ようこそ土の国へ
土の国編本格的にスタートです。
東街道をしばらく歩くとようやく土の国の門へとたどり着いた。国王からの通行許可証を門番に見せる。異世界転生者の手に落ちたといわれていたわりに国自体は通常営業をしているかのように見える。
「カイトさん、アルベルトさん、ユキさん、ようこそ土の国へ」
目の前にいたのはグラン様だった。グラン様は王族のなかで次男にあたるお方だ。きっと今後もこの土の国の王として国を治めていくだろう。
「グラン様、ご無事でしたか」
「あぁ、一時期、土の国は異世界転生者によって壊滅的な状況に追い込まれたが、いまはこの通り平和をとりもどしましたよ。立ち話もなんですので王城へどうぞ」
グラン様の穏やかな表情からこの国の平和を読み取ることができる。グラン様の説明によると魔王が倒されてから勇者が勇者の道を通らなくなった影響で土の国を訪れる人間も減ったのだという。そうなると困るのがお金が回らないことだ。物は売れない、お金は入ってこない。国として絶望的な状況に追い込まれたという。かなり貧しい時代がこの土の国に訪れた。そんななかグラン様が考えたのは新しい時代の在り方だった。魔王が倒されたということはこれからの時代、人間と魔物が対立する必要がないというのがグラン様の考え方だった。つまり、この国の一部の機能を魔物に任せるという発想だった。
「そんなことが本当に可能なんでしょうか…」
ユキはかなり驚いた表情でいた。だが、そんな驚きとは裏腹に、たしかに魔物が工事現場で働いているところを見せつけられる。
「ユキさんはたしか、魔法についてはかなり有名なお方でしたね。ですが、あなたでも知らない魔法はまだまだあるはずです。そのうちの一つがこれです」
グラン様が両手を顔の前にあげて構えた
「武装ゴーレム」
目の前にいたゴブリンにゴーレムの土片がまとわりついた。ゴブリンの肩やひざのところに土がついている。ゴブリンの動きが止まった
「この魔法で魔物の動きをコントロールできるのです。試しにこのゴブリンに尻文字でも書かせましょうか」
そういうとゴブリンは尻文字を書きだした。ゴブリンのこんな動きはみたことがないがやわらかい動きでくねくねと尻を動かしている。
「あ、わかった!ようこそだわ!」
ユキが嬉しそうに答える。
「はい、正解です。これができるんです、私の魔法は」
この魔法を使って魔物に復興をしてもらうことで、また魔物が働く国としてちょっとした観光地として盛り返していたという。
「ようこそ。こちらが王城になります」
王城の中は王都にある王城とそこまで変わらないものだった。そもそも土の国にいた王族が4か国戦争に勝利した結果、王都に移住したとされている。つまり、中身が同じというのはその歴史の証拠の一つなのだった。ある意味見慣れたこの光景になつかしさや落ち着きを感じる。王城の中に入るとまず早速城内食堂に案内された。やはりここも王都のものと同じようなつくりになっていた。
「どうぞそちらの席にお座りください」
真ん中に大きな長いテーブルのある部屋。壁にはよくわからないが絵が飾られている。飾られている絵も王都でみたことあるようなものだった。テーブルに着くとグラン様が手をパンパンと叩いて食事の始まる合図になった。次々と料理が運ばれていく。
「いやぁ、重たい荷物を持ってたからおなかすいてたんだよ、いくらでも食べれるな」
アルベルトは目の前に出てくる料理を掃除機のようにどんどん体の中に入れていく。
「さて、そろそろ」
グラン様はそういうと何か険しい顔をした。
「グランロック」
僕たちの座っていた席と一緒に僕たちは土で固められた。
「グラン様、なにをするんですか!」
僕は慌てる。
「簡単なことさ。この国のことを知られた。だから消すだけ」
何を言っているのかわからない。
「グラン様、冗談がきついですよ」
グラン様からの返事がない。
本気の顔をしている。
「もうすぐ魔物がくる。お前たちを消すための魔物だ。ここまでご苦労だったな」
どういうことだ。
なにを言っている。
頭がまったく追い付かない。
アルベルトに視線を送るが、アルベルトは目をつぶっていた。
ユキはグラン様だけを見ていた。
二人はいったい何を考えている?
グラン様が食堂を後にした。何が起きているのか全くわからない。
グラン様の姿が完全になくなったのを確認してもう一度ユキとアルベルトに視線を送る。
「じゃ、カイト。身代わりよろしくね」
ユキが不気味な一言をいった。
「空間転移魔法ワープ」
ユキは土の塊の外に移動した。
それと同時にアルベルトは土の塊を筋肉で破壊した。
「ちょっと!二人とも!僕も助けてよ!!」
「いや、カイト、身代わりが必要だ。俺たちが解放されていることがばれないように、ここで騒いでいてくれ」
アルベルトが説明をしている間にユキが偽物のユキとアルベルトを造っていた。
「んじゃ」
そういって、ユキとアルベルトはグラン様の向かっていった方へと行ってしまった。
僕は広い食堂においしそうな料理の香りと一緒に取り残された。
次回、衝撃の事実、そしてアルベルトとユキの本気バトルの始まりです。
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