各国情勢
王都に戻ると早速王城に向かい、国王様に報告にきた。
「さて、よくぞ戻ったぞ。三人、いや、二人かな」
カイトは王都につくとすぐに病院にむかった。アルベルトとユキは早速土の国で起きたこと、そして土の国で見たテイマーの記憶について話す。テイマーの能力。テイマーによって壊滅させられていた国の話。異世界転生魔法の話。不死鳥の話。シルヴァ様もとても驚かれた表情をしていた。
「不死鳥の炎か…おとぎ話でしかきいたことないぞ…」
シルヴァ様もグラン様と同じ反応をしていた。親子って感じがした。
その後シルヴァ様からはアルベルトたちが王都を離れていた間におきた各国の情勢について教えてくれた。土の国については知っているのでそれ以外の王都を含めた4つの国についてだ。
まずは西にある風の国こと機械帝国だ。この国はもともと様々な問題を抱えていた。そもそも4か国戦争で勝った土の国によって定められた4か国協定によって王都が作られている。つまり王都は平和の象徴なのだ。だから王都の名前もピース・クアトリアという名前になっている。だが、機械帝国だけはちがった。4か国協定のあとも軍事拡大政策をとっている。王都に向けて常に砲台を向けている状態なのだ。
そんな機械帝国は土の国が異世界転生者によって落とされたというニュースを聞いてさらに軍拡に動いたという。もっともこの国だけは国交もまともにないために正確な情報を得ることができないという。
次に北にある火の国だ。火の国も平和路線に動いている国だ。4か国戦争で激しい戦いを主に繰り広げたのは機械帝国と水の国だった。今回の土の国の事件を聞いてもとくに動きを見せることはなかったという。念のためなにがあってもいいように国防軍はいつでも出動できるような体制を作ったという。
そして南にある水の国。ここは海に面しているきれいな国だ。かつて魔王を倒した勇者の一人であるリョウ様が治めている国だ。10年前の国王の独裁体制が国民の反感を買い、リョウ様のもと反乱軍がたちあがった形になっている。あたらしく国が出来上がってまだ10年しかたっていないこの国は異世界転生者なんかに国をのっとられてたまるかということでかなりの警戒態勢をとっているという。まぁ、当然の対応でもある。
最後に王都だ。王都は4つの国に囲まれた真ん中に存在する。これだけ他の国が争いに備えた体制をとっているといつ大きな争いが起きてもおかしくない。立地的にも戦場になりかねない。これらを考えて国防軍ガーディアン、そして冒険者ギルドの登録者の半分を王都の中に常駐させることにしたという。
これだけの緊迫状態ならば仕方ないことなのだろう。
「というわけで冒険者ギルドはいま人手が足りんのだ。そこでどんな状況でも対応ができるであろうお前たちに冒険者ギルドの手伝いをしてほしいのだ」
というわけで冒険者ギルドの仕事を手伝わされるはめになった。シルヴァ様はどんどん勝手に話をすすめてしまう。
今回受注したクエストはエルフの森でのクエストだという。エルフの森になにか怪しい魔物が現れているという。
「だが、わたしはこれを…」
「異世界転生者の仕業じゃないかとにらんでいるわけね」
シルヴァ様がしゃべっているところをユキが遮るような形でしゃべった。よろしく頼むと国王は言ってそのまま俺たちは王城を後にした。
場所は変わって王都内病院。
カイトはいつもの天井を見ていた。この光景に見慣れすぎていた。天井のマス目の数がはっきりとわかるくらいにはこの天井をみている。
「また来ちゃいましたね」
エリーの声だ。
「でも、君が作ってくれた回復の魔法陣のおかげで助かったよ」
カイトはエリーに喜んでもらいたくて言った。しかし、エリーはきょとんとしていた。
「カイトさん、その魔法陣は発動していませんよ。まだ、命の危機に関わるようなダメージを負っていないみたいです」
アルベルトのパンチを直接食らって壁に叩きつけられて骨が何か所か粉砕してもまだ生きていられるなんて人間って頑丈なんだなと思った。カイト自信も不思議に思っていた。なんで自分のからだはこんなにも丈夫なのか。普通ならば死んでいるであろうダメージも回復してしまう。まぁ、この体のおかげでいまの仕事に就けているというのはあるので文句は言えないのだ。
そんなことを考えているとアルベルトとユキがお見舞いにきた。
「もう、このベッドあんた専用のベッドになってるじゃないの」
ユキがいつもどおり煽ってくる。
「はい!カイトさんのためにいつもあけています」
エリーが満面の笑みで答えている。そんな他愛のない話をしている中でユキとアルベルトからエルフの森でのクエストについて聞かされた。なるほど、僕は今度は得体のしれない魔物のおとりになるのかなんてことをこれを聞いたときに考えていた。まぁ、仕方ない。それでこの二人に貢献できているのだから。喜んで役割を果たすさ。こうして俺たちの次の目的地がきまったのだ。