土の国へ
いよいよ本格的に旅を始めましょうか。
王都、謁見の間にて。僕はアルベルトに投げ捨てられた。
「よくぞ来た。お前たちにはいつも感謝している」
ガーディアンの中でも異世界転生者を相手にできるのは僕たちだけだからきっと国王の感謝はかなりのものだろう。現在の国王シルヴァ様こそ異世界召喚魔法の規制を法律として決め、他国にも広げたまさに偉人なのだ。さて本題という感じで国王様が咳ばらいをした。先日のボマーに記憶操作魔法をかけて記憶を盗み見ることができたそうだ。この魔法は本人の記憶に依存する部分があるから本人がはっきりと覚えていない部分に関してはあいまいなものが映ったり、まったく映らなかったりする。それでも何も情報が得られないよりはマシってことだ。
ボマーから得られた記憶は次の通りだったという。目が覚めると魔法陣の上。地下だろうか?とても暗い施設であるという。一人の男がいることがわかっていたがさらに後ろから鈍器で殴られる。ここで一旦記憶が飛ぶ。気が付いたら王都南のプレーン平原の真ん中にいる。ジャイアントオークに喰われそうになるが歯が体に触れた瞬間ジャイアントオークが爆発する。ボマーはこのとき、すべてを察する。なるほどこれが異世界転生か。チートスキルの爆発。すべてを察しとりあえず目の前に見えた街を襲いにかかった。あとは俺たちの見たとおりだという。
「というわけで、どこだかわからないがやはりいまだに異世界召喚の魔法を使っているものがいる。これを突き止める必要がある。まぁもう少し調査が必要そうだ。なにかわかったらまた連絡しよう。でだ今日呼んだのは別件だ」
まさかの別件に俺たちは困惑した。俺たちを呼ぶということは異世界転生絡みの事件が発生したということだ。そんなに毎日異世界転生で事件が起きるわけでもないのだから連日の仕事は久しぶりだ。異世界召喚魔法が規制されてからの連日の仕事は初めてだ。
「ここから東にある土の国が異世界転生者によって落とされた」
土の国といえば現王族のルーツともなる国だ。シルヴァ様の次男グラン様が治めていた国のはずだ。
「わかりました。国王様。我々におまかせを」
こうして僕たちの旅が始まった。土の国へは王都の東門を出て東街道を歩いていくだけだ。魔物も大して強いわけでもない。昔は初心者勇者が最初に通る道として栄えていた。だが近年、魔王が倒されてからはこの道を通るものも減った。その影響で土の国へ訪れる人も減り土の国の衰退が問題視されていたという。すたれた国できっとだれも異世界転生者のやっていたことに気づかず、知らせる人間もいなかったのだろう。
僕たちは準備の手始めとしてさっきの病院へとむかった。
「エリーどうか僕たちと来てくれ」
「はい、私でよければ」
僕は必死にお願いをする。どう考えても僕が異世界転生者相手に実験台として使われるのだから旅先での回復は重要な問題なのだ。
「なに、カイト。私の回復魔法じゃ問題があるの?」
ユキもたしかに回復魔法を使うことができる。だが、ユキが使える回復魔法は中級回復魔法までだ。エリーは回復魔法しか使えないが最上級回復魔法を使うことができる。僕にとって回復は死活問題なのだ。あればるだけいいものなのだ。
「それにユキが必ず回復魔法をかけてくれるとは限らないだろ」
現に昨日のボマー戦でも回復をしてくれていないのだ。
「それはあんたの役割が終わったからじゃない」
こっちからするとそういう問題じゃないんだよなぁ。生死の境をさまようのは勘弁なんだよ。といろいろとごねてはみたものの結局エリーは病院の仕事もあるためにとどまることになった。その代わりといっては何だが回復の魔法陣を刻み込んでもらった。少しはマシになるだろうか。
次に向かったのは市場だ。ここで旅に必要な物資をそろえていく。とりあえず剣がほしい。
「どうせ大したことに使えないのに剣を買うのなんで?」
ここでもユキは当たりが強い。素手で殴りかかれないだろ。得体のしれない異世界転生者相手に素手は禁物だ。相手は炎の体かもしれないし毒の塊かもしれないし。昨日のボマーだって直接触れたら俺が爆発していた可能性だってある。異世界転生者を相手にするというのはそういうことなのだ。あらゆる可能性をいつだって考えて戦う必要がある。かなりの戦闘の経験者でないと相手にすることはできないのだ。ユキは若手魔法使いとしてはかなりの腕だ。自ら魔法理論を構成して魔法を使っている。天才なのだ。アルベルトは体を見てもらえばわかるだろう。修行と戦闘だけを繰り返して得たその体はまさしく戦闘のスペシャリスト。格闘家で彼の右に出るものはいないという。そもそも格闘家は絶対に魔法使いに勝てないというレベルでの相性関係がある。魔法攻撃が遠距離で打てるのにわざわざ近づかないと攻撃できない格闘家は不利なのだ。それを力とパワーでどうにかしてしまうのがこのアルベルトという男なのだ。さぁ、そしてこの僕はなんの取柄もない。剣士としてとくに有名なわけでもない。ただただ傷の治りが速いだけの男だ。傷の治りが速いのは昔祖母から教わった痛いの痛いの飛んでけの魔法のおかげだろうか。子供のころからずっとそうだった。だからか俺はいつも一番に相手に攻撃を仕掛ける役目なのだ。どんな攻撃をくらっても必ずどうにかなる。そう信じ込まれているのだ。
とりあえず、だだをこねて剣を買ってもらった。あとは回復薬と料理セットと食料とテントを買った。これだけあれば十分だろう。
こうして俺たちは土の国に向かって出発した。
天才ってチートスキルな気がして使おうかどうかすごい悩みましたが、まぁその辺は後日どこかで補いましょう。いろいろなチートスキルを出していこうと思うのでどうか楽しみにしていてください。
コメントなどお待ちしております。
どうかよろしくお願いします。