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「婚姻式後に君と飲もうと用意していたものだ、叶わなかったが2人で飲むことが出来て良かった。」


「……。」


(婚姻式後って……何時かしら?式後はすぐに衣装を変え相手の家で自分の家族も含めて列席者の方々との食事会が行われるからお茶をする時間など無いわよね?

そうなると食事会後の2人きりになった時に飲もうと思っていたという事になるのかしら…?待って!それってオクラドヴァニアって私とのそういうことを以前から考えていたって事!?それはそうよね?でも、ラヴーシュカもいたし……あぁもう!)


少し悲しげな笑顔で話すオクラドヴァニアの言葉に彼が以前から自分と婚姻式後の夜を迎えるにあたって考えていたのだと知り、恥ずかしくなって顔に熱が集中して暑くなってきた。


「顔が赤いようだが大丈夫か?」


「ええ、落ち着いたせいか少し眠くなってきたのかもしれません。」


「ははっ!!そうかそれだけ式前に落ち着くことが出来たなら持って来た甲斐があった。」


「ええっ………。」


「お嬢様そろそろお時間です。」


苦しい言い訳に目が泳ぎオクラドヴァニアは何か気付いたのか心配そうだった顔は破顔に変わり笑い出すと、執事のヴァルターが時間になったと呼びに来た。


「じゃあ私は失礼しよう。」


「私もこのまま出ますので、ご一緒致します。」


オクラドヴァニアは立ち上がり、私も見送った後そのまま教会へ移動する為に立ち上がると一緒に並んで玄関に向かう。


「婚姻式に参加するのでまた後で顔は合わせる事になるがな。」


「ふふ、そうですね。オクラドヴァニア様、お元気でお過ごし下さい。」


一人だったら落ち込んでいただろうこの時間を落ち着くものに変えてくれた彼にもう二度と2人で会うことは無いのかもしれないと外に出ると別れの挨拶をする。


「……ありがとう。ただあの日君の力になれる時には生涯助力を惜しまないと誓っただろう?例え君の名が変わっても何かあれば私が生きている限り何処へ行っても頼ってくれて構わない。今日このまま君を連れ出すことは出来ないがな。」


「……ふふ。とても心強い友人が出来て嬉しく思います。」


そんな私にオクラドヴァニアは心強い言葉を掛けてくれるが、今一番欲しているだろう願いは難しいと困った顔になる、ただその真剣な言葉に嬉しくなり自然と笑いが漏れる。

頼った後が怖いのでその時は来ないと思うが一人でもそう声を掛けてくれる存在がいるというだけで心強かった。


「……友人……そうだな、生涯そう思って貰えるようこれからも努力していく。」


何処か淋しげに笑ったオクラドヴァニアだったが直ぐに持参金はいらないと言った時のように優しい表情に変わると馬車に乗り込みその姿を見送った。


(自分自身が選んだのだもの、人生最悪な日の幕開けの準備に行かなくてわね…。)


行きたくない気持を何とか持ち上げそのすぐ後に玄関の前に到着した我が家の馬車に乗り込み教会へ向かった。


(あぁ、昨日寝るまでは覚悟を決められたのだけれどね………。)



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