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二人の殿下

「ルーカス殿下?」

ルーカス殿下は本日のパーティの主役の一人のはずだ。陛下と王妃様と一緒にマリウス殿下を探しに来たのだろうか。


 でも、今確かにルーカス殿下は、私を掴んで見つけた、と言った。


 どうしてだろう。


 「貴女を探していたんだ」

……マリウス殿下ではなく?


 もしかして、まだルーカス殿下は、誰かと踊っていないのだろうか。それで、恐らく陛下と王妃様で決められた相手である私を探していたのか。


 「私に着いてきてもらえないだろうか?」

ここでルーカス殿下に着いていき、踊ってしまえば、私はルーカス殿下の婚約者になってしまう。それは、困る。今度こそ、私は、幸せになりたいのに。


 「わたし、は、」


 不敬だとわかっているけど、断ってしまいたい。それなのに、かつて焦がれたのと同じ瞳でルーカス殿下が見つめてくるから、喉が乾いて言葉にならない。……同じ瞳? なぜかその言葉に引っ掛かりを感じる。


 時間にして、何秒か、何分か。私とルーカス殿下が見つめ合っていた間に割って入ったのは、意外な人物だった。


 「マリウス殿下?」

王妃様に抱き締められていたマリウス殿下が私の元にきて、私のドレスの裾をぎゅっと掴んだのだ。


 「ぼくは、このこと一緒じゃないとパーティにいかない!」

陛下と王妃様が迎えに来たことで、愛情は確信したのだろうけど、やっぱりまだ、好奇の目に晒されるのは怖いのだろう。


 マリウス殿下は、ルーカス殿下をきっと見つめた。


 沈黙が落ちる。──と、先に目を逸らしたのは、ルーカス殿下だった。ルーカス殿下は後ろに振り向き、


 「父上、母上、私のアリサ侯爵令嬢との用事はまた後日でもよろしいでしょうか? こうなったマリウスは絶対に譲らないから」


 ため息をつきながら、そう言って私の腕を離した。


 陛下と王妃様は、申し訳なさそうに、私を見て頷いた。




 周囲から突き刺さる視線が痛い。


 私は結局、マリウス殿下とルーカス殿下の間に挟まれるような形になって、パーティ会場に戻った。しかもマリウス殿下にいたっては、手を繋いで、だ。


 マリウス殿下とルーカス殿下という二人の主役がいらっしゃらなかったため、パーティはまだ始まっていなかったようだ。


 陛下が、開催時間が遅れたことを詫びて、ようやく、パーティは始まった。


 ──が。


 「あの、マリウス殿下、もう手を離しても?」

いつまでも、私が手を繋いでいては、マリウス殿下と話したい方々が近寄れないだろう。


 「アリサ、もうちょっと、だけ、だめ?」

うっ。赤い瞳を潤ませて、そう言われてしまえば、断ることなんてできるはずもない。


 「マリウス、年頃の女性を呼び捨てにしていいのは、婚約者と家族だけだ」

ルーカス殿下が不機嫌そうに言う。


 「ま、まあ、まだマリウス殿下は幼いですし……」


 ──そうなのだ。なぜか、ルーカス殿下も私の傍から動こうとしない。早く、誰かと踊ってしまって、婚約者を決めてほしいのだけれど。私でなくてはならない理由がない。だから、私は嵌められたのだから。



 けれど、そんな願いも虚しく、結局ガーデンパーティ中、マリウス殿下とルーカス殿下と過ごすことになった。

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