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天外~ユキの過去~

ちょっと過去話

5歳になった私は王立魔法学校に預けられた。元から私は魔力が強い人間で無意識に身の周りのものを浮かしてしまうなんてことがあったくらいだ。よい言い方をすれば魔法の素質があったといえよう。だが悪い言い方をすると、それはただの化け物であった。この世界でも魔法を使いこなすにはそうとうな訓練が必要なのだ。だから、子供が魔法を扱えるなんてことはあまりない出来事なのだ。法学校に入ればきっとそんなことを言われることも減るだろうと思っていた。魔法学校には魔法を扱うために生徒が集まってくる。とはいっても周りの人たちは10歳くらいのお兄さん、お姉さんが多かった。他の子たちよりも魔法を扱うことができた私はやはりここでも気持ち悪がられた。

この魔法学校の校長はマナという魔女が務めていた。マナは当時最強の魔女として有名だった。かつて魔王を倒した勇者のリョウという魔法使いをはるかに上回るという。マナについた異名は天上天下唯我独尊だった。それくらい魔法においてマナの右に出るものはいなかったのだ。

マナはよく私の前に現れてこういった。


「いまが耐え時よ。きっとあなたにも幸福が訪れる」


だが、そんなこともなく、異物である私はすぐにいじめの対象になった。5歳児だったわたしは力で抵抗することはできなかった。

だが、魔法でなら、圧倒することができた。


「よう、天外。今日はなにしてんだ」


10歳の男の子三人が私によって来る。天外というのは天上天下唯我独尊と対比されてか私につけられた名前だ。この世のものではないものという意味でつけられたらしい。男の子のうちの一人、リーダー格の子が私に殴りかかってくる。

だが男の子は殴れない。

わたしが少し思うだけでそれは実現される。

男の子は宙に浮く。

そしてそのまま遠くへと飛ばされるのだった。


「やばいぞ、こいつやっぱり天外だ!!」


そういって男の子たちは逃げていく、これがいつもの日常なのだ。そんな私だが、何年も耐えてこの学校で魔法を学び続けた。だが講義を聞くことはなかった。基本理論の授業なので4属性がどうたらとか魔力と生命エネルギーがどうだとかそんな話をされていたが私には関係ないものだとすぐに分かった。属性なんて考えなくても火を考えれば火は現れる。水は湧き出るし風は吹く。土は地面にいくらでもあるじゃないか。わたしが一番真剣に取り組んだ授業は実技の授業だった。おかげで今でも応用力だけは誰にも負けない。こんな感じの学校生活を送っていて事件は起きた。学校に通い始めて5年目だ。あのときは10歳だった男の子ももうすでに15歳。わたしが10歳だった。あのときの男の子たちも魔法をそこそこに使えるようになっていた。


「なぁ、この天外、今日はどうしてくれようか」


魔力で私のことを縛っている。5人で縛ってようやく私を縛れているくらいの魔力だった。なんならまだ私の力で解ける程度の力だ。


「こういうのもあるぞ」


ファイアボールを構えていた。

炎の玉が私をめがけて飛んできた。

喰らうふりでもしておくか。

やつらには見えない速度で薄い水の壁を体全体にまとわせてダメージを軽減する。


「楽しそうじゃないか」


そこに突然知らない男が現れた。

君たち、その女の子をちょっとこっちに渡してくれないかな。


「何言ってんだ。おっさん。俺たちは国防軍になる人間だぞ。ただのおっさんごとき」


おっさんにむけてファイアボールを5人が投げた。だが、おっさんに全部跳ね返されていた。


「弱いな。お前たち」


男の子たちはやられていた。あの程度のファイアボールでこんなにもダメージを受けるだろうか。


「あんた、何者」


「俺はお嬢ちゃんに用があるんだ。鑑定スキルでわかるぞ。お嬢ちゃんの異常さが。その歳でこの能力値…私は君を仲間にしたい」


「断るわ。私は天外として一人、孤高に生きていくの」


「生意気なクソガキだな」


私も彼らと同じ程度のファイアボールを準備する。

だができない。

彼らの魔力は弱すぎて再現できない。

もういいや。

あきらめて自分のできる最大限に弱いファイアボールを準備した。

男に向けて放つが、やはり跳ね返される。


「ウォータウォール」


水の壁で炎を相殺する。かなりの水を用意した。やはり、あいつは跳ね返す力を持っていて、しかも威力を跳ね上げていた。


「残念だ。異世界転生者のおれのチートスキルは魔力リフレクター。すべての魔法攻撃を跳ね返すのさ」


絶望的だった。魔法しかできない私にとってそれは絶対に倒せない敵だった。どんなに応用力をきかせても倒せない敵だ。これが私が初めて出会った異世界転生者だった。


「さぁ、あきらめて私の仲間になるんだな」


目をつぶってしまった。ここで終わりだと。いいんだ。どうせ生きていてもいいことなんてないんだ。


「ウィンドランス、ロックマシンガン」


見知らぬ男に岩の雨が降り注ぐ。


目の前にいたのはマナだった。


「生きることをやめるな。お前はつよいだろうが」


天外なんて呼ばれて調子に乗っていたの私はおろかだった。周りから圧倒的な力で恐れられていたはずのわたしはいつしかそれが気持ちよくなっていたのだろう。孤高の存在としてのそれを。だが、まだまだ上がいることを私は知ってしまった。


「マナ先生。異世界転生者ってのはどこで戦えるんですか」


「おかしいことを言うのね。天外が天外のものに興味をもったかしら」


「わたしはまだまだ強くなれる気がするんです。私の魔法はまだまだ成長できる。天上天下を超えたい」


こうして私も5年後に魔法学校を卒業してガーディアンに所属することになる。マナ先生のおかげで私は異世界転生者と戦える役職を与えられた。ちょうどそれに見合った実力を持った人間が2人ほかにいるという。孤高を目指した私はいつしかこの2人が大切な仲間になっていた。

あのとき、マナ先生が救ってくれていなかったらいまごろ私はいなかっただろう。

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