後編(1)
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「後もう少しで手に入るのね………ふふ。」
白い衣装を身に纏った少女は眼下に広がる街並みを眺め愉しげに嗤っていた。
ーー“カーン ゴーン カーン ゴーン カー………”
ビッダウ国内にある教会の中で1番歴史のある最大規模の教会からは本日執り行われる婚姻への祝福に高低2つの鐘音が雲一つない青い空に響き渡る。
婚姻式を挙げるのは3公将家の1つスヘスティー公将家とあって教会に集まっている列席者は国の最高権力者である光家を筆頭に、公将、侯将、伯将、子将、男将と国の最高責任者や将を冠する家の家長と夫人、その子息、令嬢が勢揃いしていた。
「ファーレ様の婚姻が思っていたより早かったわね……。」
「ええ、卒業してまだそんなに日も経っていないのに急すぎますわ!!!」
「しかも相手は……。」
教会の広い庭先には集まっていた年頃のご令嬢達が本日の花婿であるスヘスティー公将家子息ファーレ・テン・スヘスティーの早すぎる婚姻について話しをしている様だが、涙を浮かべ嘆いている者達が多く、この婚姻を祝福する者は少ないようだった。
「私は何となく分かっていたからそんなに落ち込まないのよね。それにお幸せになられるわよ。」
「……そうかしら。」
「そうよね…どちらもお幸せになれると…良いわね。」
「…ええ。」
「ここで嘆いてばかりもいられないし、私達もそろそろ挨拶に向かいましょう…。」
「うっぅぅ……。そうね……そう致しましょう。」
令嬢の一人が紺色の髪を靡かせ何度目かの祝いの挨拶をする為に囲まれているスヘスティー公将家と光家の面々に目を向け歩き出すと続くようにその輪にいた令嬢たちも歩き始めた。
同じ様な光景は他3名の令嬢が居る場所でも見られたが皆一様に悲痛な面持ちだった。