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森の魔女の後継者  作者: O.T.I


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20 聖女


SIDE:メリア



 寝室の中に入ると、如何にもお姫様が眠るような大きな天蓋付きのベッドがあった。


 そこに横たわるのは……年の頃は10歳くらいだろうか?

 ゆるふわ金髪の人形のように愛らしい美姫であった。


 私は彼女の顔を見てある事を思い出し、『やはり』……と思った。



 見たところは静かに寝ているだけのように見えるが……グレンから聞いたところによれば、病に伏せてから暫くして目覚めなくなってしまったらしい。




「診察させてもらいます」


「はい。お願いします」


 私はグリーナさんに一言断ってから、彼女の容態の確認を始める。


 額に手を当てる……熱は無さそうだ。

 手首を取って脈を見る……特に問題は無さそう。

 呼吸も静かで安定している。


 本当に、ただ眠っているだけのように見えた。



 しかし……



「ちょっと失礼しますね」


 彼女に意識は無いが……一応断ってから、ゆったりとした寝間着(ネグリジェ)を捲りあげ、足先から胸元までをあらわにする。


 すると……


「やっぱり……」


 グレンの話では、足に黒い斑点が現れていたとの事だった。

 

 しかし、今彼女の体に現れているのは斑点どころではなく……無数の黒い蛇のような痣が、足先から胸元近くまで這い登っていた。



「どう?メリア……何か分かる?」


「ええ。私が予想していたものの中でも最悪の……呪い(・・)よ」


「「ええっ!?」」



「『黒蛇呪』……まんま見た目通りの名前だけど、(いにしえ)の邪教に伝わっていた呪いよ。今となってはほとんど知る者もいないような。この黒い痣が心臓にまで達すると命を落としてしまうの」


 医師が分からないのは仕方のないことだ。

 文献にも殆ど載っていないだろうし、専門に研究してる者でもない限り判別するのは不可能に近い。


 私は婆ちゃんからこの手の知識も学んでいたから分かったけど。




「呪い……そんなものを一体誰が……!」


「まぁ、私を狙ったヤツらでしょうね」


「犯人探しはもちろん必要ですが……今はそれよりも、姫様の呪いは解くことは可能なのでしょうか?」


 グリーナさんの言う通り、先ずはこっちを何とかしないとね。


 呪いを解くことが可能か?


 その答えは是であり非でもある。


「……それは姫様次第ね。もちろん私も最善は尽くすのだけど、結局のところ姫様の生命力に頼ることになるのよ」


「そう、ですか……」


「でも、勝算はあると思うわよ。この方は『聖女』なんでしょう?」


「!!……何故それを?」


 あ、警戒させちゃったかしら?


「この呪いは、本来であればとっくに全身を蝕んで、今頃は亡くなっていてもおかしく無かった。それが、明らかに進行スピードが緩い。……でも、姫様が聖なる力を持っているのであればその説明がつくわ。おそらく毒にも耐性があったから、こんな古臭い黴の生えた呪いなんて持ち出してきたのでしょうね」


「……なるほど。それでは、どうすれば姫様の呪いを解けるのですか?」


「そりゃあ、私は薬師ですから。薬で何とかするんですよ」


 とは言っても、これほど強力な呪いに普通の薬が効くわけもない。

 用いるのは特別に調合した魔法薬だ。



「グリーナさん、薬の調合を行いたいので場所をお借りできますか?色々と器具を並べるので広めの机があると有り難いのですが……」


「それでしたら居間のテーブルはどうですか?」


「あぁ、あれなら十分ですね。では、早速調合させてもらいます」


 そうして私は『姫様』の呪いを解くための魔法薬の調合を始めるのだった。













SIDE:グレン



「グレンさま」


 姫の部屋、使用人の控室で待機していると……姫の専属護衛であるグリーナから声がかかった。


「グリーナ、診察はどうでしたか?」


「はい。メリア殿の診察の結果では……『黒蛇呪』と言う呪いがかけられている、との事です」


 やはり呪いだったのか。

 そう言う予想もされてはいたが、現実になろうとは。


「それで、対処は出来そうですか?」


「はい、今は解呪のための魔法薬を調合してもらってます。……その、メリア殿は姫様を『聖女』だと見抜きました」


「……まぁ、彼女なら気付くでしょうね。本来なら治療に当たってくれる方には事前情報として伝えておくべきなのでしょうけど……」


「それはしかたありません。最高機密なのですから」


 そう。

 姫様が『聖女』である事実はごく一部の者だけが知り得る情報だ。


 ……それこそが狙われた理由なら。

 その『ごく一部の者』の中に犯人がいるのだろうか?


 何れにしても……必ずや姫様の身は護らねばならない。



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