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第25話 亜人の勇者

4日目の夜。


残りハヤト172日。カナ177日。

拘束していた縄を引きちぎったのを見て、捕虜を監視していたライラが飛んでくる。

しかしランドルフは、手の届く位置にいる俺に何もして来ない。


「人間への復讐…。」


反復して復讐と口にしてみたが実感はない。テレビやニュースだけで聞く様な単語だ。

だけど聞いた話が本当であれば、許されない事だしその痛みに共感したい。でも、敵である人間にそれをされる事は、嫌かもしれないとも思う。



「やはりアヴァラス族が言う通り、貴方達は普通の人間とは違うようだ。…あれをご覧下さい。」


縄を引きちぎった赤い跡がつく手が、俺の少し後ろを指差す。

その先には、馬を撫でながら体調を心配している風のレオパールと、少し怯えた感じのするフェリシアが、チラチラこちらの様子を伺っていた。



「…普通の人間は、穢らわしい血を持つ劣等種である我々亜人達に、近づいてさえしないのです。」

「劣等種?皆さんが?」


大雑把な魔法で強化された俺たちと戦うような人達の、何が劣っていると言うのか?

訳が分からないと言う顔をする俺を見て、ランドルフは眩しそうに目を細めた。


「私もさっき聞いたんだけど…段々この世界の事がわかって来たわ。」

「え、マジ?考えた事もなかった。カカナはやっぱ凄いな。」

「凄い?」


笑みを浮かべたアイツが首を傾け、一拍遅れてポニーテールが首筋を…っ。


「そんな事より、何が分かったの?」

「…そんな事。」

「なんだよ。」

「別に。」


絶対別にって顔じゃない。

不満がある時の妹達にそっくりだ。何なんだよいったい。



「あのね、この世界には社会的な階級制度があるの。魔法が使える人が偉いって話は覚えてるわよね?」

「あぁ。フェリシアみたいな回復魔法が使える奴が、特に偉いんだろ。」


ふつう回復魔法と言えばRPGゲームなんかで、初期に仲間になるヒロインとか、主人公が二つ目に覚える魔法だったりするのが一般的な魔法なのに、ここでは使える事で地位が得られてしまう。



「トップは魔法が使える人。次は魔法が使えない人間。多分もっと細かく別れていると思うんだけど…諸々の一番下が亜人なんだと思う。」

「なんで?」

「知らないわよ!私が決めたんじゃないんだから!!」


カカナが、ポカポカ叩いてくる。

どうしたんだ、こんな奴だったかと思うが、疲れた体には心地よい振動だから良いか。


律儀にカカナが叩き終わるのを待っていたランドルフが、話の続きをしてくれる。



「ハヤト殿、亜人は魔物の一種だと言われてます。魔に当てられた穢れた人の成れの果てだと。」


魔物と言われても、オークなんかよりはずっと人に近いと思う。



「実際、魔物なんですか?」

「いえ、先祖代々魔物や魔族との交流なんてありません。確かに耳や尻尾を指されればそうかもしれませんが…」

「身体特徴を指した偏見よ。その理屈なら私達は耳が小さく、尻尾がない亜人とも言えるわ。」

「そんなのただのイジメじゃん。」

「しかし神官達は、亜人は忌むべき魔族の末裔だと。」

「神官が?俺はそう思わないけど…なぁ、本当なのか。」


俺は服の襟元を引っ張り、とても身近な神様を呼び出す。

大人しく隠れていた小さな女の子が、あくびを噛み殺しながら顔を出した。


「よ、妖精がなぜ!?」

「げっ、しまった!…ははは、色々あって。」

『ハヤト君、私はこの世界の神じゃないんだけどー。』

「知ってるよ!…それより亜人も魔物なの?」

『捏造もいいとこだよ。私に言わせれば、人間の方がよっぽど魔物じゃないか。』

「待って捏造って…それじゃこの階級制度は人為的なもの?」

『良いかいカナ、人為的も何も差別するのは人間だけさ。神は差別しない。ソレはソレ、コレはコレって区別するだけ。』


それじゃあとよろしくーと言い残し、神様は俺の服の中にもぞもぞ戻って行った。


ふと顔を上げると、妖精と会話を始めた俺達に、ランドルフだけでなくミィーアまでも成り行きを見守っている。

神様の声は俺とカカナ以外には聞こえないからだ。



「彼女曰く、亜人は魔物じゃないって言っているわ。」

「お二人は、妖精と会話ができるのですか!?」

「あー、うん、まぁ。」

「カナ!ちょっとどう言う事だよ!?」

「あのねミィーア、これには色々あって…」


2人で顔を見合わせる。


(もしかして不味かったかな?レザールさんからも人前に出すなって言われてたし…)

(ここは任せて…誤魔化すわ。)


「コホン。…大事なのは、皆さんは魔物じゃないって事。亜人と言う1つの種族なんです。劣等種なんて呼ばれる必要も言われもありません。」

「しかしカナ殿、我々は神官から…」

「神官より、この妖精は神様の1人なんです!どっちの言葉を信じますか!」

「妖精なのに神!?妖精神??」

「きっと何か理由や目的があって、誰かがこの制度を作った可能性があります。こんな間違った事、私達が暴いて懲らしめてやります!」


そうだ。

亜人だからって理由で一方的に…ん?


「ちょ、ちょっとカカナ!暴いて懲らしめるって!?」

「…しまった、つい勢いで。」


カカナが慌てて、皆さんの無実を証明するお手伝いをさせて…なんて言い直すが、もう誰も聞いちゃいない。

ミィーアはライラに抱きついて…猫なのにワンワン泣いてるし、ランドルフは立ったまま涙を流していた。


「…ハヤト殿、カナ殿。改めて先程の非礼をお詫びすると共に、我が槍はお二人の為に振るう事をここに誓います!」

「いやランドルフさん、実は俺たち時間があまりなくて最後まで…」


俺の言葉は、高く突き上げられた腕にかき消される。



「お前ら聞いたか!長年に渡る亜人に対する過酷な扱い!!神の決定だと信じ受け入れて来た制度を、この方達が変えて下さる。我々の為に立ち上がってくれたお二人に、俺は尽くしたいと思う!!お前達は!?」


「「おぉー!!!」」


あぁ…ダメなヤツ。苦笑いしか出来ない。

そして隣でも似た様な事が始まる。


「アヴァラスの皆んな!アタイらも負けてられないよ!!変な人間だと思ってたけど、コレはひょっとしたらひょっとするかも!!今まで散々アタシらの事をコケにした奴らを見返すチャンスだ!!勿論ついて来るだろ!?」


「「うぉー!!!」」


隣でカカナが、あのねミィーア…と言っているが、こっちもダメなヤツ。

そして、トドメとばかりに俺たち2人の前に膝をつくミィーアとランドルフ。そして彼らの仲間たち。


「ハヤト殿、カナ殿…我ら兎族ケンパーゼと猫族アヴァラスは、お二人に命を預ける覚悟です!」

「い、命って…そんな大袈裟なっ。」

「アタシらだけじゃないよ、きっと他の亜人たちにとって希望だ。だから…アタシたちの勇者になってくれ!!」


勇者になる?

勇者としてここへ来たのに、勇者になってくれとは。



「勇者も何も…」

「私達はそういう話できたんじゃ?」



俺とカカナは、首を縦に振った。




□□□




『自分達でやる事を増やすなんて、チャレンジャーだな2人とも。』

「え、何か不味かった?」

『いや、良いんじゃない。試練を乗り越えてこその勇者だろ。』

「そもそも私達は、貴女が仕事に戻ってくれれば…」

『ふぁ…睡眠不足はお肌の天敵だぞ。カナも若いからって夜更かしばかりするなよー。』


それじゃお休みと、コバヤシ君の服に逃げるように引っ込む神様。


確かに、かなり夜も遅くなって来た気がする。

頭はまだ冴えているが、腕や足が疲労で重くなって来ているし、また野宿になるがそろそろ眠りにつきたい。

隣に立つコバヤシ君も、目が半分になってボーとしている。



「ごめんね、私のせいでこんな所まで…。」

「いや、カカナが拐われたのは、俺が寝ちまったのが原因だし。」

「それはお互い様よ。…でもこの変身、元に戻る意識がないと、しばらく姿は解除されないのね。」

「…それが?」

「他にも何かルールがあるかもしれない。ねぇ、今度は…ごめん、今夜はもう寝ましょう。ランドルフさん達も一緒にいるから、見張りにも困らなそうだし。」


頷く彼は、すでに半分夢の中。

立ったまま寝ようとするなんて、器用な人だと思う…でもこんな山奥まで自分を追って来てくれて、ランドルフ達とも一戦交えたんだ。今は、少しでも早く休ませてあげたい。


「あ、そうだ。レオパールさん達。」


待たせていた彼らの事を思い出し、私はコバヤシ君を残して少し離れた場所へ。


座り込む馬のお腹にもたれ掛かるように、フェリシアは眠っていた。起こさないように近づくと、レオパールが気が付いてこっちへ来てくれた。


「お待たせしてごめんなさい。」

「話はついたのか?」

「なんか、私たちに勇者になって欲しいって。」


それを聞いて、レオパールの表情が強張る。


「もしかして、承諾したのか?」

「え、えぇ。もともと私達は…何か不味かった?」

「いや、俺は別に構わないけど、他の奴がなんて言うか…いやそんな事はどうでも良いんだ!」


急に大きな声を出すもんだから、フェリシアが起きるんじゃないかと、慌てて口に指を当てる。レオパールも気がついて息を潜め様子を見る…大丈夫、静かに寝息を立ているので、起きる事は無さそうだ。



「それで、どうしてここに?コバヤシ君から王都へ行ったって。」

「あぁ、確かに王都へ行ったんだ。」


だけどと続けた彼は、周りに聞こえないように私に近付いてこう言った。



「…領主達が王太子に反乱を起こしたんだ。」


「は、反乱!?」


私が発したすっとんきょんな声に、フェリシアがビクッと体を震わせた。






…私が寝れるのはもう少し先になりそうだ。


最後までご覧下さりありがとう御座います。


かなり日が空いてしまいましたが、ようやく4日目の話が終わります。


まだハヤトもカナも気付いていませんが、前提条件が違うのに、気が付かないまま話が進んでいるようですね。


昔、キャッチコピーにもありましたが、自分の普通は他人には異常。


逆もまたしかり。

噛み合っているようで、こういった事は放置すると後で痛い目に遭いますよね。


言わなくてもわかるだろ?じゃなくて、キチンと伝えたり確認していきたいです。

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