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オンボロな寮

ひとまず、寮に移動することにした。学科、男女別に寮は別れているらしい。地図を頼りに寮を探す。


 「……本当に合っているのかしら?」

随分と奥まった場所まで進んでいる。なんだか、だんだん不安になってきた。


 もう引き返してしまおうか、そう思ったとき、ついに、寮が見えてきた。


 確かに〈魔獣科女子寮〉と書かれている。


 建物自体にたくさんの植物のツルがからまっており、暫く利用されていなかったことがわかる。


 果たして、中はどうなっているのだろう。ごくりと、唾を飲み込んで、扉を開ける。


 軋んだ音を立てながら、扉が開いた。


 どきどきしながら、中に入ったものの、中は案外普通だった。少々ぼろ……趣があるものの、ちゃんと雨風はしのげそうだ。


 私の部屋はどこだろう。というか、寮母さんは、いるんだろうか。


 不安になりながらきょろきょろとしていると、猫が私の足にすり寄ってきた。

「!?」


 もしかして、野良猫の巣窟になっているんだろうか?


 ぎょっとしつつ、その毛並みを撫でると、猫は話し出した。

「オンボロな寮へようこそ!」

「!?」


 猫って、話す生き物だったかしら。


 「私がこの寮の寮母のカーナです」

 私が混乱しているのをよそに、猫は、すたすたと歩きながら、門限などのルールを説明していく。どうやら、私の部屋まで案内してくれるらしい。


 「今、この寮を使うのは貴女だけだから、気楽にしてね」

ルームメートというものに憧れがあった私は、少々がっかりしたが、気楽なのはいいことだと前向きに考えることにする。


 「はい、ここよ。荷物は既に部屋に運んであるわ。じゃあ、何かあったら呼んでね」

「わかりました。ありがとうございます」


 今日からここが私の部屋となるんだ。そう思うと、わくわくするような、不安なような。そんな思いを抱えながら、扉を開く。


 部屋は侯爵家にいたころに比べると半分くらいの広さだ。でも、私への配慮からか、壁紙がピンクで可愛い。まずは、荷ほどきをしようとして、ベッドの布団が盛り上っているのに気づいた。


 「……?」


 疑問に思いながら、布団をめくると──

「!?」


 銀糸の髪に、すっと通った鼻筋。伏せられた睫毛は長い。がっしりとした肩幅に骨ばった手。


 どこからどうみても人間だ。しかも、男性だ。なぜ? 男性がここに? 私が部屋を間違えたのだろうか?


 そう思い、一度部屋を退出し、プレートを確認したら確かに私の名前が書かれている。そもそも、ここは、女子寮だ。


 もう一度、部屋に入って、ベッドの上を見る。幻じゃない。確かに存在していた。規則正しい寝息を立てていることから、死体でもないだろう。


 とりあえず、つついてみる。


 「あの、」

ここ、私の部屋なのですが。どなたかとお間違えではないですか。


 全く反応がない。


 今度は強めに揺すってみる。すると──

「うわっ!」

視界が逆転した。いつの間にか私の視界には天井ととても端正な顔が映っていた。

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