最終話 終結そして…
どうも!ラドロです!ついに(もう?)最終話です!
それでは、どうぞ!
「…終わったのか」
少しの静寂を経てランはつぶやく。
「…いえ。まだです。」
そう俺はそう返すと血に濡れた剣を右手に握ったままランの方へ振り向く。
「俺は演技だったとはいえ王子であるあなたに剣を振るい、女王の身柄を拘束するようにも指示しました。そんな者がどうしてなんの処罰もなくのうのうと帰れましょうか。」
一同は黙る。当然だろう、とこの時俺は思った。仮に警備団の皆が俺の一連の行動の理由に納得したところで開戦の事実とともに俺の裏切りは国民中に知れ渡っている。警備団に戻ったことを彼らが知れば批判は避けられない。すると今度はランの姉である女王が沈黙を破った。
「…ならばあなたが処罰を受ければ良い話です。そうすれば彼らも納得するでしょう。そしてその内容を決めるのは被害者であり国の長である私です。…違いますか?」
自信たっぷりな言動に
「い、いえ…違わないですが…」
と間抜けな返答をしてしまった。すると女王は
「ならば罰として我が国に再び忠誠を誓い、その証明として警備団に尽くしなさい。」
俺はハッとして女王を見つめた。勝ち誇った口調ながらも彼女は慈愛に満ちた表情をしていた。
(かなわないな…)
と思った。ランや楓、その他もやれやれという表情をしていておそらく気持ちは同じなのだろう。俺はその好意を甘んじて受け入れるべく片膝を床について宣言した。
「私厚大、罰を受け、罪を償います。また、再び忠誠を誓い、必ずや警備団に尽くします!」
その日の夜。厚大君、楓ちゃん、私は警備団の寮の二階にあるテラスへと来ていた。
「…それで?結局何のための演技でなんで楓ちゃんは知ってたの?」
つくやいなや私は切り出す。
「…知ってたんだよ。シナリオ通り行くとランが戦争の末スキロに処刑されるのを。」
「え・・・」
言葉を失う私に楓ちゃんが補足する。
「もしあのまま戦争を続けてたら彼の罠にハマってたってこと。剣の腕はともかく話術はある程度巧みだったでしょう?それに騙された彼は本来なら殺されてたのってこと」
「そんな…だからってあんなことを?下手したら死んでいたかもしれないのに?」
「ああ。知っていながら知らないふりなんてできないからね。楓にだけ教えた上でああしたんだよ。」
「…私にも教えて欲しかったな…」
ポツリと呟いた私の発言に沈黙が訪れる
「…黙ってたのは謝るよ。けど知っている人数は極力減らしたかった。情報が漏れるリスクを減らしたかった。それに優愛、俺が言ってたらは絶対止めただろ」
苦笑しながら彼はそう言った。確かにその通りだ。つられて笑ってしまう。
「けど、ほんとに辛かったんだからね!」
「すまんすまん。…そういえば優愛、俺に一回だけ爆発魔法を発動していたよな。あれって今でも出せるのか?」
そう聞かれ思い出す。あのときのことはおぼろげであるが、エリーゼちゃんから聞くとうわ言を呟いた後未習得だったはずの爆発魔法を放ったとのこと。
「…あれから色々と確認したけどやっぱり例の技は発動できないのよね…」
「そうか…こんな世界にも奇跡は存在するということか?いや、ならバグだってことだもんな…」
「…ま!奇跡ってことにしておきましょう!それはそうと、厚大!あんた忠誠誓ったばっかりなんだから明日から真面目に働くために早く寝なさい!」
「いや、お母さんじゃねえんだからよ!」
そんなやり取りをきっかけに空気が軽くなり、どこからともなく三人で笑ったその時。
感じたことない浮遊感とともに視界がホワイト・アウトしてくる。最後に見た景色は私達が消滅していく、というものだった。
次に目を覚ましたときに視界に入った光景は石造りの建造物ではなくコンクリート特有の無機質さを感じる灰色の天井だった。そこまで考えて意識が急浮上する。テラスで話し合っていると突然意識が体から引っ張られるような感覚を感じた後声を発するまもなく意識を失ったのだがこれはどういうことなのか。跳ね起きるとガラスを隔てて白衣を着た男性たちが一斉にこちらを見ている。するとその中のひとりが
「…起きた。」
と声を発しそれがきっかけとなり男たちは「成功だ!」とか「やった!」と喜びあう。それを唖然と見ているしかない俺たちだった。
互いが落ち着き、説明を聞いた所、こういうことらしい。
以前から脊髄損傷患者にはmRNAを利用した注射、点滴で治療が行われていたのだが製作にかなりの技術と材料を要したり課題が多いのは俺たちでも知っているくらい有名なことだ。そこで新治療法が模索された結果、完全没入型VR世界での治療が開発された。臨床試験に事故により脊髄を損傷した俺たちが選ばれたというわけだ。すると新たな疑問が生まれる。それは
「あの、だったら私達が寝ている間1ヶ月が経過した、ということですか?だったら今までどうやって生命や筋肉等体の状態を維持したのですか?」
俺も感じた疑問を優愛が発言する。そう、1ヶ月も飲まず食わずの寝たきりだったのなら体の筋肉や胃が衰えてくるだろうし、それ以前に俺たちは見た所水以外の点滴は受けていなかった。どうやって生命を維持してきたのか。その答えは驚くべきものだった。
「実は君たちがここに運ばれてから1日しかここでは経過していないんだ。あくまであの世界では1ヶ月だったってだけで」
「ええ!?ってことは向こうの世界はここの30倍のスピードで時間が経過しているってことですか!?」
そう反応したのは楓だ。俺も驚きに目を見開く。彼ら研究員はそれに無言で首肯した。
「ちなみに今はあの機械はシャットダウンしたから君たちがここに戻る直前の状態で保存されているよ。」
と丁寧に補足してくれた。
そしてその後、初の治験成功者として取材を受けたり親に再会を果たしたりして俺たちの治療は終わった。これをきっかけに医学と完全没入型VRが大きく発展することを俺たちが知るのはもうしばらくあとのことだ。
(終)
ついに終焉をむかえましたね…
今回も読んでいただきありがとうございました。もし本作品を高く評価してくださるなら本シリーズはこれで終わりですが次の作品をすでに執筆し始めていますので次回以降も読んでいただけたらと思います。それでは!




