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第21話 釈放と襲撃

4日目の夕方。


残りハヤト172日。カナ178日。

「守られている訳ではありません。兄が騎士団に入り顔を見る為、王都へ行く途中あの騎士様達と出会って。」


たまたま同行していただけですと、強調しておく。


私の今の目的は、殺されず生き延びる事だ。

見つけてもらえるかは分からないが、死んでしまったらそこで終わりだ。逃げるチャンスすら掴めない。


「兄が騎士だと。…偉いのか?」


興味を持たれた気がする。

もしかしてマズいか?自分の価値が高くなりすぎない様にしなくては…。


「いえ、まだ日は浅いです。」

「…そうか。」


心なしか残念そうな表情。



「だが、なぜ武器を取り戻しに来た。しかも騎士ではないお前が。」

「気が付いたのが、一番早かったからです。」

「それだけか?」

「父の形見も盗られたので。」

「それは何だ?」

「…長い鉄の筒です。」


そうかと言い残し、彼女は洞穴の外へ出て行ってしまった。

ふぅと一息ついて、今までの会話を整理する。


村娘で、騎士になった兄に会いに王都へ行く途中。

騎士団と出会い、同行させてもらっていた所で、盗みにあった。


そこまで無理は無いだろう。…父のくだりは考える余裕なくマービンさんの銃を使ったが大丈夫なはず。


それより気になるのは、偉いのか?かな。

もし、偉いですと答えたらどんな反応をしただろうか?


「ま、考えても分かんないか。」

「…何が分からないって?」


気が緩んでいたのか、たまたま口から出た言葉を聞かれてしまった!

声の主は、先程の女主人だ。手にはマスケット銃を持っており、それを私の前に置く。


「え、返してくれるんですか?」

「武器にしては刃も無いし、鈍器にしては軽すぎる。それに…我々は家族、先祖を大切にする。父の形見なのだろ、持って行け。」


持って行けと言われても、手足に縄の私は一体どうすれば?

もぞもぞしていると、女主人は折りたたみ式のナイフを取り出して手足を自由にしてくれた。


「逃してくれるんですか?」

「お前に食わせてやる余裕なんてないからな。捕虜など不要だ。さっさと村へ帰れ。」


そう言って彼女は立ち去ろうとする。

慌てて私も立ち上がり、銃を片手に洞穴から出ると…夕陽に照らされた猫の人達が2、30人いた。


獣人?

いや確か本で読んだ事がある、亜人だ。それも猫の。

森の中にある、木の少ない斜面にいくつか焚き火が見え、彼らが料理をしているのが見えた。

中には武装している亜人も。装備はレザール達の物の他に色々な形の物が混ざっており、いろんな場所で入手したのだと察する。


それにしても家も無いし、ここが集落という訳では無さそう。

キャンプか野宿、一時的な休憩地点と言ったところか?


ぐるっと全体を見回してみて気が付いたが、殆どが女性だ。

男は、木の枝でチャンバラをしている男の子達くらいで、大人の男性、青年すらいない。


「ねぇ、どうして女性ばっかりなんですか?」


そう問いかけた途端、目の前の女主人の毛が逆立ったように感じた。


「…早く消えな。私がお前を噛み殺す前に。」


殺気を漂わせた拒絶。

これ以上話しかければ、拘束されるか最悪殺されるかもしれない。


もし騎士の兄が偉かったら。

奪った武器を装備している理由。

家もなく仲間は女ばかり。



「何か問題を抱えていらっしゃるんですね。」

「…人間、お前らのせいだ。」


これ以上話す事はないと言わんばかりに背を向けられるが、そんな事で私は黙らない。


「教えて下さい。」

「早く帰れと言っただろ!」

「人間に何が分かるって、話してくれなきゃ何も分かる訳ないじゃないですか。」

「…お前、死にたいのか!?」

「私を殺すより、利用した方が良いと思いますよ。」


久しぶりの感覚。意地になっているのか自制心が効かない。

親友がこの場にいたら、出たカカナのお節介!とか言って、手を叩いて喜んだ事だろう。


自分ではそんなつもりはないが、腹の中に言いたい事があるのに隠しておいて、勝手に傷ついて、手を差し伸べれば貴女には関係ないって…じゃ、そもそも私の目の前で助けて欲しい素振りを見せるなよ!


あの女の事を思い出してイライラする。


待て、待つんだ私。

拘束されて溜まっていた鬱憤とか過去の出来事を、ただ理由をつけて目の前の人に八つ当たりをしているだけだ。これ以上は…



「私には貴女が何か問題を抱えていて、その突破口を探しているように思えました。仲間とはもう話されたのでしょう。でしてら関係ない私に話す事で、皆さんと違う策が出てくるかもしれません。話すならタダです。」

「なっ…」


わぁ、目が大きくなると猫目っぽいんだ。と、全く別の感情が生まれるが…やっちまった。

心はスッキリしたけど自分を止められず、図々しい事をまくし立ててしまった。


たかが小娘にそこまで言われると思っていなかったのだろう。拳握り締めながら肩がプルプル震えている。


「お前なんかに私の、私達の…っ!!」


殴られるかと思った直後、別の女性の声が割って入る。


「敵襲!!!!」


ハッと声のする方を見る。

森の奥から何か出てくる…馬だ!騎馬兵が雄叫びを上げながら次々と出て来る。

女主人は、斜面を飛び降りると腰の短剣を抜く。


「ミラ、子供達を上へ!!」


火にかけられていた鍋はひっくり返り、料理をしていた女達は子供を連れて斜面を登り始める。

代わりに、武装した女性達が斜面を駆け下りて、騎馬達の前に立ち塞がる。数は…10人ほど。

剣に弓、見覚えのある武器もあれば、ハンマーみたいな物まで。レザールさん達のチェーンメイルも装備しているが…彼女達には重そうだし、武器の構え方も及び腰だ。


「ジーナ、ライラ前へ!!」

「はい!」

「おう!」


女主人の号令で、呼ばれた2名が女主人と並ぶ。

ジーナと呼ばれた白猫は長剣を持ち、体格に恵まれたライラはハンマーを軽々持ち上げる。

…あの3人だけが戦えそうな兵だ。


対して、騎馬兵は5人。

形は違うが同じ製法で作られたと思われるカブトを被っており、革の鎧で身を固めている。


武器は全員、槍の様な長物。

あと騎乗している生き物は馬じゃなくて…大きな鹿に乗っている。


「…あっちにも女の人がいる。」


騎馬兵の左後ろの騎手は多分女性。

ただ猫の兵と違い、戦い慣れていそうな雰囲気にみえる。


騎馬兵に対して人数は多くても、猫の彼女達はすぐやられてしまうだろう。何だっら、下馬して戦った方が早く決着がつくかも知れない。



「一度しか言わん、食料と武器を置いていけ!!」


リーダーらしき騎馬兵が、大声でそう言った。

野盗にしては礼儀正しい部類か?


でも猫の兵は構えをとかない。


「私らにもやる事があるんでな、飯も武器も手放せないんだよ!!」

「…そうか、残念だ。」



その一言で、騎馬の一段が鹿を前進し始める。

一歩進むごとに彼女達は一歩後退しを繰り返す。

仕掛けたくても、あの長い槍に手が出せないのだ。

このままだと、時期斜面に追いやられて、登って逃げるにしても背中を刺されるだろう。


私は斜面の上に避難した女性達を見る…無い。

それじゃ子供が……あった!

私は斜面を駆け上がる。




□□□




「ミィーア私から行く!」

「分かった。ライラ合わせろ!」

「おう!」

「こんのー!!」


先に仕掛けたのは、長剣のジーナ。

先頭の騎馬を狙って切り上げるが、槍で防がれる。そこへライラがハンマーを横に振り抜いて槍を弾く。


「うぉぉー!!」

「ぐっ、馬鹿力め!」


側面から迫った私が、短剣で騎手を斬り付ける。

咄嗟に騎兵は左腕で剣先を受け、致命傷を避けやがった。


音なく着地すると私達は駆け出す!


「もう一度行くよ!」

「…調子に乗りやがって!」


騎兵からの槍の突きを交わし、再度フォーメーションを組もうとした私達に、仲間の悲鳴が聞こえた。


「きゃー!」

「来ないで!!」

「こ、このー!!」


振り返れば、後列の7人が騎馬に追いかけられ逃げ惑っていた。

引いた弓矢は明後日の方向に飛び、武器の重さに振り回された1人は、槍のなぎ払いに吹き飛ばされる。中には武器を捨てて、ただ逃げ回っているだけの子も。

分かっていたのに…志願しているとはいえ、本来武器なんて持った事なんてない。無理して戦わせているのは私の責任だ。


「どこを見ている!」

「…しまっ!?」


よそ見をしていた私は鹿の突進を受けて、地面を転がり木に背中を強打する。衝撃で息が吸えない。


「かはっ…!!」


武器がない。

手が落ち葉や土を掴みながら短剣を探す。

爪に土が入り、枝で肌が切れる。…あった!!


チャキ…と何かが自分に向けられているのを感じた。

顔をあげれば、騎兵の1人が矛先を額に向けている。


こんなところで、まだ何もなし得ていないのに、人間に、魔族に、…私達が一体何をしたというのか!!

恨みと憎しみの目を、騎馬の男は哀れみで返答する。


「…一息に逝け。」


男が槍に力を込めた瞬間、





ジッ……シュバーン!!!!




森を突き抜ける音が鳴り響く。

野鳥が驚いて飛び立ち、騎馬の鹿が驚いて興奮しだす。

まだ耳の奥がキーンとしているが、音の出所…斜面の上の方を見上げるとアイツがいた。


父親の形見を持った憎き人間の女。

貴様らと話す口など持たぬと言うのに、自分勝手に図々しくも関わってこようとする女。

なぜ私達に関わろうとするのか理解できない。人間は我々と関わりたくないんじゃないのか?


そんな理解不能の人間の女は、煙が出る鉄の筒を構えながらこう言った。





「一度しか言わない。去れ!次は当てる!!」





アイツはいったい何なんだ。

最後までご覧下さりありがとうございます。



人は目的の為に行動するそうです。

つまり怒るのにも目的がある、感情すら目的の為に使っているなんて話もあります。


私も怒りが湧いた時、それはただ八つ当たりしたいだけじゃないかと、考えてしまいます。

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