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「パメラ何の冗談かしら?私ファーレ様とお付き合いなんてしていないわよ。」


「そうなの?この間学院の食堂でその様な話しを耳にしたのよ。」


「婚約者もいて身分差もある人間を駆り出して面白い話しをされる方達もいるのね。」


学院内でありもしない噂が流れる事は多々あったがまさか自分がその話題の人物になるとは思いもしなかったボイティは神輿に乗せた人物に冷めた感情を湧き上がらせた。


「そうよね、何かあったら私達に話してくれるものね。只何故かその話しには妙な信憑性があったのよね。」


「信憑性ね。どんな話しであれどうせ直ぐに飽きて違う噂が立つわよ。」


「そうかも知れないわね。この間噂があったベンタス様とヒルファ様の破局も当のお二人は知らなくて驚いていたものね。」


「ええ、今回も同じ様な物よ。でも教えてくれてありがとう」


「ふふ、どういたしまして。」


以前の噂以上にあり得ない話しはきっと直ぐに鎮火するだろうと思い放置を決め始まった授業に集中した。


「ボイティ、いつからファーレ様とお付き合いしていたの?」


「私達の前では断っていたけど、本当は2人で休日を過ごしているって本当なの!?」


「この前の夜会でボイティがオクラドヴァニア様との婚約解消して、ファーレ様の婚約者になるって聞いたのだけど事実なの?」


(学院の外にまでありもしない噂が広がっているの!?)


いつもの様に学院に登校して講堂に向かうと同級生達に囲まれ、いきなり訳の分からない質問攻めに合いその内容に驚愕した。


「全て出鱈目よ。もし、そんな話しを聞いたら本人が否定していると伝えて頂戴!それと誰が話しをしているのか教えて欲しいの、余りにも無責任で迷惑な噂が広まるのは困ってしまうわ。」


「やはりそうよね!」


「任せて協力するわ!」


(聞いて1週間も経たっていないのに、このままオクラドヴァニア様にも聞かれでもしたら…。)


学院外でも噂が流れ始め予想外に火の回りが早い噂にこれではオクラドヴァニア(婚約者)の耳にも入りかねないと友人達にも協力して貰いながら鎮火に回りつつ噂の出所を突き止めようとしたが他の人から聞いたと答える人達ばかりで首謀者らしき人は見つからなかった。


「ボイティ!久しぶりだね。君に会うことが出来ず寂しかったよ。最近は食堂に居る事が多いのかな?僕も一緒に食事をしても良いかい?」


《ファーレ様!?》


《実は約束していたとか…?》


《やっぱりお二人って…》


ファーレを避け、お昼は彼が来ることのない学食で過ごしていたある日、大勢の取り巻きを引き連れファーレが食堂にやって来た。


(噂の鎮火を待ちたかったのに…ここは、はっきり伝えないといけないわよね。)


顔を合わせてしまっては無視をする事は出来ず意を決して、今度は分かり易く失礼にならない言葉を選び説明を始めた。


「…ファーレ様申し訳ございません。何故か私達が付き合っているというありもしない噂が学院内外で広まっております。お互いのありもしない醜聞によってご迷惑を掛けてしまう相手が出てしまう前に今後一切学院内で関わる機会が無いようにしたいと考えているのですが、如何でしょうか?」


失礼にならない程度に今後一切の接触を断わった筈だったが、何故か徐ろに空いている隣の席に座りこちらに視線を向けて片手を頬に乗せた。


「噂の事は初めて知ったけれど、…僕達を見て良くそんな勘違いを出来る人達がいるものだね。」


「……………。」


「「「「「「……………。」」」」」」


目の前で良く整った輝く笑顔で言い切られ、大勢の生徒が居る食堂内は静まり返った。


(今…私の事を上から下まで見てから言ったわよね。)


あまりの言い分と不躾な視線に言葉を失ったが、それ以来噂は完全に消えさり、その後も変わらず近い距離で側に寄られたが2度と付き合っているという噂が立つことは無かった。


(本当に腹が立つ!!あ、また思い出してしまったわ、落ち着かなければ…。)


そしてあの日を境に必要以上に気を使うことを止め、心の中言葉には言い出せない程の黒塗りの単語で呼んでいた。


……この学院の卒業生として恥じない行動を取り国の為に尽くして参ります。卒業生代表ファーレ・テン・スヘスティー」


《《《《《うっっ…う…グズッ、スン…ファーレ様…うっっ…》》》》》


ファーレが答辞を読み始めると周りはハンカチで目を押さえ堪えきれない涙と数人の悲しみの声が小さく聞こえていたが、読み終わり壇上から降りると悲しみの声は膨れ上がり明るくいつもより華やかな講堂は悲壮感に包まれお目出度い式はまるでファーレの葬儀のような状態に変わった。


(……。生前葬ってこんな感じなのかしらね?)


講堂内に響く悲痛な声にサロンで聞いた北の大陸で流行っているらしい、生きている間に開かれる葬儀の事を思い出しながら、この状況に困惑しているであろう壇上にいるお偉い方々を眺めていると少し慌てた副学院長が演台の前に立ち普段聞いたことがない明るい声で閉式の辞を読み終わり卒業式(?)は全て終わった。


「ねえボイティ?」


「どうしたのアミ?」


「婚姻したら、やはり旦那様とお呼びしなければならないのかしらね?」


「……2人の時は名前でも良いと思うけれど……


この後は隣に用意されている立食会場に向かうのだが卒業生のあまりの状態に少し休憩を挟んでからの移動になると誰も居なくなった壇上の上で教師の一人が説明するのを聞き、葬儀に参加していないアミと2人婚姻後に婚約者を何と呼ぶべきかどうでも良い話しを始めた。


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