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そして到着した現在侍女によって支度を全て仕上げられ一人で控室にいるが婚姻式の時間が刻一刻と近づくにつれ諦めた筈の感情がどうしても嫌だと叫び出し逃げ出してしまいたい感情に支配されていた。


(何が怖いものはないよ!モイヒェルもファーレが怖いんじゃない!!!)


ファーレとの茶番劇が始まる前に言っていたモイヒェルの言葉まで思い出し既に原型がわからないほど髪型は乱れていたが、更に乱し頭に付けられていたクラルティダイヤが嵌め込まれた髪飾りは音を立てて床に落ちたが拾うことなくそのままに、寧ろ今すぐに衣装も脱ぎ捨てたかったが布1枚見当たらない部屋ではそれは出来なかった。


ーーートントン


部屋をノックする音が聞こえると声をかける前に”ガチャッ”と扉が開かれ苛立ちの元凶が1人幸せそうな顔で入ってきたのが鏡越して見えた。


「ボイティ…服は着ているようで残念だけど、髪はやっぱり見る影もないほどだね。僕としては君の魅力的な首筋が参列者の目に晒される事が無いから嬉しいよ。」


そう言って近づいてくると乱れた髪を一房掬いあげて自分の唇に当てた。


「やめて頂戴。」


掬いあげられた髪を引き抜き身体の向きを変え不機嫌な顔でファーレを睨むが、いつも通り気にする様子は無く蕩けるような表情のままだった。


「それにしてもいつ私が隣国で商売を始めていた事を知ったの?」


あの日囁かれた言葉は”フリーデンは僕から君への個人的な持参金だ”だった。


パフィーレン姫君の輿入れすら発表が出る前に号外として記事を上げた国一番の情報屋であるシュランゲがこの国の者がオーナーなのではと、情報収集に大金を掛けても辿り着けていないのにただの公将家の子息であるファーレが何故隣国の情報まで知っているのか疑問だった。


「ん〜教えても良いけど君からキスしてくれる?」


「………自分で調べるわ。」


首を少し傾け自分の唇に指先を這わしニッコリと笑いかける姿に、これに何か聞こうなんて間違っていたと考え直し身体の向きを鏡台に戻そうと横向きになると腕を掴まれもう片方の手は敏感な背中をツゥーーッ優しくとなぞられいつも通り抑えられない声が口から漏れると薄く開いた唇にファーレが深く重ねてくると突然口の中はむせそうな程の甘味が広がった。


(本当に何なのこいつ!!)


何が起こっているのか分からず抗議をするためにファーレの胸元を力いっぱい押そうとするが何故か力が抜けていき足に力が入らなくなると彼の服を掴んでまるで縋っているような状況になる。


(何?身体が……。)


長く続くそれに完全に力がが入らなくなった身体は預けるようにして彼に凭れ掛るとそのままゆっくり長椅子に寝かされぼやけていた視界はそこから突然白い世界で覆われた。


(一体何が起こっているの……?)


「ボイティが漸く…僕のものになる……なんて幸せなんだ…


ファーレの声が徐々に何処か遠くから聞こえているようなはっきりとしないものに変わり、全身触られている感触を微かに感じるが、身体の自由が効かず自分の声が出ているのかどうかも分からない、まるで起きたまま夢を見ているような状態だった。


どれだけ時間が経っているのかも分からないが聞こえていたファーレの声が途絶えると少しの違和感の後チカチカと目の前に光が見え身体が急に怠さを感じ、何故か喜ぶファーレの声が遠くから聞こえてきた。


(怖い…。)


まるで獰猛で狡猾な野獣が見つけた獲物を死なない程度に痛めつけているような状況に不安を覚えると目の前の真っ白な風景が変わりよく知る人物が現れ助けを求めるように声を上げた気がした。


(!!!!!)


すると急に頭が何かに締め付けられているのかと思うほどに痛くなり、周りの雰囲気を急に感じるようになったがそれはいよいよ遊びに飽きて獲物を楽にしようとするそれと同じものだと察して逃げ出さなければと思うが頭の痛みにより意識が薄れゆき遠い方からドアを叩く音が聞こえた気がするとそこで意識は途切れた。


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