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う〜んう〜ん。と先程のオクラドヴァニアが聞いてきた言葉の意図を考え1人ベットの上で唸っていると部屋の中で風が通るのを感じた後見知った人物が寝室に入っていた。


「ああ、モイヒェルいらっしゃい。お店の調子はどう?」


黒い艶のある髪を横に流し白のシャツに黒のストレートパンツとラフな出で立ちで入ってきたのはとある事情で知り合った暗殺者のモイヒェルだった。


(今日に予定を変えたのを忘れていたわ……。)


今は別の事で忙しく暗殺業は他の人に任せて休業状態になっているそうだが、その腕は落ちることなく偶に狙われては相手を片付けて別の道に引きずり込んでいるらしい。


「……お前、令嬢辞めたのか?」


全く起き上がらない私に金緑の瞳で訝しげな視線を向けてくると失礼な事を言ってくる。


「残念ながら今の所その予定は無いわね。今はエクソルツィスムス子将家のご令嬢様で、1ヶ月後にはヴェルトロース侯将家のご夫人様よ。」


確かに気安い関係の間柄でもベットの上で大の字に寝転びているのは少々見苦しい体勢なのかもしれないが

今は起き上がる気にはなれなかった。


「はぁ…。そうか、では御歳18歳であらせられますエクソルツィスムス子将家のご令嬢様、今月のフリーデン()の売り上げをお伝えに参りました。ざっと8千億ザーラでございます。」


「………8百億?」


丁寧な言葉で嫌味を言われたがそれすら気にならない程の月の売上が聞こえてきて、そのありえない金額にそんな訳は無いと自分の聞き間違えか、モイヒェルの言い間違えだろうとそれとなく一桁違う数字で聞き直す。


「違う、8・千・億・だ!ただ金持ち連中の我儘のお陰で実入り自体はそれ程多くは無いがな。ガーラ山脈はポイントとしてはいいけど採掘となると開けすぎていて盗賊たちのいい的になるから行きたくなかったんだよ…、それにサワー泉も大泡蟹が………


先程より大きな声でゆっくりと金額を伝えてくるモイヒェルに言い間違いでも聞き間違いで無かったのだと売上に驚きかけたが嫌そうな顔で理由を語る姿を見て納得した。


「それに今回の注文やたらと細かいから羽消虫の糸が必要だけど今の季節皆羽化してるから、清盤の山奥に行かなきゃならなかったし………


入手困難で貴重な品の注文が次から次に入り納期迄に集まりそうも無く、仕方なく今回は彼も採掘や採取にあたったらしいが余りにも険しい場所に行かなければならなかったらしく、どんな酷い目にあったかと文句めいた話しは止まらず、その勢いに口を挟まず聞いていたがビッタウ国ではお目に掛かれない珍獣や植物の名前の羅列にどこまで採掘や採取、討伐に行ったのか、そしてその危険な荷物達をどうやって隣国に持ち込んだのか想像するだけで頭が痛み重くなっていく。


「……そう分かったわ。では諸経費を除いた額はどのくらいか教えて頂いても宜しいかしら?」


1時間程聞き続けていたが勢いは止まらず寧ろ加速していく事にまだまだ話し足りない事は分かったが、このままでは何時ぞや体験した深夜まで続いた愚痴話しを思い出し、いい加減話しを戻してもらおうとまだ語っている途中で口を挟んだ。


「………ほら資料だ!その他にも手に入れられなかった珍しい毛皮と宝石の仕入れと人件費で8割以上は持っていかれるな、今月の利益は1割弱残れば良いとこ上出来だ。」


ジト目で不満を訴えられたが直ぐに数十枚閉じられた厚めの資料を足元に投げて渡してくるとベッド横の鏡台の椅子に腰掛ける。


「その利益でも大体半年分でしょ?それに見る限り仕入れた物も採取した物も全て使った訳でもなさそうだし、次の衣装か装飾、小物で使えれば今回の仕入れ値分をもう少し回収出来るのだから良いのでは無くて?無理をさせた従業員に特別手当てを付ける采配も見事よ。」


資料を手に取ると大の字からうつ伏せに体勢を変え目を通し始める。


(相変わらず良くこれだけの品を短期間で集めて商品を作ったわね…。あら?これ満揺火炎山迄行って来たのね。これは端夜猫?兎氷籔まで?…本当に凄いわ。)


今回オクラドヴァニアから贈られた品も載っていた資料を確認しながら業者顔負けの入手困難素材と、その素材で作った衣装や小物や装飾の資料を眺めて何処からスカウトしてきたかは知らない、暗殺者達と針子、職人達の腕にいつもながら感心する。


「お褒めに預かり光栄ですよ。お前が面白いことを考えて雇ってくれているから俺らも助かっている。それにお前が卒業すれば店舗を増やしていく計画も進めていけるし、良い待遇の店だと働き口を探している奴らに話してもらう必要があるからな。」


「ふふ、モイヒェルにあの夜に計画を話してみて本当に良かった。あなたとならどんな事でも出来そうな気がする。」


「………そりゃどうも。」


恥ずかしいのかぶっきらぼうにお礼を伝えて来るモイヒェルを見て


『俺と手を組んで損は無いと言う話しだけど?どうだ?』


本当にあの時助けて良かったと渡された資料の続きに目を通しながら出会った頃をの事が蘇る。


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