水の国の悲劇
女の子に案内され彼女の家に行った。
「お邪魔します」
なんてことを言いながらあがったのだが、返事はなかった。そのままリビングと思われるところに座った。一つの大きめな机に椅子が4つだった。父。母。兄。娘の4人家族ってところだろうか。お父さんとお母さんの姿は見えないが…。
「あたし。家族さらわれちゃったみたい」
女の子の口から出てきた言葉は衝撃的なものだった。女の子の名前はアヤカ。どうやらこの出来事には街から人がいなくなったことも関係しているようだ。9歳くらいの彼女が話す言葉はすこし説明不足な部分があったが、大まかにまとめるとこんな感じだった。
数年前まではこの国の街も人でにぎわっていたという。だが、この国の国防軍として渦という組織が絡んできたところから話がおかしくなってきたようだ。だんだんといろんな人たちが国防軍に入隊してしまうという。そして入隊してしまった人たちは機械のように感情を失っているようだ。さきほどのこの小さな女の子を地面に叩きつけるような行動もそういったところの現れだろうか。この子のお父さん、お母さん、そしてお兄さんも軍隊に入ってしまったようだ。ある日突然、帰ってこなくなるのだという。いまは、この子一人だけで家事を全部すませているという。
「渦?」
僕はあまり聞きなれない単語に彼女に聞き返してしまう。
「うん、あたしが幼いときはお父さんは渦って人たちのことの悪口たくさん言ってたの」
「俺、なんか聞いたことあるぞ。そいつら。昔、決闘大会に出てた。戦闘集団じゃないか?」
アルベルトの説明によればこの渦という組織はかなり過激な組織であるという。決闘大会でも出禁になる人間がいるほどひどい組織だと。で、なんでそんな組織がこの国の軍に絡んでくるんだ?
「そんなの。あたし、子供だからわかんないよ」
肝心な部分は全部これだったから大事な情報を得ることはできなかった。とりあえずこの渦って組織の目的はなんなのか。そして国王のリョウはどこまで把握しているのか。これが問題になってくる。シルヴァ様の命令、リョウはうまくやっているかどうかを確認してこいとのことだが、どうやら上手くできていないようだ。これは調査の必要がありそうだ。
「お兄さん、お姉さん、どうかお兄ちゃんを、お母さんお父さんを。あたしの家族を助けてください」
アヤカの目には涙があふれていた。スカートを力強く握っているその拳は震えていた。悔しさ、悲しさといったものが現れていたようだ。
「僕たちにまかせろ」




