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「2ヵげ……数日ならね。長期間は流石に4、5年後じゃないかしら?そんなに早く出て行って離縁って事になっても大変だもの。」
私の言葉に当時を思い出したのか納得顔のモイヒェルは隣国に渡る日に話しを変えてきたが、あまりにも早すぎる時期にいくら相手から了承を貰っていても、嫁ぐヴェルトロース侯将家に残っている問題や挨拶周りで婚姻直後に長期間家を離れるのは難しい。
何よりせっかく素敵な旦那様を手に入れられそうな状況なのにできればお別れは考えたくなかった。
「了解オーナー様。じゃあ数ヶ月後の日程が決まったら教えてくれ紹介する人数が多いから早く声を掛けておかないといけないからな。そして早く新しい店を増やしていこうぜ。」
「ええ!私も会えるのを楽しみにしていると伝えておいて頂戴、社長様。」
「ああ、伝えておく。」
隣国に行く日程が決まり次第働いている全員を紹介してくれるらしい。
(会うのはとても楽しみだけど、次のお店の計画を早く決めなければならないわよね。)
全員の紹介が終わるまでは店舗を増やしたくないと言っていたモイヒェルの言葉にもう少し先の話しになりそうだと思っていたが、案外早まりそうな展開にまだ練っている途中の計画書に頭が少し重くなった。
「ああ、じゃあまた来月な。」
「ええ、宜しく。」
報告や話しが全て終わり次に会う約束を口にするとモイヒェルは窓辺に向かった。
「どうしたの?何か報告を忘れていた?」
いつもなら直ぐに姿が消えてしまう筈だが何故か未だ佇んでいる様子に言い忘れていた事があったのかと疑問に思って声を掛ける。
「……一応忠告しておくけど…、今の姿は旦那になる奴にだけ見せた方が良いぞ。」
「…気をつける……わ。」
もう部屋には居ないモイヒェルにそう告げると顔をベットに埋めた。
(なんて姿を…恥ずかしすぎるわ。)
今の自分の状態を確認すれば悩みによって乱れた髪に無意識に膝から下の足を交互にベットに弾ませていたせいでドレスのスカートが捲れ上がり太ももの裏側が露わになっていた。
モイヒェルが途中で苦言を伝えてきた理由に納得すると“カツカツ”と寝室にノック音が響いた。
「お嬢様明日の衣装をオクラドヴァニア様から頂いた品と合わせて再度確認致しますのでフィッティングルームまでいらして下さい。」
「分かったわ。少し待っていて頂戴。」
先程化粧箱を渡したアンキラの声が聞こえると居住まいを正し髪に櫛を通してから部屋を出た。