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遺顔絵師~はじめての花束を、君に~  作者: 雨愁軒経
第四章 君にブーケを
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エピローグ -HAPPY BIRTH DAY-

 【美人すぎる天才画家・姫彼岸合歓に、意外な真実!?】

 今月八日より、都内某所のイベント会場にて、画家・姫彼岸合歓の個展が開催された。

 学生時代の華々しい台頭から、しばらく界隈に姿を現していなかった彼女だったが、昨年の春から活動を再開して以降、その端正な容姿と美しい筆致、『遺顔絵師』としてのミスリアスな一面に魅了されるファンが後を絶たない。

 話題沸騰中の彼女ではあるが、ファンの間では、これまでとある噂が囁かれていた。それは、画家・イラストレーターとして活躍しているヴィクトー・ブライデン氏との熱愛だ。

 しかし、今回の個展で初披露された作品によって、ファンたちに激震が走っているという。

                  ……【記事の全文を読む(有料会員登録)】






 控室のソファーにもたれてスマホを眺めていた合歓は、手足をばたつかせた。


「これを見てくれアイリス! 私はどうやら、ブライデンと付き合っているらしいぞ。ひい、ひい、お腹痛い。いやないないないない! あははははっ」


 笑い転げる合歓とテーブルを挟んで、アイリスが眉間を揉んだ。


「ええ、把握しておりますわ。それもこれも、貴女に画家同士の繋がりがないせいですのよ?」


 解ってらっしゃいます? と向けられる半眼にも、合歓はどこ吹く風だった。


「必要性を感じないんだもの。奴ら二言目には遺顔絵師遺顔絵師って、そればっかりでぜんぜん面白くない。たまたまブライデンだけが、直接私の作品に批判をしてくれるってだけさ」

「はあ……週末のパーティに連れ出さないと駄目かしら」

「今度は誰と熱愛報道がされるかな?」


 アイリスはテーブルに額を突っ伏した。 


 あの日から一年。合歓は、彼との約束通り、表舞台に向けた絵にも意欲的に取り組むようになっていた。

 一度出遅れたスタートから取り戻すのは容易ではなかったが、元々画家の間では異端として名が通っていたことが功を奏した。彼らが野次や嫌味をSNSで呟いたことで、かえって注目される機会が増えたからだ。


 そうして迎えることとなった今日の個展。入口では優美な自然の風景が出迎え、ファンの間で『ゲテモノグルメ』と呼ばれる合歓《《お得意》》の創作絵も交えながら、奥へ奥へと導いていく。

 そうして辿り着いた展示スペースの最奥が、今回の目玉だった。


 『一期一笑』と題されたその区画は、「いっそ遺顔絵も展示してみません?」というアイリスの提案を契機に企画されたもの。

 今日のために西へ東へ頭を下げて回り、三日だけという約束で借り受けた、姫彼岸合歓の出会いの軌跡だ。

 百人百様の笑顔の中には、家族が寄り添ったものや、白無垢と羽織袴が並んだものもある。

 そして、心優しい母と姉に挟まれるようにして、区画の中央に展示されている一枚絵。それが件の記事にも書かれた話題の作品だった。


 二日目の開場まで、まだ時間がある。人気のない中、合歓は彼の下へと逢いに行く。


「激震が走ってるってさ。大注目だぞ、君」


 チューリップを額のように添えた、少年の笑顔。


「私は一歳になったよ、右近くん。どうにか元気にやってる。野菜も、ポテトなら食べるようにしているよ。ただ、やっぱり君がいないと色々と手が回らないな。ほら、髪なんかこの通りだ」


 合歓は、ばっさりとショートボブにした後ろ髪を指に絡めて見せて、頬を緩めた。

 彼の前でだけは、画家の姫彼岸合歓から、一人の姫彼岸合歓としていられた。

 目を閉じ、独り言ちる。


「ハッピーバースデイ。行ってきます」


 再び目を開いた合歓は、よっしと気合を入れて画家の顔になり、身を翻した。




――遺顔絵師~はじめての花束を、君に~(了)

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