る為に手を伸ばすとそこには赤い痕が至る所に見て取れて気を失っている間に何が起こったのか分からず水を持ちながら一瞬固まってしまう。


「それで君が気を失った数分前より以前に何があったか覚えているか?」


(気を失ったのはそんなに長い時間ではなかったのね。それより…これは…何…?)


「…それは…その…唇を重ねられ……意識を……。」


スヘスティー公将家家長の言葉に気を失ってそんなに時間が経ってない事を知ったが、それ以前に何があったかと問われると口に出すのが恥ずかしくなり途切れ途切れ下を向きながら説明していく。


「その時何か飲まされたりはしなかったか?」


(これは掴まれた時に付いたものではないわよね…?)


「特には…口の中が…その……とても甘かった…ですが…。」


真剣な声で問われ身体に付いた跡が気になりながらも唇を塞がれた時に広がったあの喉を焼くような甘さを思い出し伝える。


「……そうか。」


「だから言っただろう父上、僕は何もしていないって。」


スヘスティー公将家家長は気を失った原因がファーレに何か飲まされたと疑っていたようで何処か納得できないような声を出し頷く姿を横目で見ていると、ファーレが明るい声で疑いが晴れた事を喜んでいた。


(何もしてない事は無いじゃない!!あんな!!こんな!!)


「…………。」


その喜ぶ姿に先程自分の胸元にも除く赤い痕を見つけ怒りなのか、恥ずかしさからなのか分からない熱が顔に集まり暑さを感じながらもこの場では問い質すことも出来ないと黙り込み向かいに座るファーレを睨みつける。


「まだ式まで時間がある。このままファーレは君と2人で話しがしたいと言っているが、どうしても難しいようなら何とかして連れ出そうと思っている。義娘よどうしたい?」


(どうしたいも、こうしたいも、私もこの身体の赤い痣を問いただして…一発蹴り上げて……)


婚姻するからと言っても許容範囲を超えた行為にどうしても我慢が出来ず、父渾身の足技をお見舞いしてやると意気込み、笑みを深くし横に座るスヘスティー公将家家長に向き直る。


「私は構いませんわ、お義父上様。」


(万が一最後までだったのであれば、もう逃げ出す事も離縁も難しい状況に追いやられているけれど、何もしないで泣き寝入りだけはしたりしないわ。)


「…君は本当に、分かった。息子には釘を刺してあるが又何かあればすぐに駆け付けられるよう扉前には人を配置しておくから何かあったら叫びなさい。」


心配そうなスヘスティー公将家家長からの視線を外すことなく微笑めば、何処か呆れたようなそれでいて懐かしいものでも見るような顔に変わり力強く頭を撫でられた。


「………ありがとうございます。」


「気にするな。ああ、それと君の父君と約束した通り婚姻前は守る事が出来た。安心してくれ。」


「………。」


何故知っているのかと問いたかったが、そうなるとどんな状況を見られたのか聞くことになるとヘビが出てくるのが怖くなり顔に集まった熱が冷め少し冷えた気がした室内からスヘスティー公将家家長が扉から出ていく姿を黙ったまま見送った。


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