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十数分後漸く全卒業生が落ち着きを取り戻し卒業式の日にしか使われない壁や床全てが白虹石で造られ、電飾により独特な柔らかさがある光を放つ室内に細やかな装飾品や淡いピンク色の花が空に浮かぶ風景が大きく描かれた絵画が飾られた立食会場に移動すると、給仕達が飲み物をトレーに乗せやってくる。


「皆様飲み物はお持ちになりましたか?」


其々飲み物を手に持つと年配の主任教師が台に立ち確認を始め手に持つグラスを前に出す。


「今後の君たちに幸が多い事を願う。卒業おめでとう。」


短い乾杯の挨拶で卒業パーティーが始まった。


「卒業おめでとう。」


会場の至る所でお互いの卒業を祝う声が聞こえ、私達も例に漏れずおめでとうと近くにいた同級生達とお互いの卒業を祝う短い挨拶を交わすと少し移動してはまた別の同級生と挨拶を交わしていた。


「今度はあっちに行きましょう。」


「そうね!」


次に移動しようすると向かい側から後ろに号泣した同級生を多数引き連れ今だ1人葬式状態になっているファーレが手を振り近づいてきた。


「卒業おめでとうボイティ。」


「……ファーレ……おめでとう。後ろが凄い状態だけれど挨拶に来て平気なの?」


相変わらずの距離と満面の蕩けそうな笑みで挨拶に来たファーレとその後ろに控えている同級生達の温度差に引きつつ何とか微笑みを作り挨拶を交わす。


「何故か皆何を伝えても泣き止んでくれなくて困っているのだけれど、君に声を掛けない理由にはならないよ。」


「……そう。お互いに挨拶も終わったのだから、私の事は気にせず別の場所でゆっくり彼らとお話しされた方が良いと思うわ。」


(義務は果たしたしさっさと別の場所に消えて頂戴、後ろの視線が痛すぎるのよ!!)


流石に最後ということもありファーレの後ろに控えている卒業生の多くは刺すような視線を向けてきたのが分かり心の中で裏手を振りながら答える。


「君には命を助けて貰った返しきれない恩があるからね、これからも何かあれば相談に乗るから気軽に連絡をして。急ぎだったら屋敷に直接来てくれても君なら歓迎するよ。」


後ろの視線に気づいているのかいないのか微妙な言葉を選んで会話を続け、命の恩人との言葉に一瞬雰囲気が和らいだが、その後の言葉に刺すような視線から殺気に変化したものが混じり始めた。


「……ありがとう。その気持ちだけで十分よ。恩と言うなら今後もお付き合いが続きそうな後ろに控えてる方達を是非貴方の御屋敷に招待して下さると嬉しいわ。」


(お願いだから別の場所で後ろの相手をして家に行きたい人を招待して!!)


増えていく殺気に身の危険を感じ卒業後も出来るだけ同級生達が敵に回らないよう会話に彼らへの援護を入れると一気に視線は無くなり穏やかな雰囲気へと変わった。


「僕は頼りないかい?」


(いや、雰囲気感じ取れよ。)


眉を寄せ悲しそうな声で呟き始めると後ろはファーレに同情しつつもボイティを糾弾する事も出来ない微妙な雰囲気に変わった。

心の声が悪くなる程の鈍感さに良い加減苛立ちを覚えてきたが、此処で何かあれば自分の身に降りかかると思い堪えた。


「この国で3家しか無い公将家が頼りない訳ないでしょ。それにヴェルトロース侯将家に嫁ぐ事が決まっているのに同級生と言えど別の男性に気軽に連絡しないわよ。」


「婚姻式は来月よね?おめでとう。」


「そうなの、ありがとう。」


ファーレ個人では無く家を持ち出し結果的に彼を落とすことなく話しを纏め、自分がもうすぐ婚姻する身だと印象付ければファーレの後ろに控えた同級生達から思い出した様に明るい表情で声が掛かり身体を少し傾けて返答すれば口々に祝いの言葉が続き敵ではない事を理解してくれた後ろは明るい雰囲気に包まれた。


「…そうか、そうだったね。」


「ええ、そうよ。」


対照的にファーレの雰囲気が何故か暗くなり力が無くなった声で呟くが、そんな事は知った事ではないと被せるようにその言葉を力強く肯定し、そろそろ移動出来そうな雰囲気に挨拶を済ませようと一歩足を後ろに下げかけた瞬間教師の1人が私達の前に歩み出できた。


「ボイティ・レナ・エクソルツィスムス子将家ご令嬢殿少々宜しいでしょうか?」


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