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(6)


プロムス達により運ばれて来る大小様々な箱が自室を占領し始め、余りの量の多さに急遽お付き以外の侍女達の手も借りながら箱を開けられてはいるが、1度細部まで確認する為運ばれて来るスピードに開けるスピードが追い付かない状況に紅茶の1杯目を飲み終わり現在2杯目に口を付けた所だった。


(品の数が何時もより多いのは分かるけれど、皆いつもよりも手際が……。)


品の確認に時間が掛かるのは何時もの事だったがそれにしても遅すぎる作業と侍女達の小さな呟きに疑問を覚えながら待ち続け、漸く確認を終えたストメートが最初に私の目の前に品を持って来るとその後は続々他の侍女達も品を手に目の前に広げどんな品が贈られたのか確認していく。


(この品たちは……。)


婚姻後に着るドレス、鞄や靴、手袋等の小物の他に大粒のクラルティダイヤが嵌め込まれた髪飾りやネックレス等の様々な装飾品等、見たことの無い品もあったたが、大半が書類上見覚えはあるが手に取ったことはない品が次々目の前に現れ出した。


「ハハハ…………。」


(いつからなのかしらね…?。)


「お嬢様どうかなさいましたか?」


額に手を乗せ笑いが漏れてしまった事でディーンスが不安気な表情を向けてきたのを確認すると、顔の前で軽く手を振り何でも無いことを示しす。


「いいえ何でもないのよ。持ってくる品が全て素晴らし過ぎてどうしたら良いのか分からなくなってきただけよ。」


「さようでございますか。実は私達も箱を開ける度に手に取るのを躊躇ってしまう品に、思うように作業が進まないのです。」


「苦労をかけるわ。ゆっくりでいいから続きも宜しくお願いね。」


「はい、ありがとうございます。」


ラヴーシュカが抜け一人欠けたお付の侍女達と手を借りている侍女が品を箱から出すたびに、驚き感嘆を上げる小さな声が聞こえるのは何故だろうかと思っていたが、漸く数年、数ヶ月前に見たそのとても貴重な品での注文資料に只々驚いていた自分自身と重なる。

そしてまさかその品達が今自分に届き、目の前にあるという事実に乾いた笑いが口から漏れた。


「………お嬢様、これは……如何致しましょうか?」


「それは、お父様とお母様に1度相談致しましょう。」


(これでは我が家で用意していた品が霞むわね……。)


次から次へと手に持つ品を確認していると、少し困った顔をしたリアンが持って来た真っ白な花嫁衣装を見て、私も同じ様な顔になり家で用意していた花嫁衣裳を思い浮かべ肩を竦めた。


「お嬢様、旦那様方の会談が終わりスヘスティー公将家家長様はこの後も予定があるとの事でお帰りになられるそうです。旦那様が玄関広間にいらっしゃるようにとお申し付けです。」


「分かったわ、ありがとう。これから向かうわね。」


数時間後大量に贈られた品の確認と収納が終わり漸く落ち着いてお茶を飲んでいると、父とスヘスティー公将家家長の話し合いの終了を家令が報せに来た。

一応この後軽い食事の場を用意していたが予定があると言う公将家家長の意向受けて見送られたらしい。


(私としてはあれも来なかったし、部屋で贈り物を眺めただけで終わって気が楽……では無かった、あの品々は充分気が重い物だわ。)


見送りの為に自室から出て階段を降りていると、父とスヘスティー公将家家長と鉢合わせになった。


「ああ、義娘よ良ければ歩きながら少し話をしないか?」


(え?嫌ですけど…。)


公将家家長から笑顔で脇に手を広げられ隣に来るように言われ、心の中で本音が漏れつつ微笑んだまま父を横目で確認した。


「品は確認したかな?」


「………はい、あのような高価な品ばかりを頂きまして大変恐縮する思いでございます。」


父が頷いたのを見て渋々スヘスティー公将家家長の隣を歩くと贈り物について聞かれ、正直に”いつから私を巻き込んでファーレの茶番劇が始まっていたのか分からず頭が痛くなりました。”とは言えず、金額を知っている品に只々こんなに胃が無くなりそうな程良いものをありがとうと言っておく。


「そうか…、それは息子に伝えておこう。それにしても君は随分と肝が据わっているようだな、公将家の夫人としてもこれなら安心だ。」


「…お褒めに預かり光栄です…?」


公将家家長は何かを考えこむように顎に手を置き話す姿に今の会話の何処に肝が据わった部分があったのか全く分からかったが、とても楽しそうに笑っていた。


「エクソルツィスムス子将家家長殿本日は色々と話しを聞く事が出来、大変有意義な時間が過ごせた。これからは我が家でも注意して見ていくので、嫁いだ後のボイティ嬢の事は任せて頂きたい。」


「スヘスティー公将家家長殿こちらこそ頂き足を運んで頂き誠にありがとうございます。それに大変貴重な話しや多大なお心遣いを頂き安心する事が出来ました。娘を…どうぞ宜しくお願い致します。」


(まだ一月はあるのよ…?)


屋敷の外に出ると父とスヘスティー公将家家長は固く手を取り合い何故か嫁いだ後の私について会話をしていたが家長同士の話しに口を挟めず只々静かに聞いていた。


「では義娘よまた式当日に会えるのを楽しみにしているよ。」


「?はい、お義父上様。また式場でお会い出来るのを私も楽しみにしております。」


馬車に乗る前に声を掛けてくれたが次に会うのが一月後と余りにも長い期間の内容に疑問を覚え少し遅れて礼を取り挨拶すると馬車から手を振り帰って行った。


その後すぐに父の書斎に呼ばれ今日スヘスティー公将家家長が来た理由に驚愕する。


「お前とファーレ殿の婚姻の日取りが早まることになった。」


(嘘でしょう!!!!!!!!!!)


それはまさかの婚姻式の延期ではなくの日取りの前倒しだった。

驚きのあまり頭を抱えてしまった私に父は容赦なく話しを続けていく。婚姻は準備に10日も無い程に前倒しされ、既に公将家によって各将家に日取りの変更の案内が届けらているらしい。


(あり得ない!仕事が早すぎる!それより何より!)


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