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疑似アイテムボックス

ネタ回です。

東街道を出発した僕たち。東街道はある程度整備されているのでとても歩きやすい道になっている。アスファルトの道、とまではいかないがしっかりとならした形になっている。ここはかつて勇者の道と呼ばれる道の一部だった。勇者の道とはその名の通り勇者が通る道だ。東の土の国を通って、南の水の国、西の風の国、北の火の国を経由し修行を積んだ勇者が魔王のもとへ行き倒しにいくというのが昔の流れだった。魔王が倒された今、この道を通る人は減ってしまった。昔に比べて雑草が軽く生い茂っている。まぁ、これも自然を感じるといえば感じるな。

さて、そんな街紹介はさておき、僕はとても突っ込みたいことがあるのだ。いつになってもこれに慣れない。旅に出るとき、僕とユキはいつも手ぶらで済むのだ。理由はアルベルトが全部持ってくれてるからだ。この前買った回復薬も僕の剣の予備もテントも着替えも飲み水も食料も全部アルベルトが一つのリュックに持っているのだ。


「この隙間時間もしっかり修行として使えるからな。これくらい安いもんさ」


本人はそういってはいるがあまりのリュックの大きさに隣を歩くのが少し恥ずかしいのだ。さらに旅に不必要なものも持っている。木材や工具、ダンベル、レンガ、石、砂。飲み水も過剰なくらい持っている。その重さなんと100kgにらしい。本人曰く、これを疑似アイテムボックスと名乗っている。アイテムボックスとは異世界転生者のもつスキルの一つでたくさんのアイテムをどこかに収納し持ち運べるスキルだ。それをリュックサックで実現しているのがこのアルベルトだ。


「ドラゴンの皮でできたこのリュックはどんなに雑に扱っても頑丈なのだ」


アルベルトはまたもこう言っているが絶妙にダサいこのリュックサックの隣を歩くのもなんか嫌なのだ。そして明らかにアルベルトの戦闘能力が落ちてるように見えるのも問題だ。


東街道を歩いているとゴブリンが現れた。この街道に現れるモンスターは比較的弱いのが勇者の道の最初に選ばれる理由の一つだ。だが、アルベルトはあまりに重たい荷物のせいでゴブリンからの攻撃をいったん受けてしまう。普段ならこんな攻撃よけられるだろうに。その後、普段よりも重たい一撃をゴブリンに返す。重たいリュックサック、疑似アイテムボックスのおかげで普段の攻撃にさらに重さが乗るのだ。


「本人がいいって言うからいいんじゃないかしら」


ユキはこう言っているがいいんだろうか…。


そして僕はこの疑似アイテムボックスの最も残念な仕様を知っている。あまりの重さにアルベルトはジャンプができないのだ。これ、本当に大問題じゃないのか?格闘家としていざというときに戦えないなんていいのか。

そんなことを考えながら歩いていたら向こうから一人の青年がやってきた。


「もしかして、アルベルトさんですか!僕、格闘家のタケルって言います。あのよかったらお手合わせしてもらえませんか!」


「俺と手合わせ…いいだろう。かかってこい!」


タケルはアルベルトの脚に蹴りを入れる。

どうやらタケルは蹴りで戦うタイプらしい。

圧倒的な相手は脚を狙え。

バランスを崩して倒すのが定石だ。

だが、格闘家の中ではあまりに知られた戦法。

アルベルトもジャンプして避ける……はずだった。

アルベルトの背中には疑似アイテムボックス。

まったくふざけている。


「いいだろう、お前の蹴り、受けてやろう。俺の重さを知るがいい」


タケルの蹴りがアルベルトの脚に当たる。

格闘は素人だがそこそこ実践を積んできた僕ならタケルの蹴りがどんなものかわかる。

普通の岩くらいなら破壊する力だろう。

そういった攻撃をくらうことにおいて僕の右に出る者はいないのだ。

だが、アルベルトも顔色一つ変えない。


「ふん、いい蹴りだ。だが、重さには勝てんな」


「そんな…僕の蹴りでもダメなんて…」


「力強いことだけが強さではない。重さを知れ」


はい!アルベルト様!!


さすが格闘家の中でも有名なだけはある。アルベルトという名前を聞いて知らないというほうが無理があるくらい、格闘家の中では知れ渡っている。


「さぁ、お前にもこの疑似アイテムボックスを勧めよう」


そういって同じ柄のドラゴンリュックサックを渡す。


「はい、ありがとうございます」


こうして、この世界に新たなる変人を生み出してしまった…。さ、早く土の国へいこうか。




ほんわか、日常回でした。

こういうのも時折まぜていきたいですね。

次回、いよいよ土の国に到達します。ストーリーが進んでいきますので楽しみにしていただけるとありがたいです。

コメントなどよろしくお願いいたします。

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