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入学式の夜

基本的にこの作品は4.5日毎に投稿します。

時間は12時に。

見る人増えた場合は、事前に告知して時間変更します。

 


 揺れている。

 安定したリズムとテンポで俺の体は揺らされている。


「起きて、起きてってば」


 ユサユサと起こしに来てくれた誰かには感謝しかないが、色々合って寝たい欲が溜まっている。


「あと5分、あと5分後には起きるから」

「そう言ってお兄は、起きたこと無いじゃん。もう晩御飯出来たよ」


 布団を引っ剥がされた俺は布団の微かな温もりを求めて手を伸ばす。


「ちょっと、私の髪触らないでよ」


 間違えた。リリース。

 今度こそ、布団をキャッチ。


「お帰りお布団。そしておやすみ」

「ああ、布団被り直さない!」


 疲れている兄貴を労ってほしいな、妹よ。




 部屋から出て階段を降りながら仲睦まじく兄妹話に花を咲かせる。


「それでどうだったの?学校は」

「退屈極まりない学校だったよ。美憂には向いてないから来なくていいぞ」

「それ退屈なのはお兄の存在でしょ」


 我が妹はよくわかってらっしゃる。

 退屈と書いて平穏と読む。

 俺はそれが大いに気に入っている。

 刺激ある生活とは、リスクを示す。天秤は常に並行でなくてはならない。

 ならその天秤に乗せるものは常に自分自身に他ならない。

 命は常に一つだ。分割出来ない命を天秤に乗せて刺激を味わうくらいなら乗せない平穏こそが我が至福。


「別にお兄は人間不信でもコミュ障でも無いでしょうに。学校生活を楽しくしようと思えば出来るよね。学校で修行でもするつもりなの?精神の」


 聞く人次第では様々な捉え方が起こりそうな話し方だが、優しい俺は甘く捉える。


「そういう美憂こそどうなんだ。辰也との中学生活楽しめそうか」

「先輩として辰也の面倒はきちんとみるよ」


 下の弟、辰也は今年中学に入学だから心配していたが杞憂に終わるならそれに越したことはない。


「兄ちゃーん、姉ちゃん、早く食べよう。お腹空いたよ」

「ああ、悪い辰也」

「今行くね」


 辰也は行儀良く椅子に座って俺が降りるのを待っていたようだ。

 3人分の夕食が乗ったテーブルはいつもながら広く感じる。


「美憂、辰也、今日母さんと父さんは」

「いつも通りだよ、仕事」

「次皆んなで食べられるのはいつかな」


 我が家は兄弟仲良く一緒に食べることはよく合っても、家族全員でというのは珍しく時間が合わないと無理だ。

 別に家族仲が不仲という訳では無い。

 こうして兄弟では一緒に食べていて、父か母のどちらかと一緒の4人での食事も週に6回ぐらいはある。

 ただ、父と母一緒の5人での食事というのは本当に稀だ。

 父と母は俺たち子供を愛してくれている。

 それでも2人がお互いが好きというわけではない。嫌いというわけでも無いので、少し気の合う友達ぐらいの感情を互いに持っている。

 友達との付き合いは大事とは分かっていても自分の用事を優先するのは当たり前だろう。

 それと同じように家族との付き合いは大事でも仕事の用事を優先しているだけのことだ。

 そして子である俺たちもそのことは重々承知している。

 そして我が家が異常というわけでは無い。

 何故ならどの一般家庭であっても、似たような家族事情を抱えている。

 愛ある結婚を迎えなかったらこうなると皆知っている。

 それでもこれが今の世界の当たり前。




「「ご馳走様でした」」

「お粗末様でした、食器は置いていて。後で洗うから」

「いや、こっちで洗うよ。美憂は明日朝早いだろ。生徒会長なんだから朝早く行かないとだろ」

「僕も手伝うよ」

「二人共ありがとうね」


 中学校の生徒会長でも朝の校門前挨拶はあるそうで、我が家1早起きは美憂だ。

 2番目は俺だが高校は中学より始まるのが少し遅い時間だから3番目になるかもしれない。

 俺がスポンジと洗剤を使って皿を洗い辰也がそれを水で流して食洗機に入れる。

 黙々とこなしていると辰也がこちらに視線を送る。


「ねえ、兄ちゃん学校どうだった。楽しかった?」

「それ美憂からも聞かれたな。2人揃って一体どうしたんだ。俺なんかしたのか」

「ううん、別に。入学式だったのに食事中あまり元気無さそうだから気になって」

「別に何もないぞ。そうだな、ご飯の中にピーマンが入っていたからだな」

「駄目だよ。好き嫌いしたら」


 元気のない理由。それは確かにある。

 だが別に2人に言える事ではない。

 だから何も無いと同義と捉えて大丈夫だろう。

 下手に正直に話しては2人に心配を掛けてしまう。時には話さない事こそが美徳である。

 だから笑い話で誤魔化す方がとっても良い。


「なら辰也の方はどうだった。学校馴染めそうか」

「小学校と中学校はほとんど皆んな一緒だから大丈夫だよ」

「そうか、そうだったな」


 話していると時間を忘れる。

 次の食器に手を伸ばそうとするが、宙を切る。

 いつの間にか俺たちは食器を洗い終わっていたようだ。




 準備もした。

 課題も無い。

 あとはベッドに寝転がるだけで明日が来る。

 ただ、明日を迎える前にベッドの上で考える。

 何故、獅子郷は俺に目をつけたのか。

 実際、あの教室で興味を持たれているか全員を判別できるのか甚だ疑問に残る。

 その中で俺だけに目をつけた理由、どうしても気にはなるがベッドでは眠気の方が上のようだ。

 微睡む視界は頭の中と同じで真っ黒だ。

 こんな日にはいつも悪い夢ばかり見る。

 明日はきっと最悪の気分で目が覚めるだろう。



宗一 宮都:175cm 熊本生まれ熊本育ち。9月生まれ。15歳。スポーツはまあまあできる方だが、チームスポーツは苦手。人付き合いは出来るが、積極的にはしないタイプ。もし攻略するなら中堀から埋めるが吉、特に妹の方から。

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