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今だにベットうつ伏せのまま起き上がることなく資料に目を向けている私にモイヒェルがまた文句を告げてくる。


「……必要?」


「おまっ……いや、別に良いけど珍しいな?」


(確かにいつもより緊張感は無いかもしれないけれど自分の部屋で寛いで何が悪いのかしら?)


不機嫌を露わにしてみせると彼は自分の手に顔を埋め下を向いて溜息を吐き、何かを諦めたように再び顔を上げると今度困った様に眉を寄せ肩を竦めてみせてきた。


「……今日のお茶会でオクラドヴァニア様から聞かれた言葉の意味を考えて少し疲れているのよ。」


その顔と行動に何処か罪悪感を覚えて今日の気が張らない理由を資料から手を放し伝える。


「へぇ~。どんな話しだ?聞いてやるから言って見ろよ。」


「えっう~…………そうね……貴方なら何か気づいてくれるかもしれないわね。」


モイヒェルは口角を片方上げた笑みを浮かべて面白がっているのだろう揶揄うように悩みを聞いてきたその姿に少し迷ったが、1人で考えても答えが出ないだろうと今日のお茶会での出来事を簡単に説明した。


「……お前本気で言ってるのか?」


「…本気よ?何か気が付いたみたいだけど、どういうことだと思う?」


最初は真剣に聞いてくれた彼は途中から何故分からないのかと言いたげな表情になったがそれでも最後迄聞き終えてから自分では考え付かなかった答えをくれた。


「あのな、明日学院卒業だろ?自分みたいにお前にも想いあっている相手がいるんじゃないか、婚姻前に確かめるために聞いてきたんじゃないのか?」


オクラドヴァニアとラヴーシュカの件を伝えていたモイヒェルはどうやらオクラドヴァニアが私にも同じ様な相手がいるのではないか考えて聞いたのだろうと面倒臭そうな顔で話してきた。


「何よそれ?そんな相手いないでしょ?」


「自分の事だろ聞くなよ!それにお前1度変な噂が立っただろう!!」


あまりにもあり得ない話しにとても自分の事だとは思えず誰か別の話しを聞いている気になったが、モイヒェルの指摘に納得し相手の思惑が分かり面白くなった。


「っふフフフフフ!確かにそうよね。それに、自分が想い合っている相手がいるから私にもって考えたのならあの質問にも納得出来るわ。それなら婚姻せずともオクラドヴァニアには違約金って形でお金が入ってくるのだから損はしないし、ラヴーシュカとの事を知らなければそれも良かったかも知れないわね。」


「お前……。オクラドヴァニアは善意だったかもしれないだろ?それに、仮にそうだとして言ってて悲しくならないのか?」


オクラドヴァニアとの関係が変わっていたことで空元気に見えたのだろうか、少し心配そうなモイヒェルに本心だと伝わる様にお店が軌道に乗り始めた頃に伝えた言葉を選んで話す。


「ならないわよ。寧ろ婚姻した後にどう逃げ出そうか考えていた頃よりずっと幸せよ。」


愛など無く家同士の結びつきや金銭によっての婚姻がこの社会では常識だ、後者での婚約を結んだオクラドヴァニアにもし善意があったとしても極僅かだろう。


(でもそれなら少し失敗したかもしれないわね……。)


そんな事よりも、もしそれが事実なら家を長期間家を開けたいなど手の内を明かす様な話しをしなければ良かったと少し後悔した。


「あぁ…、そう言えばそんな事言ってたな。それで?2ヶ月後にはこっちに来るのか?」


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