だいちゃんと近所の子供達と風船たち
だいちゃんのお母さんはスーパーに買い物に行っていましたが、帰って来ると、
「はい…お土。」
そう言ってだいちゃんに風船を渡しました。
「ふうせんなんかいらないよぅ。僕はもう3年生なんだよ」
だいちゃんはそうは言いましたが、一応風船をポケットに入れ2階の自分の部屋に上がって行きました。
『1年坊主じゃあるまいし風船なんて…。でも、せっかく買って来てくれたんだから…』
と、だいちゃんはポケットから風船を出すと膨らませることにしました。膨らませたのは 赤、青、黄色、白、ピンク、オレンジ、黄緑色の7つの風船です。
『そうだ、顔も書いちゃえ』
だいちゃんはマジックで風船に顔を書き始めました。そして書き終わった時、インターフォンがなりました。どうやら拓也君達が遊びに来たようです。近所の友達が いつもだいちゃんの部屋に集まって皆でゲームをして遊びます。
まずやって来たのは、拓也君とお姉ちゃんの美佳ちゃんです。 拓也君は4年生で、お姉さんの美佳ちゃんは6年生です。 2人はだいちゃんの部屋に来ると、まずベッドの上のふうせんが目に入ったようです。
「わぁ~、ふうせんがいっぱい‼」
美佳ちゃんは歓声をあげました。
「ねえ、ゲームじゃなくて…今日はふうせんで遊ぼうよ」
拓也君が言いました。
「うん、いいけど…」
だいちゃんが言ったところへ 《ピンポーン》 まインターフォンが鳴りました。拓也君が窓から門の方を覗いて、
「あ~、優太君と翔君だ」
と言いました。 優太君はだいちゃんと同じ3年生で、翔君は優太君の弟で1年生です。 優太君も翔君も風船で遊びたいと言うので、それぞれ好きなふうせんを選んで空き地に向かいました。
「俺は赤いふうせんにする」
拓也君は赤いふうせんを選びました。
「僕はね~、青がいい」
翔君はにっこり笑うと青いふうせんを取りました。
「それじゃ私は…ピンクにする」
美佳ちゃんはピンクを選びました。
「僕はね~、オレンジ色。優太君は何色にする?」
だいちゃんが言いました。
「う~ん。どれにしようかな~。黄緑がいいかな」
優太君は黄緑色にしたようです。
「全員自分のふうせんは決まったね。それじゃ、外で遊ぼうぜ!」
拓也君が言うと全員で空き地に向かいました。
フワフワポーン フワフワポーン 子供達は、歓声をあげながら、ふうせんを飛ばして遊んでいます。 そこへ要君と夏海ちゃん通りかかりました。
「なんだ。こんな所にいたの? 探しちゃったわ」
夏海ちゃんが不機嫌そうに言いました。
「ごめんね。今日は来ないのかな…って思ったんだもん」
だいちゃんは謝りました。
「気にしなくていいよ。来るって約束してたわけじゃなかったし…それよりも僕の分の風船ある?」
要君が言いました。
「うん、僕…家まで取りに行ってくる」
だいちゃんが急いで家に戻って風船を持ってきたので、要君と夏海ちゃんも風船で遊びました。
風船たちも嬉しそうに踊っています。子供たちは汗びっしょりになって遊びました。
「ねえ、疲れたから休憩しない?」
優太君が言いました。
「そうね。休憩しましょ」
美佳ちゃんが言うと、皆は草の上に座りました。
「ねえ、ふうせんが何個あったらお空を飛べるのかなぁ~」
1番小さな翔君が言いました。
「1000個位あったら飛べるんじゃない?」
要君が言いました。
「僕は10,000個位無いと飛べないと思うな」
だいちゃんが言いました。
「私達が膨らませたふうせんでは10万個あっても無理よ…。空気より軽いガスを入れないと、空に飛んでは行かないのよ」
美佳ちゃんの言葉に皆はガッカリです。
「でもさあ~、空を飛べたら楽しいよね」
翔君が両手を広げて、その腕をゆらしながら、皆の周りを走り回りました。
「ねえ、今から皆でお昼寝して空を飛ぶ夢を見ようよ」
「翔君、夢ってかってに見ちゃうものだから…思った通りの夢を見るのは難しいかもよ」
だいちゃんに言われ、翔君はガッカリしています。
「でも翔君はいい子だから、ひょっとしたら鳥になって空を飛ぶ夢を見れるかもしれないけどね」
美佳ちゃんのフォローに少し元気を取り戻した翔君は、安心したのか本当に眠ってしまいました。
「凄くはしゃいでいたから疲れちゃったのね」
夏海ちゃんが、寝顔を覗き込んでにっこり笑いました。
「空を飛んでる夢でも見てるのかしらね」
美佳ちゃんは翔君の体を優しくトントンしながら言いました。
「翔君は私が見てるから、皆は遊んできていいわよ」
美佳ちゃんが言いました。
「美佳ちゃん…ごめんね。僕遊んで来るね」
だいちゃんはすまなそうに言うと、ふうせんを持ってさっき遊んでいた所に歩いて行きました。
「それじゃ、僕も…。 ねえ…だいちゃ~ん、待ってよ~」
要君もそう言って、走って行きました。
「それじゃ、私も行こ~かな」
「俺も…」
夏海ちゃんと拓也君も走り出しました。
「美佳ちゃんは、僕達皆のお姉さんみたいだね」
皆が楽しそうに遊ぶ姿を見ながら、優太君が言いました。
「そんな感じかも…。優太君も遊んでおいで」
美佳ちゃんはにっこり笑いました。
「それじゃ、僕も……。美佳ちゃんごめんね」
優太君は、何度か振り返りながらも、だいちゃん達が遊んでいる方へと歩いて行きました。 美佳ちゃんは遊んでいる子供達を眺めながら、翔君の胸を軽くトントンしました。そして、子供達が振り返ると、笑顔で手を振りました。
やがて翔君が目をさまし目をこすり出すと、《ゆうやけこやけ》の音楽が流れてきました。
「グッスリ眠れた?」
「うん。眠れたよ。…あのね…僕ね。お空を飛ぶ夢を見たんだよ」
翔君はにっこり笑うと、鳥のように両手を広げて、上下に揺らしました。
「そう、良かったね」
美佳ちゃんは翔君の頭をなでました。それから、遊んでいる子供達に向かって言いました。
「もう、お家へ帰ろう」
その声を聞き、子供達はそれぞれ風船を持って集まって来ました。
「イヤだ~。もっと遊びた~い」
夏海ちゃんが、口をとがらせ駄々をこねました。
「遅くなると、お母さんが心配するでしょ。今流れている曲はね、カラスと一緒に帰りましょう~っていう歌なのよ」
「うん、分かった。そのかわり明日もまた遊ぼうね」
夏海ちゃんもあきらめたようです。 子供達は、それぞれ自分達の遊んだ風船をだいちゃんの部屋のベッドに乗せると、
「また明日遊ぼうね、バイバ~イ」
と言って帰って行きました。
お友達が帰ってしまうと、だいちゃんは宿題をすませリビングに降りてきました。 お母さんは夕食の準備をしています。今日はどうやらだいちゃんの大好物のカレーのようです。 夕食の準備ができた頃、お父さんが帰って来ました。
「お父さん、お帰りなさい」
こうして会社から帰って来たお父さんを毎日出迎えるのは、小さい頃からの習慣になっています。
「クンクンクン…いい匂いだ。今日はカレーだな」
お父さんが着替えて食卓につくと、いつも楽しくおしゃべりしながら夕食を食べます。
「…そうか、皆で風船で遊んだのか。楽しそうだな~。今度はお父さんも仲間に入れてくれよ」
「うん、いいよ」
お母さんはにこにこしながら2人の会話を聞いています。 食事が終わると、だいちゃんとお父さんは一緒にゲームをしました。
「く~悔しい。負けちゃったよ」
ガッカリしたようにお父さんが言いました。
「どんなもんだい」
だいちゃんは得意気に言いました。
「さあ、そろそろお風呂に入りなさい」
お母さんに言われ、だいちゃんはお父さんと一緒にお風呂に入りました。 だいちゃんが両手を使って水鉄砲を飛ばしました。
「おう、上手くなったな。それじゃ、どっちが遠くまで飛ぶか競争だ!」
「よ~し、負けないぞ!」
だいちゃんは頑張りましたが、やっぱりお父さんの方が上手です。
「ハハハ…。ゲームでは負けたけど、水鉄砲はお父さんの勝ちだな」
お父さんはそう言って笑いました。
「この次は負けないもんね」
悔しがるだいちゃんに
「おう、頑張れ」
とお父さんはだいちゃんの頭を撫でました。 お風呂を出た後テレビを見て、だいちゃんは9時頃眠りました。
気持ちよさそうに眠っているだいちゃんの顔を、じっとのぞきこんでいる者がいます。 それは7個の風船たちでした。
「今日は楽しかった」
青いふうせんが言いました。
「空に舞い上がった瞬間がたまらないよね」
黄色のふうせんが言いました。
「でもさあ、僕達を飛ばして遊んでいた子供達、僕たちよりも楽しそうだったね」
白いふうせんが言いました。
「僕達が人間になって、子供達を飛ばしてみたいね」
オレンジのふうせんが言うと、風船たちはいっせいにため息をつきました。
「でも、どうしたら良いんだろう…」
風船たちは考えました。
「そうだ。空気入れでだいちゃんを膨らませて風船にしちゃおう」
赤い風船が言いました。
「名案、名案!」
皆は頷きました。 しかし、軽い風船たちが何人乗っても、空気入れはちっとも動きません。
その時です。 開け放った窓から、虹色をしたハンカチが風に乗って舞いこんで来ました。
「まあ、綺麗なハンカチ…」
ピンクの風船はにっこり笑いました。
「このハンカチで遊ぼうよ」
「「さんせ~い!」」
ふうせん達は大喜びです。
フワフワポーン… フワフワポーン…
「楽しいね」
オレンジのふうせんが言いました。
「最高の気分だね」
白いふうせんが言いました。
ところが、夢中で遊んでいるうちに、ハンカチがふわっと窓の外に…。
「たいへ~ん‼」 あわててピンクの風船が、ハンカチを追いかけて、ちょこんと上に乗ってしまいました。
「ピンクちゃ~ん‼」
皆どうしていいか分からず、ただオロオロするばかりです。 ハンカチはピンクの風船を乗せたままグルリと旋回すると、また風に乗ってだいちゃんの部屋の中に戻って来ました。
「よかったね~」
「戻って来れて…ホッとしたよ」
「恐くなかった?」
風船たちは大喜びしながら、口々に声をかけました。
「ちょっとビックリしたけど楽しかったわ」
ピンクの風船は笑顔で言いました。 その時不思議なことが起こりました。 虹色をしたハンカチが、みるみる大きくなっていったのです。 もう、ふうせん達はビックリです。 虹色のハンカチはさらに大きくなり続けました。それと同時にじゅうたんのように厚くなっていきました。 ふうせん達はポカンと口を開け、見ているだけしか出来ません。
ハンカチは2m 四方位のじゅうたんになってフワフワと浮いていました。
「何が何だか分からないけど、とにかく乗ろう」
赤い風船が言うと、皆は恐る恐るじゅうたんに乗りました。
「あとは黄緑ちゃんだけよ。早く乗って!」
ピンクの風船が言いました。
「だ…だって、恐いんだもん」
黄緑のふうせんは、なかなか乗れません。
「だいじょうぶだよ。ちっとも恐くないから、早く乗って‼」
オレンジ色の風船が言いました。
「……でも…やっぱり、恐いよ~」
黄緑の風船は、とうとう泣き出してしまいました。 その泣き声を聞いて、だいちゃんが目をさましました。
「あれっ、風船さん達…何やってるの?」
目をこすりながらだいちゃんが言いました。
「実は…」
赤い風船が、だいちゃんにこれまでのことを説明しました。
「へぇ~、虹色のハンカチがこのじゅうたんになったんだね」
世ん達はうなづきました。
「ひょっとしたら、これは魔法のじゅうたんかもしれないよ。 ねえ、これから皆で探検に出かけようよ」
だいちゃんは大喜びで、じゅうたんに乗りこみました。
「あ…あのう~、ぼ…僕まだ…乗れていないんですけど…」
黄緑の風船は、恐くてまだじゅうたんに乗れていなかったのです。
「ハハハ…。黄緑君、恐がらなくても大丈夫だよ。 風船さん達は体が軽いから、落ちたってケガなんてしないよ」
だいちゃんに言われ、黄緑の風船は安心してじゅうたんに乗りこみました。
「皆さん、こんばんは」
突然声がしました。若い男性の声です。皆はキョトン(・_・)としました。 誰だろう、こんな時間に…。 だいちゃんはキョロキョロ(゜゜;)(。。;)まわりを見ましたが、誰も見当たりません。
「誰かいるの?」
ピンクのふうせんが言いました。
「これはこれは、ピンクのお嬢さん。 私は皆さんが乗っている『魔法のじゅうたん』で旅行案内をするものです」
「で…でも、どこにいるの?」
黄緑の風船が、怯えたように言いました。
「ハハハ…君達が乗っているじゅうたんですよ」
「ええっ、じゅうたん?」
だいちゃんはじゅうたんを降りて、下を覗き込んでから言いました。
「誰もいなかったよ」
「じゅうたんを覗いても僕の姿は見えないですよ。だって、僕自身が魔法でじゅうたんになっているんですから…」
「へえ、お兄さんは魔法使いなんだね。 それじゃ、僕達をどこかに連れて行ってくれるの?」
「モチロンです。どこか行きたい所はありますか?」
「それじゃ、僕は学校がいいな」
だいちゃんは、瞳を輝かせながら言いました。
「僕達は、昼間遊んだ空き地へ行ってみたいな」
黄色のふうせんが言うと、他のふうせん達も頷きました。
「分かりました。それじゃ、まずはだいちゃんと皆さんが昼間遊んだ空き地へ向けて出発進行‼」
だいちゃんとふうせん達も 「出発進行‼」 と、声をそろえて言いました。
「それなら心配はいりませんよ。このじゅうたんの底から光が出て、昼のように明るくなりますから。 しかも、その明かりは特殊な物で、他の人達には見えないんです。 では、まず空き地に行きますよ」
じゅうたんは、まずU字型になって窓をスルリと抜けました。 それから眩しいくらいの明かりで周りを照らしました。まるで昼のような明るさです。
「すご~い(*゜Q゜*)」 だいちゃんと風船達は歓声をあげました。 隣に住んでいる優太君と翔君達の部屋は、カーテンを締め忘れているようで、2人のグッスリ眠っている姿が見えました。 夏海ちゃんの家と要君の家も行きましたが、子供部屋の電気が消えていました。 「皆、眠ってるんだ…つまんないの~」
思わずだいちゃんがつぶやくと、
「仕方ないですよ。もう10時過ぎてるんですから」
じゅうたんが言いました。
「拓也君の部屋は…っと。 あれっ、電気がついてる」
2階の子供部屋の窓が開いていて、中の様子が見えました。 拓也君は眠っているようでしたが、美佳ちゃんは窓側の机に座ってマンガの本を読んでいるようです。
全員が同じ方を見るので、じゅうたんが傾き、皆は「キャー」と悲鳴をあげました。
「皆さん安心して下さい。このじゅうたんには、目には見えないですがバリアーがあって、下には落ちないようになっています」
「そんなの早く言ってよ。僕マジで恐かったんだからね~」
だいちゃんは口を尖らせていいました。
「すみません。あっ、空き地が見えて来ましたよ」
「あ~ホントだ~。 僕達が遊んでいた空き地だ!」
だいちゃんの声に、ふうせん達が、どれどれと空き地が見える前の方に集まって来ました。
「わ~お‼」
「すごいや\(^_^)/」
「ヤッホー(^O^)/」
ふうせん達は、大興奮大感激です。 じゅうたんが空き地の上空まで来ると、
「ここで…遊んでいっても…いいですか?」
黄緑の風船が言ったので、皆はビックリして黄緑の風船を見ました。
「だって僕…まだ…遊んで無かったんだもの」
顔を赤らめながら、もじもじして黄緑の風船が言いました。
「あら? 黄緑ちゃん、昼間遊んで貰わなかったの?」
ピンクのふうせんが驚いて言いました。
「うん。 優太君が弟の翔君と遊んだから、僕はずっと草の上で皆が遊ぶのを見ていたんだ」
寂しそうに黄緑のふうせんが言いました。
「そうだったの。ちっとも気づかなかったわ。ごめんね」
ピンクのふうせんが謝りました。
「そうだったんですか。それじゃ30分だけ遊んでもいいですよ」
じゅうたんが言いました。
「ええっ、本当にいいの?」
黄緑の風船ばかりでなく、他の風船たちやだいちゃんまで大喜びです。
「じゅうたんさん有難う」
風船達は口々にお礼を言いました。
「本当は1時間位遊ばせてあげたいんですが、このあと学校へも行かなくちゃいけないのでね。 少し待って下さいね。今、準備しますから」
少しすると、空き地に大きなトランポリンのような物が現れました。 そして、じゅうたんが下に降りて来ると、 「はい、遊んでいいですよ。一応トランポリンの周りにも、光のバリアーがあるので、トランポリンから落ちることはありませんし、草がチクチク痛くなることはありませんからね」
じゅうたんが言いました。 だいちゃんとふうせん達は「わ~い」と言って遊び始めました。 昼のように明るいのに、周りの人には見えないなんて不思議だな…と、だいちゃんは思いました。 トランポリンで皆は思いっきり楽しく遊びました。 ピョ~ンピョン ピョ~ンピョン 風船達もだいちゃんも本当に楽しそうです。 そして、30分がたち皆はニコニコしながら、じゅうたんに乗り込みました。 さて、いよいよだいちゃんの小学校に向けて、じゅうたんは動き始めました。
だいちゃんと風船達は、再びじゅうたんに乗り込むと、短い空の旅を楽しみました。
「あっ、花園小学校だ!」
だいちゃんが歓声をあげました。 じゅうたんは校庭に止まると、言いました。
「はい、お待たせしました。だいちゃんの通っている花園小学校に到着しました~。足元に気をつけて降りて下さい」
まずだいちゃんが降りると、風船達が弾むようにしながら次々に降りました。
「これが学校と言うものなのね」
ピンクの風船がポンポン弾みながら1回転して言いました。
「ここで僕は勉強しているんだ」
だいちゃんが笑顔で言いました。
「勉強って、どんな事をするの?」
白い風船が尋ねました。
「う…ん。国語とか算数とか…。どう説明すればいいんだろう…」
「僕も、その勉強と言うのをやってみたいな~」
白い風船が言うと、他の風船達も
「僕も」
「私も」
と言い出しました。
「そんなこと言っても無理だよ。勉強を教える先生がいないもの」
だいちゃんが言うと、ふうせん達はガッカリしてしまいました。
「風船さん達、ガッカリすることはありませんよ。先生ならここにいます」
「ええっ‼」
その言葉にだいちゃんと風船達は、驚いて叫び声を出しました。
「じゅうたんさん、先生はどこにいるの?」
「ここにいます。私が風船達に勉強を教えます。」
「ええっ‼ じゅうたんさんが先生をやるの? でも、どうやって…」
「ちょっと待って下さい。今、姿を元に戻します」
そう言うと、じゅうたんは、縦になりグルグルと回り始めました。 グルグルグルグル… グルグルグルグル… じゅうたんは、七色の光に包まれ次第に形を変えていきました。 だいちゃんと風船たちは、ただただ驚いて見つめていました。 じゅうたんのいた所には、1人の青年が立っていました。
「お兄さんがじゅうたんになっていたんだね。ぼく…もう、ビックリしちゃったよ~」
風船たちも目をパチクリして呆然としています。
「ちょっと、驚かせ過ぎたかな? 」
青年は頭をかきました。 僕は大空雄大と言います。僕が風船さん達に勉強を教えますよ」
大空と名乗る青年はにこやかに言いました。
「本当は勝手に教室に入ってはいけないんですが、今日は特別の日なので許して貰いましょう」
大空青年はそう言うと、胸のポケットから虹色のペンを出し、校舎に向けて七色の光線を出しました。
「すご~い(*゜Q゜*)‼」
だいちゃんは、思わず歓声をあげました。 ふうせん達もあまりの美しさに、うっとり見とれています。 光線は七色に輝き校舎を包みました。
「さあ、カギを開けたので教室へ行きましょう」
「それじゃ、僕の教室を案内するね」
そう言うと、だいちゃんは歩き出しました。その後を風船たちがフワリフワリとついて行きます。大空青年は最後を歩きました。
「えへん。ここが僕の教室だよ」
だいちゃんが言いました。
「へえ、これがだいちゃんの勉強している教室かぁ」
赤いふうせんが、ピョンピョン弾みながら教室を眺めました。
「なんか楽しそう…ウキウキするわ」
ピンクのふうせんはニコニコしています。
「早く勉強したいな~」
白いふうせんは、ソワソワして落ち着きません。
「皆さん、おはようございます。風船さん達は席について下さい」
大空青年が教室の前に立って言いました。
「は…はい。あ…あのう、僕たちどこに座ったらいいんですか?」
青いふうせんが困ったように言いました。
「どこでもいいですよ。好きな所に座って下さい。そうですねえ…。ふうせんさん達は机の上に座ってもらった方がいいかな?」
大空青年は少し首を傾げて言いました。 だいちゃんは自分の席に座り、風船たちは好きな所に(と言っても全員前の方ですが)座りました。
「はい、全員自分の席につきましたね。それでは出席をとります。名前を呼ばれた人は元気に
「はい」と返事して下さい」
大空青年が言うと、ふうせん達は緊張した表情になりました。
《だって初めての体験ですもの仕方ないですよね。》
「涼宮大輔さん」
「はい(^O^)/」
だいちゃんは、元気いっぱいに手を挙げて返事しました。
『そうか、あんな風にすればいいのか…』
赤いふうせんが、だいちゃんを見ながら頷いていると、
「赤い風船の赤君」
突然、大空青年が言ったので、赤いふうせんはビックリして机の上から落ちそうになりました。
「は…はい」
赤い風船も、だいちゃんに負けない位大きな声で返事しました。
「はい、元気でいいですよ。次は青い風船の青君」
「は~い」
「はい、青君も元気に返事できましたね。次は白い風船の白君」
「はい。勉強楽しみです」
「白君にそう言われると、張り合いが出ます。勉強頑張って下さいね。 次は黄色の風船のきいろ君」
「はい」
「きいろ君の笑顔が良いですね。次はオレンジの風船のオレンジ君」
「はい」
「はい。オレンジ君も元気があって良いですよ。それではピンクの風船のピンクさん」
「はい。先生私…ドキドキです。でも、嬉しいからウキウキでもあります」
「ピンクさん、ドキドキ、ウキウキ楽しみにしていて下さいね。…最後は黄緑の風船の黄緑君」
「は…はい。あ…あのう先生。僕…勉強…頑張ります」
黄緑のふうせんはそう言うと、にっこり笑いました。 他の皆もホッとしたように明るい笑顔になりました。
「それでは授業を始めます。あまり時間がないので、ふうせんさん達は自分の色を書けるようにしましょう。 それから、数字の1から10までを書けるようにしましょうか」
「先生。風船さんたちは手が無いから字が書けません」
だいちゃんが言いました。
「これは失礼。それでは手を描いてあげましょう」
大空青年は、マジックで手を描くと、その描いたものを指先で軽くつまんで引っ張りました。 すると…、 あら不思議。自由に動く手が出来ました。
「わ~い\(^o^)/ 手が出来たぞ‼」
「これで何でも出来ちゃうね」
「よ~し。勉強頑張るぞ~ o(`^´*)」
ふうせん達は大喜びです。 大空青年に渡された特製の鉛筆で、何度も何度も『自分の色』を書いています。 あか ・ あお ・ しろ ・ きいろ ・ オレンジ ・ ピンク ・ きみどり
「僕は4個も覚えなくちゃならないから大変だよ」
オレンジ君の風船が、ため息をつきました。
「僕も4個だよ。皆よりたくさんの字を覚えられるから嬉しいな」
黄緑の風船は、笑顔で何度でも繰り返し練習しています。 だいちゃんも助手として、風船たちの勉強を指導しました。
「黄緑君、ずい分頑張って皆よりもたくさん練習していますね」
「は…はい、先生。勉強はとっても楽しいです。僕…もう、自分の名前が書けるようになりました」
「あら~、黄緑ちゃん凄いわ~4個もあるのに、もう書けるようになっちゃったの?」
黄緑のふうせんは、ピンクのふうせんにほめられ照れくさそうにしています。 全員が自分の体の色を書けるようになったので、今度は数字の練習をしました。 勉強をする楽しさを知った風船たちは数字もあっという間に覚えてしまいました。
「皆さん優秀ですね。驚きました。 時間があったら、もう少し一緒に勉強したいんですが、もう遅いのでそろそろ帰りましょう」
校庭に行くと、大空青年は再びじゅうたんになりました。そして皆を乗せると、だいちゃんの家へ帰って行きました。
だいちゃんの家に着くと、大空青年は言いました。
「皆さんを素晴らしい所に招待します」
「素晴らしい所って、どんな所なの?」
だいちゃんは尋ねました。
「それは今は言えません。でも、とっても素晴らしい所です。 近所のお友達にも声をかけておいて下さいね」
「うん、わかった」
「明日の夜9時になったら、窓を開けて待っているようにお友達に伝えておいて下さい」
2人の会話を聞いていた風船たちは、もう嬉しくてたまらないようです。
「どこへ行くのかな?」
「楽しみだね」
ポンポン弾みながら、風船たちは大はしゃぎです。
「風船さん達も楽しめる所だよ。…それじゃ、僕はいったん家へ帰ります」
「帰るって? お兄さんの家は近くなの?」
「ふふふ…。今は秘密です」
大空青年はウインクすると、虹色の光に包まれました。 そして、変身して現れたのは白い鳩でした。
「おやすみなさい」
鳩になった大空青年は、夜空の中に羽ばたいて見えなくなってしまいました。
「不思議なお兄さんだね」
鳩になった大空青年を見送りながら、だいちゃんが言いました。
「うん、でも優しいお兄さんだよね。僕達に夢を与えてくれたもの」
青い風船が言いました。
「そうよね。お兄さんがいなかったら、私達が学校で勉強する事は無かったものね」
「ピンクちゃんの言う通りだよね。また学校へ行って勉強したいな~」
白いふうせんが言いました。
「勉強…楽しかったよね」
オレンジの風船はニコニコしながら言いました。
「僕は、だいちゃんに…お礼が…言いたいな」
黄緑の風船が言ったので、皆が注目しました
「だ…だって、だいちゃんが顔を描いて…く…くれなかったら、僕達は景色を見ることも、こうして話すことも…で…出来なかったわけだし…」
皆に注目されて、黄緑の風船はドキドキしました。
「確かに、黄緑ちゃんの言う通りだね。…だいちゃん有難う」
黄色の風船が言うと、他の風船たちも口々にお礼を言いました。
「何か、ちょっと照れちゃうよ、僕」
だいちゃんは照れくさそうに言いました。
翌日朝ご飯を食べ終わると、だいちゃんは自分の部屋でマンガの本を読みながらお友達が来るのを待っていました。 風船たちは、まだスヤスヤ眠っています。
《ピンポーン》
さっそく拓也君と美佳ちゃんが遊びに来たようです。 だいちゃんは玄関に急いで降りて行くと、
「早く2階に上がって…」
はやる気持ちを抑えるように言いました。
「だいちゃん、何か…朝からずい分元気がいいね」
拓也君がニヤニヤしながら言いました。
「嬉しいことがあったのね」
美佳ちゃんもニッコリ笑いました。
「まずは僕の部屋に来て…」
拓也君と美佳ちゃんが自分の部屋に来ると、
「実はね、僕、風船たちと友達になったんだ~」
だいちゃんがニコニコして言うと、拓也君は大爆笑しました。
「何を言い出すのかと思ったら…夕べの夢の話してるの?」
美佳ちゃんまでクスクス笑いをこらえているようです。
「夢の話じゃないよ。ホントなんだってば~」
「風船って、この風船たちと友達になったってこと(^_^;)?」
だいちゃんの真剣な表情を見て、美佳ちゃんが言いました。
「そうだよ。今、僕のベッドで眠っているふうせんさん達だよ」
「ええ~っ、それじゃあ…ふうせん達がおしゃべりするっていうわけ?」
だいちゃんの話を聞いて、拓也君は、赤い風船をツンツンとつつきながら言いました。
すると、
「キャハハ…やめてよ。くすぐったいよ~ (=^▽^=)」
赤いふうせんが言いました。
「今のは何( ; ゜Д゜)?」
拓也君が驚いて、赤い風船を見ました。
「何って…? 赤君、寝ぼけてるみたいだね」
拓也君は自分の頭をかきむしるようにようにしたり、ポンポン叩いたりしています。
「確かに、今、赤い風船がしゃべったわ」
美佳ちゃんも目を丸くしています。(・_・)
「ふあ~、よく眠った~」\( ̄0 ̄)/
今度は、青い風船があくびをしました。
「俺の方こそ…、まだ寝ぼけているのかもしれない」
拓也君は目をこすりながら言いました。
「拓也君が寝ぼけているんじゃないよ。今、本当に赤君や青君がしゃべったんだよ。 風船たちが話せるから友達になれたんだよ」
ピンクのふうせんがウインクしました。 拓也君と美佳ちゃんは、最初はとてもビックリしましたが、しだいに慣れてきて、風船たちと仲良くなりました。
拓也君と美佳ちゃんが風船たちとおしゃべりしていると、
《ピンポーン》
また誰か来たようです。拓也君は門が見える窓から覗き込みました。
「あっ、優太君と翔君が来た!」
そう言いながら、拓也君はニヤニヤ(^m^)しています。 しばらくすると、優太君と翔君が、
「おじゃましま~す」
と言って、ドアを開けて入って来ました。
「「おはよう~」」
だいちゃんと美佳ちゃんも返事しました。
「拓也君、何でニヤニヤしてるの?」
翔君が言いました。
「べ…別に…」 ♪~(・ε・ )
拓也君は口笛を吹いて知らんぷり。すると、
「優太君と翔君おはよう!」
風船たちが一斉に挨拶したので、優太君と翔君はビックリして尻餅をついてしまいました。
「あ~ビックリしたぁ~」
「ふ…ふうせんが、しゃ…しゃべったぁ」
2人がビックリする姿を見て、大爆笑する拓也君を姉の美佳ちゃんがたしなめました。
「拓也! そんなに笑うんじゃないの(*`Д´)ノ!」
「は~い」
口では謝っているのに笑いがおさまらない拓也君に、
「いつまで笑っているんだよ~」ι(`ロ´)ノ
翔君はほっぺを膨らませて言いました。
「もう、拓也は笑い上戸なんだから…。ごめんね」 (^o^;)
「ぼ…僕、笑顔って好きだな。な…何か楽しい気分になるもん」
「確かに黄緑ちゃんの言う通りね。私も笑顔って好きよ。笑っている人を見ていると楽しくなるもの」
ピンクの風船がベッドの上で弾みながら言いました。
「でもね、驚いて尻餅ついた人を笑うのはいけないわ。…可哀想でしょ」
呆れるように美佳ちゃんは言いました。
「ごめ~ん」
拓也君は謝りました。
《ピンポーン》
またインターフォンが鳴りました。今度は翔君が門の方を覗き込んで言いました。
「要君と夏海ちゃんが来たよ」
「おはようちゃ~ん、要君の登場ですよ~。みんな元気だったかな?」
要君がドアを開けながらニヤニヤして言いました。
「何言ってるんだよ。昨日会ったばかりじゃんか!」
拓也君はあきれかえったように言いました。
「へっへっへ…。ちょっとアイドル気分で言っただけ」
「アイドルはそんな変なしゃべり方しないよ」
「そうかな~」
そんな2人を無視するように、夏海ちゃんが言いました。
「おはよう!今日は何して遊ぶ?」
その時白いふうせんが、
「要君おはよう」
と言いながら、弾んで来ました。要君は両手でキャッチすると、
「白君は話が出来るんだね。昨日はちっとも気づかなかったよ。今日も一緒に遊ぼうね(⌒‐⌒)」
と言いました。
「…と言うことは、黄色ちゃんも話せるのね」
夏海ちゃんはニコニコしながら、黄色の風船に話しかけました。
「あのさ~。2人とも驚かないの?」
拓也君は話する風船に驚かない2人を見て、ガッカリしています。
「だって、風船と友達になれるなんて嬉しいよね、要く~ん」
「夏海ちゃんと初めて意気投合したね…(^O^)」
要君と夏海ちゃんは嬉しそうにつないだ手を揺すっています。周りにいる友達はあきれ顔です。
「ところで…」
美佳ちゃんが言いました。
「風船さん達が、どうして話をするようになったの?」
「魔法使いが魔法をかけたとか…?」
拓也君も興味津々です。
「実は、そうなんだ」
だいちゃんが言うと、要君はキョロキョロ部屋中を探しています。そしてだいちゃんの部屋に誰もいないと分かると、
「ねえ、魔法使いはどこに隠れているの?」
「多分アパート…かな?」
「何で魔法使いがアパートにいるんだよ。そんな夢の無いこと言わないでよ」
要君がガッカリしたように言いました。
「でも…大空さん、そんな事言ってたよ。 大空さんはね。魔法を使ってじゅうたんに変身して、僕や風船たちを学校まで連れて行ってくれたんだよ」
「エエッ、マジで? ( ; ゜Д゜)いいなあ~」
「僕達、学校で勉強したんだよね~」
白いふうせんが言うと、
「そうだよね。僕達自分の色をひらがなで書けるようになったものね」
オレンジ色のふうせんが得意気に言いました。
「数字だって書けるのよ。勉強って楽しいわね」
ピンクのふうせんが言うと、他のふうせん達も夕べの事を思い出してニコニコしています。
「魔法のじゅうたんかぁ~。いいな~。私も乗ってみたいな~」
夏海ちゃんは両手を頬に当てて夢見る乙女になっています。
「いいな~。僕も魔法のじゅうたんに乗りたいよ~」
翔君はベッドに座り、足をバタバタさせながら言いました。 だいちゃんは、夕べの出来事の一部始終を皆に話して聞かせました。
「…と言うことは、私達も今夜魔法のじゅうたんに乗って、空の旅に行けるって事なの?」
いつも穏やかな美佳ちゃんが、興奮して言いました。
「夢をみているみたい(*´-`)」
夏海ちゃんも夢心地です。
「今、朝の9時だから~、夜の9時と言うことは~、あと12時間か~。待ち遠しいな~」
壁掛け時計を見ながら、拓也君がため息をつきました。
「でも拓也。 あと12時間したら魔法のじゅうたんに乗れるんだよ。凄いと思わない?」
「美佳ちゃんの言う通りだよ。あと12時間したら、僕達だけが魔法のじゅうたんに乗って、空の旅に行けるんだもんね。」
大人しい優太君も興奮して言いました。
「皆、分かった? 夜の9時になったら窓を開けて待っているようにだってさ。 もし、眠っちゃった人は置いていきま~す(^O^)/」
だいちゃんが言うと、皆は
「分かった」
と返事しましたが、要君が不安そうに言いました。
「どうしよう…。起きていられるかな~。僕さ~、いつも8時には眠っているんだよね。 たまに、夕ご飯食べながら眠っちゃうこともあるんだ。自信ないな~(--;)」
「それじゃ、夕ご飯の後、窓を開けて笑っちゃう楽しいマンガを読んで待っているって言うのはどう?」
夏海ちゃんが提案しました。
「そうね。…でも、それだけじゃ心配だから、お昼ご飯の後、少し昼寝すると良いかも」
1番年上のお姉さんの美佳ちゃんの意見に全員賛成です。
「それじゃ、今から空き地に行って、風船さん達と遊ぼうよ」
「そうだね、翔君。…皆、空き地に行って遊ぼう!」
美佳ちゃんが言うと、皆は「は~い」と言って、それぞれ自分のふうせんを持って空き地に向かいました。
フワフワポーン フワフワポーン
子供達は楽しくふうせんを弾ませます。
ふうせん達も笑顔で弾みます。
フワフワポーン フワフワポーン
子供達もふうせん達も楽しく遊んで疲れたので、だいちゃんの部屋に戻って来ると、ゲームをしました。 子供達がゲームしているのをのぞき込んでいた風船たちも遊びたくなってきました。
「ねえ、風船さん達にもゲームを教えてあげましょうよ。大空さんに魔法で手をつけてもらっているから遊べるんじゃないの?」
美佳ちゃんが言うと、ふうせん達もゲームをやりたいと言うので皆で教えてあげました。 風船たちはすぐにゲームを覚えてしまい、皆で楽しく遊びました。
「もうお昼だよ」
翔君が言いました。
「それじゃ、皆家に帰ってお昼を食べた後昼寝をしてから、だいちゃんの家に集合ね」
美佳ちゃんが言うと、皆はそれぞれの家に帰って行きました」
お昼寝をして、皆が集まって来ました。 拓也君と美佳ちゃんは2時頃来ました。 夏海ちゃんと優太君と翔君は2時半頃に来ました。 要君が来たのは3時少し前でした。
「遅くなっちゃってごめん。でも、グッスリ眠ったから夜は起きて待っていられそうだよ。ウッヒッヒ」
気持ち悪い話し方はやめてね、要君」
夏海ちゃんに言われて、要君は「ふあ~い」とふざけたように言いました。
「もう~、要君ったらいつもこうなんだから」
夏海ちゃんはあきれたように言いました。 そこへだいちゃんのお母さんが、たくさんのドーナツを持って来ました。
「たくさん作ったからお腹いっぱい食べてね」
「おぉ~! おばさん、ずい分たくさん作ったねぇ。僕ちゃん感激です」
「要君、大食い選手権やろうぜ(^O^)」
拓也君もやる気満々…と言うか、食べる気満々です。
「ふふふ…21個作ったから、1人3個ずつあるわよ。 今、飲み物を持ってくるわね」
お母さんはにこにこ笑いながら言うと、麦茶と牛乳を持って来ました。
「食べる前には手を洗ってね」
「は~い。おばちゃん、有難うございます」
美佳ちゃんがお礼を言うと、他の子供達もお礼を言いました。
「おばちゃんの作ったドーナツは美味しいね」
美佳ちゃんが言いました。
「ほんと、ミス〇ード〇ナツの位美味しい」
夏海ちゃんもニコニコしながら食べています。 だいちゃんは、お母さんが誉められて嬉しそうに「うん」と頷きました。
「僕、もうお腹い~っぱい」
翔君が言うと、
僕も…。美味しいんだけど、2つは食べられない」
お兄ちゃんの優太君もご馳走さまと手を洗いに行きました。
「私も、今はもう食べられないわ。後でまたお腹がすいたらたべようっと」
そう言って夏海ちゃんも手を洗うと、写真集を広げて見ています。 優太君と翔君は既にマンガの本を読んでいます。 残った子供達は2個目に入りました。
「私も2個が限界…」
「僕もお腹いっぱいだ~」
美佳ちゃんとだいちゃんが、大食い選手権から脱落しました。残るのは要君と拓也君の2人です。 皆が見守る中、拓也君が3個目に手を出しました。 要君は手にしていたドーナツを無理に口の中に詰め込むと、ゴホゴホ…とむせったようです。
「む…麦茶~」 (ノд<。)゜
美佳ちゃんが要君のコップに麦茶を注ぐと、要君はぐっと飲み干しました。 そして、チラリと拓也君を見ると、3個目のドーナツを取り食べ始めました。 拓也君もむせったようで、胸をトントンしています。すかさず、美佳ちゃんが、麦茶をコップに注いであげました。
「拓也君頑張れ! 要君頑張れ!」
だいちゃんが言うと、他の皆も応援を始めました。
「もう…限界だ~。これ以上は絶対無理 (>_<)」
拓也君は3個でアウトです。要君はそんな拓也君を見てニヤリと笑うと、4個目を手に取り食べ始めました。
「要君は痩せの大食いだね」
夏海ちゃんは呆れたように言いました。 しかし、そんな要君も5個目には手が出ませんでした。
「あ~、さすがに苦しい~。でも、大食い選手権の優勝は僕だね」
要君は得意げにお腹をさすりました。
「要君おめでとう」
だいちゃんがアニメキャラクターの描いてある下敷きで賞状を渡すマネをすると、要君は
「有難うございます」
と言い、それを受け取りました。 子供達が楽しそうに笑っている姿を、不満そうに見つめている者がいます。 そう、それは風船たちでした。
「まだ7個残っているけど…どうする?」
だいちゃんが言いました。
「僕、もうお腹一杯だからいらな~い。風船さん達にでも食べさせて」
拓也君が言いました。 もちろん拓也君は冗談で言ったのですが…。
「僕、風船さんに食べさせてあげる」
翔君が元気いっぱいの笑顔で言うと、ドーナツを白いふうせんの口に押し付けました。 他の皆はあ然としてしまいましたが、翔君はお構いなしに
「ほうら食べてごらん」
と言いました。 白いふうせんは、食べ物など食べたことがないので、困っているようです。
「翔君やめて( ̄□ ̄;)!!ふうせんが割れちゃうよ」
美佳ちゃんに言われ、翔君は押しつけていた手をゆるめました。
しかし…次の瞬間、白いふうせんが、もの凄い早業でドーナツにパクついていました。 子供達は目がテン(・_・)になってしまいました。 ( ; ゜Д゜) Σ( ̄□ ̄;)
翔君がびっくりして手を離しそうにすると、白いふうせんは慌てて自分の手でドーナツをつかみ、ドーナツを残らず食べてしまいました。そして、満足げに 「美味しいね、これ」 (⌒‐⌒) と言って、にっこり笑いました。
それを見ていた黄色の風船も、
「僕も食べた~い (^O^)/」
と言いました。
「私も…(^O^)/」
僕も…(^O^)/」
風船たちは次々にドーナツを食べ満足そうです。
お腹がいっぱいになったら眠くなったな~」
赤い風船が言いました。
「少し昼寝しようよ」
オレンジ色の風船は言うが、早いか眠ってしまいました。 すると、全員があっという間に眠ってしまいました。
「すご~い。風船さん達、寝付きいいねぇ」
優太君は関心しています。
「それにしてもビックリしたよね~。ふうせんがドーナツ食べるなんてさ」
だいちゃんの言葉に皆も、頷いています。
「俺が一番ビックリしてるよ。冗談で言ったのに…まさか本当に風船がドーナツ食べるなんてさ」
拓也君が言いました。
きっと、世界中の中でも僕達だけだよね。風船がドーナツ食べるのを見たのはね」
君は、はしゃいでいます。
「ねえ…見て可愛い顔して寝ているよ」
夏海ちゃんの言葉に子供達は風船たちの寝顔をのぞきこみました。
「ほんとだ。可愛いね」
美佳ちゃんも頷きました。
「風船さん達に顔を描いたのは僕だよ」
ちゃんは得意げです。
「でも…描いてるときは、まさかこんな事になるなんて夢にも思わなかったけどね」
「そうだよね」
美佳ちゃんが笑いました。
そこへだいちゃんのお母さんが入って来ました。
「あら~、全部食べたの? 凄いわね。食べきれないかと思って袋を持って来たんだけど、必要無かったみたいね」
だいちゃんのお母さんは満足そうににっこり笑うと、皿やコップを片付けて1階に降りて行きました。
「おばちゃん、本当の事を知ったら気絶するかもね」
要君の言葉に全員が大きく頷きました。
「夜9時に子供部屋の窓を開けて待っていればいいのよね」
美佳ちゃんが確認するように言いました。
うん、そうだよ」
「起きていられるかな」
翔君は心配顔です。
「翔君は心配ないわよ。お兄ちゃんの優太君がいるから…。 それより心配なのが要君だわ」
夏海ちゃんに言われ要君は
「信用無いな~」
と、苦笑いです。
「それじゃ…また」
拓也君がドアノブに手をかけた時、バサバサッと1羽の白い鳩がだいちゃんの部屋の中に入って来ました。 子供達は驚いて振り返りました。
「あっ、大空のお兄さん」
だいちゃんの言葉に子供達は全員ポカ~ンとしています。
拓也君が言い終わらないうちに、白い鳩は虹色の光に包まれ始めました。 そして、虹色の光が消えると同時に大空青年が姿を現しました。 子供達の驚いたことと言ったら、それはもう大変でした。 要君はビックリして尻餅をつくし、拓也君は「あわわわわ…」大空青年を指差しながら目を回すし、夏海ちゃんはへなへなとベッドに座り込むし、優太君は翔君にしがみつくし…。 美佳ちゃんは机に寄りかかるようにしています。
「皆、どうしたの?この人が大空さんだよ」
だいちゃんはキョトンとしています。
「あれっ、大空さんが白い鳩に変身する話はまだしていなかったっけ?」
「そ…そんなの聞いてないよ。もう…ビックリした~」
要君は起き上がりながら言いました。
「俺もビックリして、まだ心臓がドキドキしてるよ」
拓也君は胸に手を当てながら言いました。
「わ~い\(^o^)/凄いな~。お兄さんは本当に魔法使いなんだね」
翔君ははしゃいでいます。 紺色のスーツに虹色の蝶ネクタイ姿。細身で長身の優しそうな青年がそこには立っていました。
「皆さん初めまして。だいちゃんから話は聞いていると思いますが、私が大空雄大です。よろしく」
大空青年は爽やかな笑顔で挨拶しました。
「はじめまして…」
子供達は挨拶しながらも、少し緊張しているようです。
「今夜は皆さんを空の旅にご招待する予定ですが、全員参加と言うことでいいんですよね?」
「はい。ぜひ空の旅に行きたいです。よろしくお願いします」
美佳ちゃんは、はにかんだ表情をして頭を下げました。
「あのね…あのね、僕…今からすご~く楽しみにしてるの」
翔君は、弾けるような笑顔で言いました。
「皆さんが楽しみにしてくれているようで、僕も嬉しいです」
「ところで大空さん、空の旅って…どこへ行くんですか?」
優太君が質問しました。
行き先は、雲の王国です」
「雲の王国?」
子供達は全員口を揃えて叫びました。
「大空さん…雲の王国って…どこにあるんですか?」
夏海ちゃんが尋ねました。
「空のず~っと高い所にあります。そうですね。宇宙飛行士が行った所よりも遥かに遠い所です」
「ええっ、そんなに遠くまで行くの~? 酸素があるのかな~。実に心配なんですけどぅ」
要君は不安そうです。
「ハハハ…」
大空青年は愉快そうに笑いながら言いました。
「大丈夫ですよ。雲の王国にも十分酸素はあるし、旅の途中もずっと目には見えませんが酸素のバリアがありますから…」
「それを聞いて安心しました~」
要君はにっこり笑いました。他の子供達もホッとした表情をしています。 無理もありませんよね。宇宙飛行士が行ったよりも遥かに遠い所に行くと聞いたら、誰だって心配してしまいますよね」
「ところで…雲の王国ってどんな所なんですか?」
美佳ちゃんが尋ねました。
「素晴らしい所ですよ。緑はたくさんあるし花も1年中咲き乱れています。それに…」
「それに…何ですか?」
子供達は身を乗り出して言いました。
「広大な遊園地があるんです。地球にはないような大きな大きな遊園地です」
「ほんとに?」
「うっひょう…楽しみだな~」
「わ~い。やった~。嬉しいな」
子供達は、もう大興奮状態です。 要君と翔君は手を繋いでピョンピョン飛び跳ねています。
「ちょっと、飛び跳ねるのは止めてくれない? お母さんがびっくりして来たら大変だから…」
だいちゃんが困ったように言うと、2人は「ごめんごめん」と謝り座りました。
ベッドに座って話す大空青年の周りを囲むようにして、子供達は座り聞いています。
「分かりやすく説明すると、空の高い高い所にドリームスターと言う星があるんです。 大きさは地球の半分位でしょうか。 そのドリームスターは1人の王様が治めていて、平和で豊かな国です。 その王様にはケインという子供さんがいるんですが、王様は息子のケイン王子の10才の誕生日のプレゼントに雲の王国を作ったんです」
「ええっ…」
子供達は全員驚いて言葉になりません。
「もちろん、ケイン王子のためにだけ作った訳ではありませんよ。ドリームスターの子供達全員がいつでも好きな時に遊びに行けるんです」
「でもさぁ、ドリームスターから雲の王国にはどうやって行くの? いちいち飛行機に乗っていくんだとしたら面倒くさいような気がするけど…」
だいちゃんがぼそっと呟くように言いました。
「だいちゃんの言うとおりだよね。飛行機とかロケットで行くとしたら、なんか面倒くさいよね」
拓也君が言うと、他の子供達もウンウン頷いています。
「そんな…飛行機なんて使わなくても行けるんですよ。 ドリームスターと雲の王国の間には虹色の橋が掛かっていて、そこを電車が走っています。 電車を呼ぶボタンを押せばいつでも電車が迎えに来てくれます。 虹色の橋からの眺めは素晴らしいですよ。感動してウルウルしそうです。 遊園地に関しては、着いてからのお楽しみと言うことで、今は何も言わないでおきます」
「ねえ、大空さん。そこは地球とは離れた星なのに、日本語で話が通じるの?」
要君が心配顔で言いました。
「そうそう…俺もそれが気になっていたんだよね」
拓也くんが言いました。
「私達…行く前に言葉の勉強しなくても大丈夫なんですか?」
美佳ちゃんの言葉に子供達全員が頷きました。
「確かに地球の中でさえ沢山の国があって、それぞれに話す言葉が違っていたりしますから、不安に思うのはもっともです。 でも、ドリームスターは行く前に勉強する必要はないんです。 実際に…今回地球から皆さん以外にも、沢山の国の人達が行きますが、誰も勉強はしていません」
「それって、どういうことなんですか?」
子供達は首を傾げました。
「つまり、どういうことかと言うと…、ドリームスターは魔法の国ですから、誰もが自分の国の言葉で話しても、ちゃんと会話が通じるんです」
「じゃ、僕達はいつも通りに話していればいいんだね」
優太君が言いました。
「はい、そうです」
「ところで大空さんは、どういうきっかけで、この仕事をすることになったんですか?」
美佳ちゃんが尋ねました。
「それじゃ…お話ししましょう。私がこの仕事をする事になったいきさつを…」
子供達は興味津々で、真剣な表情で大空青年を見つめています。
「あれは…ちょうど1年位前でしょうか」
大空さんは、思い出すように少し上を見上げて話始めました。
「私は大学は卒業したものの、就職が決まらずコンビニでバイトをしていました。 バイトは夜の10時までで、その日もいつも通り仕事が終わる時間になったので、店長に挨拶して出入り口の自動ドアの前まで来ました。 ふと見ると、ガラスドアの向こう側に紙が貼り付けてありました。
私はその紙を剥がすと、再び店に戻り、店長に尋ねました。
「店長、自動ドアにこんなものが貼ってありましたけど、店長が貼ったんですか?」
すると、店長は 「俺はそんなものを貼った覚えはないぞ。誰かのイタズラだろう。捨ててくれ」
と言いました。 それで私は、その紙を丸めてポケットに入れると、改めて挨拶して店を出ました。 普通だったら、そのままゴミ箱に捨てるんですが、何故かその時はポケットに入れたんですよ。 そして、ポケットが膨らんでゴワゴワするものですから、どうも気になって…」
大空さんの話を、子供達は身を乗り出すようにして聞いています。
丸めた紙切れをポケットから出して広げてみると… それは旅行会社の社員募集のチラシでした。そのチラシにはこんな事が書かれていました。
【このチラシを見た人は、今すぐに面接会場に来て下さい。 レインボートラベル 人事担当 天野川 星矢】
下の方には面接会場の地図がありました。
チラシには
【今すぐに】
…と書いてありましたが、もう夜の10時を過ぎていましたから、面接などやっているはずもありません。 明日にしようとも思いましたが、どうやら会社は近くのようです。 電話は明日するにしても、場所だけ確認しておこうと思い行ってみることにしました。 地図にあった場所は、古い雑居ビルで、『レインボートラベル』という看板はすぐに見つかりました。
こんなビルあったっけ? 両親がこのA市に家を購入して引っ越して来てから、もう10年近く住んでいるけど、こんなビルがあったこと気づかなかったな~。 そんな事を考えながら、看板のある入口の前に来ると、こんな夜遅い時間にもかかわらず会社には灯りがついていました。 私が入口のドアの前に立つと、
「お待ちしていました」
中からドアが開き、スーツを着た30才位の男性が笑顔で迎えてくれました。
「凄いね! どうして大空さんが来るって分かったんだろうね」
要君が驚いたように言いました。
「私もビックリしましたよ。 私はその男性の後に続いて歩いて行きました。 応接室と書かれたドアの前に来ると、ドアを開け
「どうぞ」
と言いました。 私がソファーに座ると、その男性は私と向かい合うように座りました。
「大空さん、今日はお越し頂き有難うございます。私は天野川星矢と申します」
そう言って名刺を出しました。
「……はい」
私は頷くと、名刺を受け取りました。
「あのう、どうして私の名前をご存知なんですか?」
まだ自己紹介していないのに…どうして?
すると、天野川と名乗る青年はクスッと笑うとこう言いました。
「あなたのことは全て調べさせて頂きました。そして、この仕事に最適な方だと言うことで、採用が決定しました。 おめでとうございます」
「あ…そうなんですか? 有難うございます。嬉しいです……けど、まだキチンとした面接もしていないのに…採用して頂いてよろしいんでしょうか (;^_^A」
「もちろ…」
「あ~、その前に私は地球人ではありません」
「はあ~? 言ってる意味が分からないんですが…?」
「ですから、私は地球人ではありません。 ドリームスターと言う星からやって来ました」
「ド、…ド…ドリ…」
然、予想もつかないことを言われたので、私の頭の中は真っ白で、パニックを起こしていました。
「ドリームスター星です」
川さんは、にっこり微笑んで言いました。
「私の趣味はマイ円盤に乗って宇宙旅行をすることなんです。宇宙には無数の星があって綺麗ですよ。 広い宇宙の中でも一番美しい星が地球でした。 私は暇を見つけては、この地球を旅しておりました。その中でも一番のお気に入りが、この日本と言う国でした」
「ところで、あのう…私のする仕事はどんなことですか?」
マイペースに話し続ける天野川さんに、私は尋ねました。
「はあ…?」
「大空さんには、まずは魔法を覚えて頂きます」
「魔法? マジックの事ですか?」
「マジックではありません…魔法です。 さっそく、ドリームスターまでご案内します。 会社の前に私の愛車が止めてあるので…どうぞ」
どこまでマイペースな人なんだろうと思いながら、天野川さんに促されて会社の前に来ると、何と、そこにあったのは……。空飛ぶ円盤でした。
(@ ̄□ ̄@;)!!
私は何度も目をこすりました。自分の頬っぺたもつねってみましたが、間違いなくそれは円盤でした。
「いいなあ、僕ものってみたいなあ」
拓也君が羨ましそうに言いました。すると、他の子供達も乗りたいと言いました。
「分かりました。それじゃ皆で乗りましょう。 …ところで、どこまで話しましたっけ?」
「会社の前に空飛ぶ円盤があった所までは聞きましたけど…」
美佳ちゃんが言いました。
「そうでしたね。それで私は勧められるままに、恐る恐る円盤に乗りこみました」
《ピンポーン》
突然インターホンがなりました。 急いでだいちゃんが窓から覗くと、
「あ~、るいちゃんだ…」
と言いました。 拓也くんも覗きこみながら焦ったように言いました。
「だいちゃん…ちょっとヤバくない?」
「何がヤバイんですか?」
「うん。るいちゃんはお母さんの妹なんだけど…。時々僕の部屋を様子見に来るんだよ」
「皆でゲームしてる時なんかも、何度か来たしね」
夏海ちゃんの言葉を聞いて大空さんは顔色を変えました。
「今日は私の周りにバリアーをしてくるのを忘れてしまったんです。 バリアーをすると、姿を隠すことが出来るんですが…。 大人達に、私の存在がバレてしまうと大変なんです (^o^;)」
「それじゃ、急いでバリアーをしないと…」
だいちゃんが言い終わらない内に、階段をタッタッタッっとかけ上がる音がしたかと思うと、
「だいちゃん、いる?」
ドアの外で声がしました。
「早く早く‼」
子供達は、急いでクローゼットの扉を開けると、大空さんを押し込めるようにしました。 クローゼットのドアを閉めるのと、るいちゃんがだいちゃんの部屋のドアを開けるのがほぼ同時でした。 子供達は誰もがホッとした表情をしています。
「あれっ、皆どうしたの? 何か、私に隠してない?」
「そ…そんなぁ~。隠すなんて…と、とんでもないです」
明らかに動揺した様子の要君。
るいちゃんは腕組をしながら部屋の中を歩きまわりました。
「あやしい。…実にあやしい。あなた達、私に何か隠しているでしょう?」
「ほ…本当に…隠してなんか…いないよ」
翔太くんはクローゼットの前に行くと、両手を横にひろげました。
「このクローゼットの中があやしいわね」
るいちゃんはクローゼットの前に来てニヤリとしました。子供達は焦りました。 一番焦ったのは大空さんです。息を殺すようにしてじっとしていましたが、
《ドスン》
と音が出てしまいました。
「この中に誰かいるのかな?」
るいちゃんは、クローゼットのノブに手をかけました。
「にゃ~お」
大空さんはダメ元で、子猫の泣き真似をしました。
「あらっ、子猫がいるの? 見てみたいわ。」
大空さん、またまたピンチ‼
子供達は、心の中で、
『神さま仏さま~ 』
と祈りました。 その時、入口のドアが開き、
「るい。 新婚さんなんだから、いつまでもこんな所で油を売っていないで、そろそろ帰って夕飯の準備始めた方が良いんじゃないの? 五郎さん、仕事を終えるとまっすぐ帰って来るんでしょ」
お母さんに言われ、
「はーい()
と返事して、るいちゃんは帰って行きました。
美佳ちゃんはドアを閉めると、胸を撫で下ろしました。 翔太君がクローゼットのドアを開けると、ホッとした表情の大空さんが出て来ました。
「どうなることかと焦りましたよ。これからは、『大人には見えないバリアー』の魔法をかけ忘れないようにします」
「ところで、話が途中なんですけど…」
「ああ、そうでしたね。この続きは『雲の王国』に向かう途中でお話しすると言うことで良いでしょうか?」
「はい、分かりました。話の続きを楽しみにいています」
美佳ちゃんが言うと、他の子供達も頷きました。
「それじゃ、もう5時になるので…いったん帰ります。 それじゃ、夜9時にだいちゃんの家をスタートして、順番に皆の家を回って行くので、ちゃんと起きていて下さいよ」
「眠っちゃった人はどうしますか?」
夏海ちゃんが尋ねました。
「眠っちゃった人はおいてけぼりです」
だいちゃんが言うと、
「ええっ、そんなぁ~ (-_-;)」
要君は不安そうです。
「その為に、今日はお昼寝したんでしょ(^_^;)」
さすがの美佳ちゃんも呆れたように言いました。
「大丈夫だよ。窓さえ開いていれば、窓から起こしに行ってやるから」
だいちゃんが慰めるように言ったので、要君は安心したようです。
「それじゃ、僕はこれで…」
大空さんは白い鳩に姿を変えると、バサバサと羽根を広げて何処かへ飛んで行きました。 子供達も、それぞれの家へ帰って行きました。
近所の子供達が帰り、ベットを見るとふうせん達はスヤスヤ眠っています。 だいちゃんは、ニコニコしながらふうせん達の寝顔を眺めていました。 すると、 「ふぁ~」 アクビをしながら赤いふうせんが目をさましました。
「赤君、目をさましたんだね」
「うん、空の旅を楽しむためには昼寝をしっかりとしておかないとね」
当然と言うように、赤いふうせんが言いました。次は青君、オレンジ君…と言うように他のふうせん達も起きて来きました。
「あ~、よく寝た~」
「これだけ眠れば、一晩中起きていられそうだ」
「宇宙旅行楽しみだね」
ふうせん達は、目をさますなり、ウキウキ嬉しそうです。
だいちゃんは、夕ごはんを食べお風呂に入り、8時半頃には「おやすみなさい」と言って、2階の自分の部屋に戻って来ました。
「まだかな? まだかな?」
ふうせんたちもソワソワ落ちつかないようで、ベッドの上を行ったり来たりしています。
「9時の約束なんだから、まだまだ来ないよ。」
だいちゃんが言うと、
「そういうだいちゃんだって、さっきから何回も時計見てるよ」
オレンジのふうせんが、ニヤニヤしながら言いました。
「へへへ…見てたの?」
だいちゃんは笑うしかありません。
「まだ15分もあるのか」
時間がたつのが遅く遅く感じます。 その時です。 窓をたたく音がしたので、皆は音のする方へ振り返りました。 すると、大空さんが窓の外でにこにこしながら、こちらを見ていました。
「あ~、大空さん。 予定よりも早く来てくれたんだね」 だいちゃんもふうせん達も大喜びです。
大空さんは魔法のほうきに乗って来たようです。 だいちゃんの部屋に入り、ほうきをベッドに置くと言いました。
「暇だったんで、早く来ちゃいました」
「早く来てくれて有難う (^○^)。実は待ちくたびれていたんだ」
だいちゃんが嬉しそうに言うと、ふうせん達もウンウンとうなづいています。
「ところで、その魔法のほうきが気になるんだけど…」
「あ~、これね。乗ってみたい?」
「うん、乗ってみたい \(^o^)/」
だいちゃんが答えると、ふうせん達も乗りたい乗りたいと言いました。
「いいですよ、少しなら」
大空さんの言葉に「わーい」と、皆は大喜びです。 だいちゃんがふうせんたちを一人ずつだっこして、狭い部屋の中をぐるりと一回りするだけでしたが、皆…大満足です
(^-^)v (^○^) (^o^)v………。
「さて、そろそろ出発しましょうか」
大空さんは魔法のほうきに呪文を唱えています。
「ドリームドリームハッピードリーム…ほうきよ消えろ~」
ほうきは消えてしまいました。すると、大空さんは続けて呪文を唱え始めました。
「ドリームドリームハッピードリーム…虹色のじゅうたん、現われ出でよ~‼」
すると、虹色のじゅうたんが現れました。
「あれっ、大空さんがじゅうたんになるんじゃないの?」
だいちゃんがキョトンとして言いました。
「こんな時くらい…皆と一緒に空の旅を楽しみたいじゃないですか」
「そりゃ、そうよね」
ピンクのふうせんがうなづきました。
「それでは皆さん乗ってくださ~い」
「「はーい」」
だいちゃんとふうせん達は、嬉しそうにじゅうたんに乗り込みました。
「まずはお隣の優太君と翔君の家に行きましょう」
お隣なので1分もかからず優太君の家に到着です。
2人は窓を開けて待っていました。
「わ~い! 本物の魔法のじゅうたんだ。凄いな~」
翔君は興奮して大騒ぎしています。あわててお兄ちゃんの優太君が人差し指を口に当てて
「シーッ」と言いました。
「大丈夫ですよ。僕たちの声や姿はバリアーをしてあるから、他の人には分かりませんから。 そうそう…万が一家族の人が来た時のために『そっくり人形』を置いときましたから…」
「ええっ、そっくり人形?」
翔君が首をかしげていると、お兄ちゃんの優太君が 「すご~い‼ 僕達にそっくりの人形がベッドで寝てる…」
と驚きの悲鳴をあげました。だいちゃんやふうせん達もキョトンとしています。
「いい忘れましたけど、だいちゃんのベッドにも、そっくり人形が眠っていますよ。もちろん、ふうせんさんたちの人形もね」
「ええっ‼」
今度はだいちゃん達がビックリする番です。
「全員がじゅうたんに乗った時点で、時が止まることになっているので、それまでにご両親が子供部屋に来ることはないと思いますが…念のために置くことにしました」
「時が止まるって、どうなるの?」
翔君が不安そうにたずねました。
「要するに、雲の王国で3日間遊んで戻って来ても、時間が止まっているので、今日のこの時間に帰って来ることができるんです」
「ふうん、つまり…僕達は3日間得するってことでしょ」
「そう、その通りです。さあ、乗って下さい」
翔君は、じゅうたんに乗ると嬉しくてピョンピョン飛びはねました。
「翔、危ないからじっとしてなきゃダメだよ」
優太君は気が気じゃないようです。
「優太君大丈夫みたいだよ。じゅうたんにもバリアーが付いていて暴れても落ちないらしいから…」
だいちゃんが言うと、
「その通りです」
大空さんもうなづきました。
「嬉しいな~、嬉しいな~。魔法のじゅうたんに乗って空のたび~」
翔君がデタラメで歌いだしたので、だいちゃんと優太君はクスリと笑いました。 美佳ちゃんと拓也君の家に着くと、美佳ちゃんと拓也君も窓を開けて、二人並んで待ちかねていたようです。
美佳ちゃんと拓也君は、魔法のじゅうたんを見て、とても驚いていました。 拓也君は、ポカンと口を開けたまま呆然としていたし、美佳ちゃんは目を大きく見開き、
「…信じられな~い。ホントだったんだね~。すごく嬉しい…」
と言いながら、何度も目をこすっていました。
「ほら、拓也乗ろう!」
美佳ちゃんに言われ、拓也君は
「う…うん」
と慌ててじゅうたんに乗り込みました。
「次は夏海ちゃんのお家だ。」
翔君がにっこり笑って言いました。
夏海ちゃんの家まで行くと、大きく手を振って待ちかねていたようです。
「わあ~、嬉しい…」
夏海ちゃんは感激しながらじゅうたんに乗り込みました。
「後は要君だけね。ちゃんと起きてるかしら…。」
夏海ちゃんが心配そうに言いました。
「まさか~。あれだけ言ったんだから大丈夫よ。今頃は待ちくたびれてるんじゃないかしら」
美佳ちゃんの言葉に、
「そうかな?」
夏海ちゃんは首をかしげました。
「要君のお家が見えて来たよ。」
翔君が元気に言いました。
2階の要君の部屋をのぞくと、カーテンは開いていましたが、窓は鍵が閉まっていました。
「あれっ、要君眠っているみたいだよ」
赤いふうせんが言いました。どれどれ、他のふうせん達も部屋の中をのぞきこみました。
「ホントだ。気持ち良さそうだね」
青いふうせんが言いました。 それを聞いて、子供達はあわてて要君の部屋をのぞきこみました。 部屋の奥にあるベッドで、要君はスヤスヤ眠っていました。
「置いて行っちゃおうか」
拓也君が言いました。
「そうだね。要君が悪いんだしね」
だいちゃんもうなづきました。
「そんな~、可哀想よ。要君楽しみにしていたもの」
美佳ちゃんが言いました。
「美佳ちゃんの言う通りですよ。要君楽しみにしていましたからね。 でも、どうしたら起こせるでしょうか?」
大空さんも考え込んでいます。
「俺達の声が、要君の耳に届くようには出来ないの?」
拓也君が大空さんに言いました。
「とりあえずやってみましょうか! 」
例によって大空さんが呪文を唱えると、キラキラした小さな星のようなものが大空さんの指先から出てきました。 その星のようなものが、ガラス窓を通り越して行き、要君の部屋の中に入って行くと、部屋中に広がって行きました。 子供達は食い入るように見ています。
「これで、こちらの声が、要君にも聞こえるはずです。皆で一斉に起こしましょう」
「よう~し。それじゃあ、行くよ。いっせ~の…」
拓也君の合図で、皆一斉に叫びました。
「要君起きて~‼」
「要君起きろ~‼」
皆で何度も叫びましたが、要君は目を覚ましません。
「こちらの声は聞こえているはずなんですけどね」
さすがに大空さんもどうしていいか分からず、困った表情をしています。 すると…、
『ええっ、全部食べていいの?』
部屋の中から声が聞こえてきます。要君…夢を見ているようです。 皆はあぜんとしてしまいました。
『イチゴショートは大好きなんだよね。テイラミスもモンブランも美味しそうだし…プリンアラモードは絶対はずせないなぁ~。 あ~。困っちゃう、何から食べようかな』
要君は嬉しそうにニコニコしています。
「何よ、人が待っているというのに、のんきに夢なんか見てて…。あきれてものが言えないわ」
夏海ちゃんはプンプン怒っています。
「要君見てたら、僕も眠たくなっちゃったな」
白いふうせんが目をこすりながら言うと、
「僕も…」
黄色いふうせんも眠たそうです。
「ふうせんさん達は、眠っても構いませんよ」 大空さんに言われ、ふうせん達はじゅうたんの後ろの方へ行き眠り始めました。
「私は起きてる。だって要君が心配なんだもの」
「僕も、皆と一緒に要君を応援したい」
ピンクのふうせんと黄緑のふうせんは、そう言いました。
「あ~美味しい。こんなにたくさんケーキが食べられて、僕ちゃん幸せだな~」
要君は嬉しそうに、ムシャムシャと口を動かしています。 いつになったら目を覚ますことやら…。 しばらくすると、今度は、大きな声を出しながら手足をバタバタさせました。
「助けてくれ~‼ ケーキのオバケが追いかけてくるよ~‼ もうお腹一杯で、そんなに食べられないよ~‼」
子供達はゲラゲラ笑い出しました。さっきまで怒っていた夏海ちゃんまで、お腹を抱えて笑っています。
「要君って、面白いね」
優太君は笑いすぎて目に涙を浮かべています。
「面白いから、もう少し見てようぜ」
拓也君がウインクすると、男の子達は賛成するようにうなづきました。
「嫌だ~。今度は鼻くそほじってる~。きたな~い」
夏海ちゃんが、プイッと横を向いてしまいました。
「今度はおしりをポリポリかいてる」
優太君が笑いをこらえながら言いました。 しばらくすると、
《プー》
今度はおならをしたようです。これには我慢ができず夏海ちゃんは激怒して言いました。
「もう要君なんて、サイテー( ̄□ ̄;)!!
「下品よ。臭くてたまんないわ」
夏海ちゃんは、左手で鼻をつまむと、右手を左右に振るしぐさをしました。
「おかしいですね。臭いまでは届かないはずなんですけどね」
大空さんが言うと、
「今のは俺…」
拓也君が恥ずかしそうにうつむきました。
「今、おならしたの…拓也君なの? 嫌だ~。 おならなんてしないでよ。下品だわ」
「ごめん」
「ごめんじゃないわよ。臭くてたまんないわよ」
夏海ちゃんはほっぺたをふくらませて、怒っています。
「拓也君のおなら、そんなに臭くないよ」
翔君が言いました。
「夏海ちゃんさぁ、謝っているんだから許してあげようよ」
だいちゃんが言いましたが、夏海ちゃんはまだ機嫌が直りません。
「それじゃ聞くけど、夏海ちゃんはこれまでに1度もおならしたことないの?」
だいちゃんがはあきれたように言いました。
「無いわ。 だって我慢するもん」
すると、大空さんがにっこり笑いながら言いました。
「我慢するのは体に良くないですよ。僕も家族や仲のいい友達といるときはおならをしちゃいます」
「エエッ、そうなんですか? 大空さんも人前でおならするんですか?」
夏海ちゃんは少し驚いたようです。
「拓也君、さっきはごめんなさい」
夏海ちゃんが謝りました。
拓也君が、ちょっとはにかみながら言いました。
「私もこれからは我慢しないことにするわ」
「それはそうと、要君を早く起こさないと…ね」
大空さんは空を見上げながら考え込んでいましたが、
「そうだ!! 名案を思いつきました」
と、嬉しそうに言いました。
「名案?」 子供達は興味津々です。
「レインボー光線です」
大空さんは、にっこり笑いました。
「レインボー光線って何ですか (・・?)」
子供達は首をかしげます。
「レインボー光線って言うのは、虹色のまぶしい光線です。この光を要君に当てて目をさまさせるんです。 まあ、見ていて下さい」
大空さんはそう言うと、呪文を唱え始めました。
「ドリームドリームハッピードリーム…レインボー光線よ、現れいでよ」
すると… 虹色をしたまぶしい光が現れ、ゆっくりゆっくり要君の眠っているベッドに向かって行くではありませんか。 子供達は大興奮です。 窓に貼りつくようにして見ています。 もちろん黄緑のふうせんとピンクのふうせんもドキドキしながら見ています。
虹色の光線はジワリジワリと動き、ついに要君の顔に来ると…、
「うわっ、な…なんだ⁉
(∋_∈) (´д⊂)‥(ρ_-)ノ
ま、まぶしい~
(~o~) (οдО;)(☆。☆)(>_<)」
要君がガバッと起きました。そして目をこすりながら窓を見て、
「うわっ⁉」と叫びました。
要君は首をかしげると、また目をこすって、目をパチクリ させると、
「どうなってんだ(・_・)。 僕…夢を見てるのかな? 何で皆が窓の外にいるんだ…???」
しばらく考えて、やっと思い出したみたいで、窓を開けました。
「皆、ごめんなさい。僕…うっかり眠っちゃったみたいで…」
平謝りする要君(^o^;)に、子供達は苦笑いするしかありません。
「要君、目がさめてよかったね」
黄緑のふうせんが安心したように言うと、ピンクのふうせんも「そうね」とにっこり笑いました。
「どうなることかと思いましたけど、まずは目をさましたのでホッとしました。 さっ、要君じゅうたんに乗って下さい」
大空さんに言われ、要君はきまりわるそうに、じゅうたんに乗り込みました。
「ほんっとに、ほんっとにごめんなさい(;>_<;)」
平謝りする要君の肩を優しくぽんとたたきながら美佳ちゃんが言いました。
「要君、もういいから…。早く座って」
「う…うん」
座った要君に、背中を見せるように座っていた夏海ちゃんは、不満げに頬を膨らませていました。
「さあ、これで全員そろったので、出発します」
大空さんが言いました。 すると、
「あのぅ~」
優太君が小さな声で遠慮がちに言いました。
「どうしたんですか?」
大空さんばかりでなく、まわりにいた子供達も、いっせいに優太君を見たので、恥ずかしそうにうつむきながら優太君が言いました。
「雲の王国に行く前に、僕達が住んでいる所を、空から見てみたいんですけど…」
「僕も見た~い!」
翔君はニコニコしながら手をあげて言いました。
「俺もだいちゃんから話を聞いて、見たいって思ってたんだ~」
…と拓也君。 結局全員が見たいと言うことだったので、大空さんは
「分かりました。それではこれから皆さんの住んでいる所を空から見学したいと思います」
と言いました。
「それでは、まずは皆の通っている小学校に行きましょうか?」
「は~い」
子供達は元気に返事しました。皆嬉しくてたまらないようです。
「出発進行(^O^)/」
要君が大張りきりで、片手を元気に上げました。
「ナスのおしんこう(^O^)/」
翔君も、片手をあげて言いました。 皆が笑ったので、翔君はキョトン(・・?)としています。 美佳ちゃんが、翔君の頭をなでながらにっこり笑うと、 「ナスのおしんこ~」 と言いながら片手をあげました。 大空さんも愉快そうに言いました。 「出発進行(^O^)/~ ナスのおしんこ~」 虹色のじゅうたんは、ゆっくりゆっくり動き始めました。
ちょうどその頃、だいちゃんの叔母さんのるいちゃんが、近所の仲良しのすずちゃんの家の前にいました。
「お待たせ」
すずちゃんは玄関のドアを開けると笑顔で言いました。
「こんなに遅い時間に散歩に誘っちゃったけど、本当に大丈夫だった?」
るいちゃんは、申し訳なさそうに言いました。
「大丈夫よ。ダンナはいつも11時頃にならないと帰らないし、萌はもう寝ちゃってるし…」
「なら…良いんだけどさ。ウチのダンナ格闘技見てるんだけど、私あ~いうの嫌いなのよ。 それで、ふとすずちゃんの事が頭に浮かんでメールしたの。もし、起きてたら一緒に散歩でもしようかな…と思ってね」
「確かに普段なら寝ている時間…かも。萌に絵本や童話を読んでいるうちに寝オチしちゃってる事が多いから…ハハハ」
すずちゃんは笑いました。
「すずちゃんは偉いよね。毎日萌ちゃんに絵本を読んであげてるんでしょう?」
るいちゃんが関心したように言いました。
「偉くなんかないよ。…だって、私自身が絵本とか童話とか読むのが好きだから。萌と一緒になってワクワクしながら楽しんでいるんだもの。 るいちゃんも、子供ができたら、そうなるわよ」
「そんなものかしらね。 …おもにどんな本を読むの?」
るいちゃんが尋ねました。
「女の子だからメルヘンやファンタジーが多いかな?。 最近せがむのは、魔法のじゅうたんに乗って子供達が宇宙に旅に出る話なんだけど、面白いわよ。 るいちゃんも読んでみる?」
「ふ~ん、そうなんだ。 そのうちに借りようかな? ねえ、それより萌ちゃん、起きたりしないかな? もし、目がさめてママがいないって泣き出したら可哀想だものね」
るいちゃんは、少し心配そうに言いました。
「それなら心配ご無用よ。地震が来ても、ぐっすり眠ってる子だから…」
すずちゃんの言葉に、るいちゃんは安心したようです。そして、時計を見ながら言いました。
「それじゃ、今9時20分位だから10時まで…歩こうか」
夜とは言っても住宅街で、街灯も付いているので恐くはありません。 るいちゃんとすずちゃんは世間話などしながら、楽しく歩いていました。
「ひゃっほ~ (^O^)/。 すごい、いい眺めだね~」
要君は歓声をあげています。
「わ~い \(^o^)/ 空飛ぶじゅうたんだ~! ばんざ~い‼」
翔君は飛びはねています。 魔法で昼のように明るく見えますが、実際は夜の9時を過ぎているので、車も殆ど走っていません。
「あ~、いつも僕達が行く駄菓子屋さんだ~」
優太君は嬉しそうに言いました。
「ホントだ。でも夜だからお店は閉まっているね」
要君は残念そうです。
「そう言えば要君、ケーキに追いかけられる夢見てたでしょ…」
だいちゃんがニヤニヤしながら言いました。
「うん…見てたよ。 でも何でだいちゃん分かったの?」
要君は目を丸くして驚いています。
「フフフ…。僕は魔法使いだから何でも分かっちゃうのさ」
だいちゃんがにやけて言うと今度は、他の子供達はもう我慢ができずにゲラゲラ笑い出してしまいました。
「あ~、もうダメ…我慢できない」
夏海ちゃんはお腹をかかえて笑っています。
「なんで笑っているんだよ」
訳がわからず、要君は不満げに口をとがらました。
「まあまあ皆さん、その話はその位にして…。学校が見えて来ましたよ」
大空さんが言いました。 「わぁ~い‼ 本当だ。僕達の学校だ‼」 翔君が歓声をあげると、他の子供達も大喜びして眺めました。
大空さんは、学校の周りをぐるりとゆっくりまわってくれました。
「それでは次は皆さんがいつも遊んでいる空き地に行きますよ~」
「は~い」
子供達は元気いっぱいです。
「あっ、見えてきた」
「だあれもいないね。今だったら、僕達だけで独占できちゃうね」
「ねえ、大空さん。少しだけ遊んで行ってもいいでしょ」
子供達はせがみましたが、
「それはできません」
大空さんが言いました。
「この前は遊ばせてくれたじゃない。どうして今日はダメなの?」
だいちゃんは不満そうです。
「僕は別に意地悪でダメって言ってるんじゃないんです。 今日はじゅうたんの回りに、最強バリアーをしていないからなんです」
「最強のバリアーって何ですか?」
美佳ちゃんが質問しました。
「最強のバリアーをしておけば、1m位まで人が近づいても僕達の姿が見られることは無いんです。 でも、今日は要君の家に迎えに行った後は、雲の王国にすぐに行くのかな…と。 普通のバリアーだけしか…してないんです。ごめんなさい」
大空さんがすまなそうに言いました。
「それなら、最強バリアーにすればいいじゃん」
拓也君が言いました。
「そ…そうなんですけど…ね。実は、最強バリアーにする魔法は難しくて、まだマスター出来ていないんです」
大空さんは、ハンカチで額の汗をぬぐいながら、気まずそうにしています。
「エエッ、w(°O°)w?そうなの? ガッカリだな~僕」
翔君は、今にも泣き出しそうです。
「それじゃ、この前はどうして最強バリアーに出来たの?」
だいちゃんに言われ、
「それはですね…ええと、自分自身がじゅうたんになった時の…最強バリアーの出し方は、完全にマスターしたからなんです。 だけど、魔法でじゅうたんを出して、そのじゅうたんを最強バリアーで包み込む魔法はまだ勉強を始めたばかりで、まだよく覚えていないんです。 本当にごめんなさい」 大空さんは平謝りです。
「つまんないの~」
夏海ちゃんも不満顔です。
「そんなことを言うもんじゃないわ。空き地で遊ぶのなんていつだって出来るでしょ。 それより、誰も行ったことが無い『雲の王国に行けるのよ。凄いと思わない?」
美佳ちゃんに言われ、皆納得したようです。
「そうだよね~。あ~、今からすっごい楽しみだわ~」
夏海ちゃんは、すっかり機嫌が直ってニコニコしています。
「早く行きたいな~。楽しみ楽しみ」
翔君も万才しながら、嬉しそうに飛びはねてます。
「さあ、それでは『雲の王国』に向けて出発しますよ」
「は~い 」
\(^_^ )( ^_^)/、(^o^)v、(*^_^*)…
皆とってもいい笑顔です。 その時、
「あれっ~」
拓也君が驚いたように言いました。
「あそこにいるのは、だいちゃんの叔母さんの…るいちゃんじゃないかな?」
「ええっ、どこどこ(・・?)」
子供達は、拓也君の指さす方を見ました。
「ホントだ! 一緒にいるのは萌ちゃんのお母さんかな?」
優太君が首をかしげました。
「ねえ、大空さん。 もっと近づいてくれない?」
だいちゃんは腹ばいになって見ていますが、遠くてよく見えません。
「さっきも言いましたけど、今日は普通のバリアーしか装備していないので、これ以上は近づけません」
「そんな固いこと言わないで、もう少しでいいから…」
「ダメと言ったらダメです。万が一見られたら、皆は雲の王国へ行けなくなってしまうかもしれませんよ」
大空さんは、少し強い口調で言いました。
「ええっ、そんなの嫌だよ~Σ(´□`;)」
黄緑のふうせんが泣き出してしまいました。皆はいっせいに黄緑のふうせんに注目しました。
「だって…ぼく。だって僕楽しみにしていたんだもの」
そんな黄緑のふうせんを見ているうちにピンクのふうせんも泣き出してしまいました。
「私もふうせんの遊園地に行きた~い」
「黄緑君とピンクちゃん、ごめんなさい」
だいちゃんはペコリと頭を下げて謝りました。
「大空さん、このバリアーだとどの位まで近づけるんですか?」
美佳ちゃんが尋ねました。
「そうですねぇ…住宅地なら1m以上離れていれば大丈夫ですけど、こういう空き地などの場合は5m以上離れないと、下を歩いている人から見えてしまう可能性があります」
「見えてしまう確率っていうのは、どの位なの?」
だいちゃんが言うと、他の子供達も、大空さんの答えを待つように見つめます。
「見えてしまう確率は、0.1%です」
「…と言うことは、1000人に1人の人が見えてしまうってことですか?
優太君が言いました。
「なあ~だ、1000人のうち999人には見えないんなら大丈夫じゃん」
拓也君は嬉しそう言いました。
「そうだよね。宝くじで1等賞当てる位の確率だものね」
…と、要君。
「要君、宝くじの1等賞はもっと確率高いよ。数百万分の一って言われているから…。 砂浜で無くした指輪を探す位大変な確率だって、お母さんが言ってたわよ」
「そ…そ…、そんなに? (*゜Q゜*)知らなかった~。僕、買わないで良かった~」
要君は胸を撫で下ろしています。
「最強のバリアーと殆ど変わらないんだから、もっと近づいても平気だよ~。 それにるいちゃんと萌ちゃんのお母さん以外見当たらないしさ」
「だいちゃんがそう思うのも分かりますけど、僕は慎重派のA型だから…。 万が一と言うことも考えてしまうんです。それに…」
「それに…何ですか?」
「場合によっては確率が上がるんです。 例えば大人であっても、毎日のように子供に絵本の読み聞かせをしている人は、確率が100倍に上がります。 本の内容がメルヘンやファンタジーならさらに確率があがり10倍になります。 つまりメルヘンの絵本を読んだりする人には10人に1人の人に見えてしまうんです」
「もし…もしも… 誰かに僕達が、空飛ぶじゅうたんに乗っている姿を見られてしまったら、 大変なことになってしまいます」
「もう…雲の王国には行けなくなってしまうんですか?」
美佳ちゃんが、ポツリと言うと、大空さんは頷きました。
「大空さん…ワガママ言ってごめんなさい」
「もう…ワガママ言いません。このまま雲の王国に行って下さい」
「雲の王国に行けなくなったら嫌だもん」
子供達が口々に言うと、大空さんはニッコリ笑いました。
「風が出てきたね」
外を見ながら夏海ちゃんが言いました。木々の枝が風に揺れています。
「ホントですね。ここはバリアーがあるから、無風状態ですけど…」
大空さんがそう言ったとたん、じゅうたんが突然の強風にあおられて激しく揺れました。
キャー‼
\(>_<)/ (οдО;) ((((;゜Д゜)))
子供達は大騒ぎです。
「どうしましょう(^o^;)
…じゅうたんが…制御不能になってしまいました ( ̄□ ̄;)!!」
「エエッ…そ、そんな~ ((((;゜Д゜)))」
子供達は、大空さんの言葉を聞いて、ショックでヘナヘナとその場に座り込んでしまいました。
制御不能になったじゅうたんは、物凄い勢いで大木がある方に向かって行きます。 そして、
《ドカ~ン》 (>_<) (οдО;)
「キャ~」
ついに、大木に激突してしまいました。
「大丈夫ですか‼ ケ…ケガは無かったですか‼」
大空さんは慌てて、子供達にかけよりました。
「う…ん、大丈夫みたい。ちょっと…ビックリしたけど…」
拓也君が、胸を押さえながら言いました。どうやら誰もケガはしていないようです。
「良かった~」
大空さんは、大きなため息をつくと、ホッとしてじゅうたんに座りました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 101
眠っていたふうせんたちも、ビックリして全員起きてしまいました。
「あ~ビックリした~。今のは何だったの?」
赤い風船が、目をパチクリさせながら言いました。
「今、大きな木にぶつかったんだよ」
だいちゃんが言い終わると同時に、 パリン パリン という音が聞こえてきました。
「大変です w(°O°)w バリアーにヒビが入っています」
大空さんが青ざめた顔をして、うろたえています。
「僕達…どうなっちゃうの?」
翔君は今にも泣き出しそうです。 じゅうたんは、大木に激突した後、その弾みではじき飛ばされ、先程来た道を戻って行きます。 そして、散歩しているるいちゃんとすずちゃんの頭の上を通り越した所で止まってしまいました。 大空さんばかりか子供達も顔がひきつっています。
《最悪の状態》になってしまいました。 「な~む~」 拓也君は両手を合わせ、目を閉じました。 「アーメンソーメン…」 要君は胸で十字を切っています。 他の子供達も「神様仏様…」 …と、必死でお祈りしています。 そして、恐る恐る下を見ると、萌ちゃんのお母さんのすずちゃんが、驚いた顔をしてこちらを指さしていました。
「あ~っ‼ (@ ̄□ ̄@;)!! じゅ、じゅ…じゅう…たんが…」
すずちゃんは、じゅうたんを見てビックリ しています。
「すずちゃん、いったいどうしたの?」
るいちゃんは、すずちゃんの腕をつかんで言いました。
「じゅ…じゅうたんが、そ…空に浮かんでいるの」
「はあ~?。 何言ってるのよ(⌒‐⌒)。すずちゃんたら…(^o^;)空飛ぶじゅうたんを見たっていうの?」
るいちゃんは、あきれたように言いました。
「だって…ホントなのよ。近所の子供達も…乗ってるわ( ̄□ ̄;)!!」
虹色のじゅうたんは地上3m位の所に止まっているので、子供達からはるいちゃんとすずちゃんの姿が見えるし、2人の会話も聞こえます。 大空さんも子供達もそしてふうせん達も、息を殺すようにして、ことのなりゆきを見守っていました。
「もうやだ~すずちゃんたら。夢でもみてるんじゃない? ヾ(=^▽^=)ノ。 仕方ないわよね~。 普段なら萌ちゃんに絵本の読み聞かせしながら、寝オチしている頃だものね。 歩きながら夢を見るほど眠たかったのね。誘ってしまってごめんね」
るいちゃんは謝りました。
「謝るなんて…。 それよりも、るいちゃんには何も見えないの?」
「何もって…?」
「だから、空飛ぶじゅうたんよ」
「すずちゃんたら…。クスッ(笑) まだそんなこと言ってるの? 私にはな~んにも見えないわよ」
そう言って、るいちゃんは周りを見ました。
「取りあえず、もう帰りましょ。すずちゃん、疲れているようだし…」
「べつに…私は…」
すずちゃんは、そう言って空を見あげました。
一瞬キョトン(・・?)として、さらに辺りをキョロキョロするすずちゃん。 (゜゜;)(。。;)
そんな様子を、けげんな顔をして見ているるいちゃんが、
「ねえ、すずちゃん何してるの?」 と言いました。
「いないのよ。さっきまで間違いなく空飛ぶじゅうたんがそこにあって…。 そのじゅうたんには、だいちゃんや拓也君が乗っていたのよ。どこかに行っちゃったわ (^_^;)」
「すずちゃん、今日は疲れているみたいだから、もう帰って眠った方がいいわ」
そんな会話を聞きなから、大空さんと子供達やふうせん達もホッとして、胸をなでおろしました。 大空さんのとっさの判断で、安全地帯までじゅうたんを急上昇させたのです。2人の会話は、大空さんが魔法で出したテレビの中に映し出されていました。 皆、食い入るようにテレビの画面を見ています。 それはそうですよね。雲の王国に行けるかどうかが、かかっているんですから…。
テレビには、るいちゃんと別れ玄関のドアを開けようとしているすずちゃんが映っていました。 そして、まっすぐ萌ちゃんの部屋に行き、そっとドアをあけました。
「あら萌ちゃん…起きてたの?」
もえちゃんは窓の所に立って、外を眺めていたようでした。ママに声をかけられドアの方をふり向きました。
「うん、お外を見てたの」
萌ちゃんはニッコリ笑って言いました。 すずちゃんは、ホッとしました。以前夜中に目覚めた時、ママがいないと大泣きしたことがあったからです。 それなのに、今日は泣いていないばかりかニコニコしています。
「ねえ、ママ。 私ね…空飛ぶじゅうたんを見ちゃったのよ」
萌ちゃんはキヤッキヤッとはしゃぎながらママに抱きつきました。
「空飛ぶじゅうたん?」
「うん、空飛ぶじゅうたん。美佳ちゃんと夏海ちゃんも乗ってたよ。 でもね、すぐに見えなくなっちゃったの。 いいな~。萌ちゃんも空飛ぶじゅうたんに乗りたいな~」
萌ちゃんはママに甘えるように言いました。
「…萌ちゃんも…見たんだ。空飛ぶじゅうたんを…」
すずちゃんはへなへなと座り込んで、萌ちゃんの目を見ながら言いました。
「ママも見たよ。空飛ぶじゅうたん…」
すずちゃんは、にっこり笑いました。そして、さっき見たのが夢では無かったことを確信したのでした。
「これって最悪じゃん ( ̄ロ ̄;)」
拓也君が投げやりに言いました。
「どうしよう…どうしよう 」
夏海ちゃんはオロオロしています。
「ねえ、僕達行けなくなっちゃうの?」
翔君は今にも泣き出しそうです。 そんな翔君の頭を撫でながら、美佳ちゃんが言いました。
「大空さん、何とかならないんですか?」
「…う~ん。 もう少し様子を見ましょう」
テレビの画面を見ながら、大空さんが言いました。
「萌ちゃん、空飛ぶじゅうたんはママと萌ちゃんにしか見えないのかもしれないわ」
「ええっ、ホントに?」
萌ちゃんは目を丸くして驚いています。
「だって、るいちゃんには見えなかったのよ。すぐ近くにいたのに…」
「ふ~ん。不思議だねママ。萌…確かに見たもん。美佳ちゃんや夏海ちゃん…それにだいちゃんや拓也君もいたよ」
萌ちゃんは、首をかしげながら不思議そうです。
「萌ね、美佳ち~ゃんて、手を振ったのに…気づいてくれなかったの。寂しかった ( -_-)⤵ 」
美佳ちゃんは萌ちゃんの言葉を聞いて、
『悪いことしちゃったな。ごめんね、萌ちゃん』
心の中で謝りました。
夏海ちゃんも同じように思っていました。夏海ちゃんは、4人きょうだいの末っ子で、すぐ上のお兄ちゃんも高校1年生で、家族全員から可愛がられて育ちました。 だから、萌ちゃんを本当の妹のように可愛がっていたのです。
「この場合、仕方が無かったんですから、皆さんは責任を感じること無いですよ」
子供達の心を察して、大空さんが優しく言いました。
「ビックリしました?」
子供達はコクンと、大きくうなづきました。
「これも魔法なんですが、いつも同じやり方で物を出すのは飽きてきたので、色々工夫しているんです」
大空さんはニコニコしながら言いました。
「こんな時に…別に工夫なんかしなくていいから…。ホントびっくりしちゃったよ」
拓也君はあきれたように言いました。
「そうだよね。ホント子供なんだから…」
要君まで調子に乗って言ってます。
「ごめんなさい。 …でも、雲の王国には行けそうですよ」
大空さんはキーボードを叩きながらウインクしました。
「萌ちゃんのお母さんが、家に帰ってから、誰かに空飛ぶじゅうたんの話をした場合は危なかったんですが…」
大空さんがそこまで言うと、
「でも、るいちゃんに言ってたよ?」
だいちゃんが言いました。
「るいさんのような場合は全然問題ありません。空飛ぶじゅうたんなどの存在を信じていないようですので…。 ただ、類は友を呼ぶと言う言葉があるから、萌ちゃんのお母さんの友達の中に、…ひょっとしたら、メルヘンやファンタジーが大好きな人がいることも考えられます。 その人に万がいちこの話をした場合、そしてその人がその話を信じた場合…」
「つまり、僕達は雲の王国に行けなくなっちゃうんですね」
要君が腕組をして神妙な顔をしてうなづきました。
「まあ、簡単に言えばそう言うことになってしまいます。でも、大丈夫でした。それでは…っと」
大空さんがキーボードをパチパチ叩きながら、テレビの画面を見ました。 テレビには萌ちゃんと萌ちゃんのお母さんのすずちゃんが、ニコニコしながら空飛ぶじゅうたんの絵本を読んでいる姿が映し出されています。
その画面に『記憶を夢に変換』という文字が出てきて、『OK』をクリックしました。
「萌ちゃん親子には申し訳ないんですが、先程見たことは夢の中のことという記憶に変えさせて頂きました」
「萌ちゃんには悪いけど、仕方ないよね。だって、そうしないと私達、雲の王国に行けないんだものね」
美佳ちゃんは、自分に言い聞かせるように言いました。そして、他の子供達とふうせん達も黙ってうなづきました。」
「それでは、時間を止めて雲の王国へ向けて出発します」
大空さんが言うと、皆ホッとした表情になりました。
「その前に、大空さんがじゅうたんになった方がいいんじゃないの? 元々そうしていれば、こんな事にはならなかったんだから…」
夏海ちゃんが言いました。
「そんなぁ~。それじゃ大空さんが可哀想よ。 大空さんだって、私達と一緒に宇宙の旅を楽しみたいでしょ」
と、美佳ちゃんがいいました。
「そうだよ。大空さんがいなかったら俺たちは魔法のじゅうたんに乗ることさえ出来なかったんだぜ」
拓也君も言いました。
「夏海ちゃんは相変わらず、手厳しいですな~」
要君もビビったようなしぐさをして、口をはさみました。
「夏海ちゃんのいう通り、僕がじゅうたんになって皆の旅の案内をします」
大空さんはにっこり笑って言いました。
「僕は大空さんと一緒に、おしゃべりしながら宇宙の旅をしたいな」
優太君が言いました。
「でも、やっぱり僕自信がじゅうたんになって、旅の案内をします」
「ドリームドリームハッピードリーム…じゅうたんにへんし~ん‼」
大空さんは、空飛ぶじゅうたんの上で呪文を唱えました。すると…
「あれっ、大空さんがいない (゜゜;)(。。;) キョロキョロ」
翔君が驚いて叫びました。 他の皆も探しましたが、やはりどこにもいないようです。
「僕はここです。今、皆が乗っているじゅうたんになっています」
「ええっ、(・・?)。 空を飛びながら変身しちゃったの? 凄いね~」
拓也くんは目を丸くしています。
「はい、この魔法は難易度が高かったですけどね。さて、それでは出発します。ゆっくりと空の旅をお楽しみ下さい」
じゅうたんはゆっくりと夜の空に向かって進んで行きました。
子供達とふうせん達は、かたずを飲んで、これから行く雲の王国への期待に胸を膨らませました。
「うわ~‼ いい眺めだね~」
優太君が興奮して言いました。
「でも、僕達の町がだんだん小さくなっていくね~。少しの間さよならだね」
翔君が手をふりました。
「さて、そろそろ明かりを消しますね。これから先は夜空の星を楽しんで下さい」
じゅうたんになった大空さんが言いました。明かりを消すと星がすぐ近くにたくさん見えました。
「わあ~っ、きれい~‼」
ピンクのふうせんがうっとりしています。
「こんなに素晴らしい眺めが見られて、僕は幸せです」
緑のふうせんが、感激して涙ぐんでいます。
「宇宙を旅行できるふうせんは、恐らく僕達だけ…だものね」
白いふうせんが、にっこり笑って言いました。 ふうせん達の会話を、子供達は微笑んで見ていました。すると、
「あ~、地球が…」
美佳ちゃんは言いかけましたが、感激して言葉になりませんでした。 青い地球はあまりにも美しかったからです。誰もが、ただ黙って美しい地球を見ていました。
地球が見えなくなると、星が瞬く中をじゅうたんは進んで行きます。 子供達はため息の連続です。
「こういう小さな星は、地球からは見えないのよ」
美佳ちゃんが言いました。
「ふぅ~ん。不思議だね。あるのに見えないなんて…」
翔君が首をかしげました。
「目に見えなくても有るものは他にもあるのよ。…言える人!」
美佳ちゃんが質問しました。
「空気でしょ」
「は~い。翔君、大正解。他には無いかな?」
「ええっ、( ; ゜Д゜) まだあるの? 僕分かんない(・・?)」
翔君は一生懸命考えています。
「分かった! 幽霊」
そう言いながら手をあげたのは要君です。
「嫌だわ、要君たら」
夏海ちゃんは怒っています。
「何で怒るんだよ。だって目には見えないじゃんか~」
「それでもダメ! 恐くなっちゃうもん」
「まあまあ2人とも…。 確かに要君の言う通りだけど、私も幽霊は嫌いだから、この話はここまでね」
美佳ちゃんはため息をつきました。
「心もそうですね」
じゅうたんになった大空さんが言いました。
「それを言って欲しかったの」
美佳ちゃんはにこにこしながら言いました。
「そうか~。思いつかなかったけど、心って見えないよね」
だいちゃんは大きく頷きました。
「ねえ、だいちゃん。 僕が今、何考えてるか当ててみて…」
要君がニヤニヤしながら、自分を指さして言いました。
「要君が今考えてることなんて、分かんないよ。 ケーキが食べたい…とかじゃないの?」
だいちゃんは面倒くさそうに言いました。
「ピンポーン、当ったり~。 だいちゃん、よく分かったね」
驚く要君を見ながら、子供達は少し呆れ顔です。
「大空さんには今日初めて会ったのに、何かもっと前から知り合いだったような気がする」
優太君が言いました。
「俺もそう思った。近所に住んでいるお兄さんみたいな…」
拓也君が言うと、他の子供達も頷きました。
「大空さん…さっきは意地悪言ってごめんなさい (;>_<;)。 一番上のお兄ちゃんと同じ位の年だから、何かワガママ言っちゃって…」 夏海ちゃんが神妙な顔をして謝りました。
「そんなこと気にしないで下さい(*^_^*)。何とも思っていませんから…」
大空さんは言いました。それを聞いて夏海ちゃんはホッと (^_^;)したようです。
「そんなことより、もうすぐ『夢の里駅』に到着します。ここで少し休憩しましょう」
大空さんが言いました。
「ええっ、もう着いたの?」
ふうせん達は大はしゃぎしています。
「雲の王国はもう少し先になります。夢の里駅と言うのは、高速道路のサービスエリアのようなものです。 ここで少し休んでいきましょう。僕がじゅうたんでいるのはここまでです」
「ええっ、それはどういう事ですか(・・?)」
子供達はキョトン(・_・)としています。
「ハハハ…もうじき分かります。きっと皆が喜ぶと思いますよ」
じゅうたんは、だんだん1つの星に近づいています。 夜空に黄色っぽく輝く星だと思っていたものが、少しずつ姿を見せ始めました。 近づくにつれて、地球のように山や湖などのある星であることが分かりました。 子供達もふうせん達も目がテンになっています。
「雲の王国は遠いので、途中で休憩が必要だろうと言うことで作られた星なんです」
「ええっ、これ作り物なの?」
驚いて拓也君がいいました。
「しっかし…よく出来てますな~」
感心して要君が言いました。
「この星は、総面積が東京都23区の広さ位しか無いんですが、必要なものは全て備わっているので、わざわざ他の星から観光に来る人もいるんですよ」
「地球の他にも僕達みたいな…人が住んでいる星があるんですか?」
優太君が質問しました。
「もちろんですよ。 他の星には僕達みたいな人間は住んでいないだろうと思っている人が多いと思いますが、たくさんの星に多くの宇宙人が住んでいるんです。 中には地球よりも科学が進んでいる星だってあるんですよ」
「へぇ~、…そうなんですか?」
美佳ちゃんは、そう言ったきり後の言葉が出ませんでした。 美佳ちゃんばかりでなく、他の子供達も驚いて言葉が出ませんでした。
「そろそろ着きますよ」
じゅうたんは、青々とした木々の生い茂った広い公園の上空に来ると、芝生の上にそっと降り立ちました。
「地球に似ているけど、地球じゃないんだよね」
だいちゃんが、ポカンとした表情で、じゅうたんから降りました。
「私…何か夢を見ているような感じだわ」
美佳ちゃんは、両手で頬を包むようにしながら降りました。
芝生の向こう側には大きな池があり、白鳥が気持ち良さそうに戯れていました。 そして、その先に綺麗な花畑がありました。
「素敵な所だわ (*^_^*) お花もいっぱい咲いてて綺麗‼」
夏海ちゃんはスキップしながら、花が咲いている方へ行きました。
「あそこにお店があるよ」
翔太君が言うと、
「ホントだ。ケーキ屋さんもあるじゃん」
要君はニコニコ(o^-^o)しながら大きな声で言いました。
「ケーキ屋はあっても、お金が無かったら買えないよ」
クールに言う拓也君。
「あ~そうか、残念(-_-;)」
要君はがっかりしています。
「お金はいらないですよ」
大空さんの声がしたので振り向くと、大空さんはすでに人間の姿に戻っていました。
「雲の王国へいく人は、このカードを持っていれば全て無料になりますよ」
大空さんはそう言って、子供達にカードを配りました。 男の子達はカードを受けとると、
「わーい」と走りだしました。
美佳ちゃんは、花畑を眺めていた夏海ちゃんの所へ行き、
「夏海ちゃん、このカードを見せると何でも無料になるんだって」
と言って、大空さんからもらったカードを渡しました。
「えっ、そうなの(^o^) 嬉しい。ねぇ、美佳ちゃん一緒に行こう」
美佳ちゃんと夏海ちゃんも嬉しそうに店がある方へ急ぎ足で歩いて行きました。
ふうせん達も、もちろんカードを貰いました。
「僕達が楽しめるものもあるの?」
貰ったカードを見ながら白いふうせんが言いました。
「もちろんありますよ。 ほら、あそこに『ふうせん専用ショッピングプラザ』っていう看板が見えるでしょ。 あそこに行けば、ふうせんさん達が楽しめるものがたくさんありますよ」
「ええっ、ホントに?」
ふうせん達は、走って店のある方へと急ぎました。そのふうせん達の後ろ姿を見ながら、大空さんはもう少し手足を長くしてあげれば良かったかな…と思うのでした。
そこはショッピングモールのようなものです。映画館やレストラン、ファッション関係の店など何でもそろっています。
「まずは腹ごしらえだよね(^.^)」
拓也くんが笑顔で言うと、
「…だよね~。拓也君ファミレスに行こう」
「僕も行く」
卓也君と要君とだいちゃんはファミレスに行きました。
優太君と翔君はゲームセンターに入って行きました。
美佳ちゃんと夏海ちゃんは洋服を見に行くことにしたようです。
さて、ふうせんたちはどうしているでしょうか? ふうせん専用ショッピングプラザは7人のふうせん以外には客はいないようでした。 7人のふうせん達は、皆一緒に歩いています。
『ふうせんギャルズファッション』というコーナーでピンクのふうせんが足を止めました。
「この夏の人気ファッションかぁ~。見てみようかな (*^_^*)」
ピンクのふうせんは興味しんしんです。
「すいません。洋服試着してみたいんですけど…」
ピンクのふうせんが若い店員さんに声をかけました。
「いらっしゃい。まあ、可愛いふうせんさんね。この夏はやりの洋服を紹介するわね(^-^)」
若い店員さんはそう言うと、数点の洋服を選んで持って来ました。
「このヒマワリの洋服は、今一番人気なんですよ。試着してみますか?」
「まあ、かわいい(*^_^*)」
ピンクのふうせんはさっそく着てみました。
「ピンクちゃん、すごく可愛いよヾ(=^▽^=)ノ」
黄緑ちゃんは笑顔で言いました。
「もう~、黄緑ちゃんたら~正直なんだから (//∀//)」
照れくさそうに、ピンクのふうせんは言いました。 そして振り返って、他のふうせん達に
「どう?」と尋ねます。
「う…うん、可愛いよ (^_^;)」
白いふうせんが言うと、満足そうににっこり笑いました。
「これも素敵だけどぅ~、お日さまの洋服も素敵だわ。それにウサギさんやネコちゃんのも可愛いし…。 う~ん、悩んじゃう ヽ(´▽`)/」
ピンクのふうせんがなかなか決まらないでいると、赤いふうせんやオレンジのふうせんは厭きてしまい、
「悪いけど、他を見てくるね (^o^;)」
と言って、向こうに行ってしまいました。
「あ~、僕も…。アイスクリーム食べに行ってくる ヽ(´▽`)/」
青いふうせんが言うと、
「ぼくも、一緒に行く」
「ぼくも…」
黄色いふうせんと白いふうせんも、スタコラサッタと逃げるように行ってしまいました。
「…んもう、皆冷たいんだから (-_-;)。 いいわ、このヒマワリの洋服にするわ (^O^)/」
ピンクのふうせんが、不満そうに言うと、 ニコニコしながら黄緑のふうせんは言いました。
「ピンクちゃんは何を着ても可愛いけど、僕もヒマワリの洋服が一番似合っていると思うよ (*^_^*)。」
その頃他のふうせん達は、ソフトクリームを注文していました。
「あきちゃったよ(-_-;)。あんな所にいつまでもいられないよね」
赤いふうせんが言うと、
「ホントホント。アクビが出そうだったよ(~o~)」
オレンジのふうせんもうなづきました。
「ソフトクリーム美味しいね (^o^)v」
青いふうせんがにっこり笑いました。
その頃、だいちゃんと拓也君と要君の3人はファミレスにいました。 だいちゃんはカレーを注文しました。 卓也君はかつ丼を注文しました。要君はミートソーススパゲティとオムライスを注文しました。
皆食べ終わると満足そうに「美味しかった~」と言って、お腹をポンポン叩きました。
「次はデザートだね。何にしようかな?」
拓也君はメニューを広げました。
「 ええとねぇ…僕はねぇ、何にしようかな~」
要君もメニューを見ながらデザートを選んでいます。
「じゃあ~、僕も何か注文しようっと」
だいちゃんもメニューを広げました。
「いくら食べても無料なんだから、たくさん食べなきゃ損だよね」
「そうそう、要君のいう通りだよ。だいちゃん、たっくさん食べようぜ」
拓也君は嬉しそうに言いました。
「ご注文は決まりましたか?」
そこにウエイトレスのお姉さんが来ました。
「僕はプリンアラモード」
だいちゃんが言いました。
「ええっ、それだけ…?」
拓也君が驚いたように言いました。
「だいちゃん。ただなんだから…もっとたくさん注文しようよ」
要君。
「それじゃ、フルーツパフェも注文しようかな?」
だいちゃんの注文が終わると、
「次は俺が注文するね。ええと…ね」
拓也君はチョコレートパフェとイチゴショートケーキを注文しました。 要君は、ケーキを5個も注文しました。
「要君…そんなに食べられるの?」
だいちゃんは呆れたように言いました。
「全然平気だよ~。前にケーキバイキングに行ったときなんか38個も食べたことあるんだから~」 「ええっ、そんなに食べたの? お腹壊さなかった?」
さすがに拓也君も驚いたようです。
「大好きなケーキを好きなだけ食べられるなんて、もう一生無いと思って、朝から何も食べないで行ったんだ。 普通のケーキより小さめだったから50個は食べられると思ったんだけど、38個でギブアップしちゃった」
得意顔で話す要君を見て、だいちゃんは「負けた」とため息をつきました。 注文が終わると、拓也君が言いました。
「ここのウエイトレスのお姉さん、皆綺麗だよね。まるで、A〇Bのお姉さんたちみたいだと思わない?」
「確かに美人ばかり…」
キョロキョロしながら、要君はニヤニヤして言いました。
「どうせなら、美人でスタイルのいい人から渡してもらった方が気分いいもんね」
だいちゃんも嬉しそうです。
「お待たせしました。ご注文のデザートをお持ちしました」
3人はウエイトレスさんを見て、笑顔が固まりました。
ウエイトレスは注文された物をテーブルに乗せると、
「早めに召し上がって下さいね」
と言ってウインクしました。
「あ…ありが…とう」
子供達はウエイトレスをまじまじと見ながら、お礼を言いました。
「あ~ら、そんなに見られると照れちゃうじゃないの。私ってそんなに綺麗?」
「う…うん。ま…まあ、そ…のう」
拓也君が、しどろもどろになりながら言いました。
「ふふふ…。 子供って正直ねぇ。私も鏡を見るたびにウットリしてしまうのよ。」
それを聞いた要君は、小さな声で言いました。
「凄い自信過剰のお姉さんだね。笑っちゃうよね」
今度は拓也君が小さな声で言いました。
「だいたいこの人…男性に見えない?」
「見える見える」
3人はクスッと笑いました。
「ねえ、何話してるの? 私にも教えてよ~」
「べ…別に。 それよりお姉さん、お仕事中でしょ。早く行った方が良いですよ」
だいちゃんは、今にも吹き出しそうになるのをこらえて言いました。
「あ~ら、ホントだ。随分混んできたみたいね。それじゃあね」
ウエイトレスさんは、大きなおしりをふりながら行ってしまいました。お姉さんの姿が見えなくなると、 3人は大爆笑です。
そこへ美佳ちゃんと夏海ちゃんが、姿を現しました。 2人は両手に紙袋をかかえています。
「お姉ちゃ~ん。こっちこっち~」
拓也君が立って手招きすると、2人は気づいてこちらにやって来ました。
「すご~い‼ ケーキがい~っぱい。こんなにたくさん食べられるの?」
夏海ちゃんは驚いています。
「もちのろんろんだよ。食後のデザートさ。これは僕の分」 得意気に言うと、要君は自分の注文したケーキを目の前に並べました。
「あきれた(-_-;)。 タダだと思って注文し過ぎだよ」
美佳ちゃんは呆れています。
「まあまあ、まずは2人とも座って」
だいちゃんに言われ、美佳ちゃんと夏海ちゃんは紙袋を空いた席に置くと、イスに座りました。
「私も何か食べようかな?」
美佳ちゃんはメニューを広げました。
「私も…」
夏海ちゃんもメニューを広げると、何にするかあれこれ迷っています。 一方男の子達は黙々と食べています。
「いらっしゃい。ご注文は決まりましたか?」
先程のウエイトレスが立っていました。
「プッ」
思わず吹き出した拓也君の腕をつねる美佳ちゃん。
「いてっ(>_<")」
拓也君は一瞬顔を歪めましたが、すぐに気を取り直して、黙々とチョコレートパフェを食べ始めました。
「私はラーメンにしようかな? それとサラダのセット」
と美佳ちゃん。
「私はオムライスのセットとドリンクバーにする」
と夏海ちゃん。
「はい、かしこまりました。ご注文を確認します…」
ウエイトレスが行った後、
「拓也、笑ったりしたら失礼でしょ」
美佳ちゃんはたしなめました。
「ふぁ~い。だって~、可笑しかったんだも~ん。 どう見たって男が女装してる感じじゃんか」
拓也君は反省しているようには見えません。
「ホント、拓也君ってデリカシーが無いんだから…。女の子は傷つきやすいのよ」
夏海ちゃんも言いました。
「…るせぇな~。 自分達だって面白いと思ってるくせに…」
拓也君は、ぶつぶつ文句を言いながら、食べ続けています。
「ねえ、不思議だと思わない?」
美佳ちゃんが言いました。
「ええっ、何が?」
夏海ちゃんがキョトンとしています。
「だって、ここって日本そのものって感じがしない?」
「確かに言われてみれば、メニューも日本語で書いてあったものね」
要君が大きくうなづいて言いました。
「そう言えば、店の雰囲気も日本のファミレスとそっくりだよね」
と、夏海ちゃん。
「ところで、大空さんはどこへ行ったのかな?」
だいちゃんがキョロキョロ (゜゜;)(。。;)しながら言いました。
「そう言えば、見かけないね。どこへ行ったんだろう?」
美佳ちゃんは店の中をぐるりと見渡しましたが、このファミレスにはいないようです。
「お・ま・た・せ ラーメンとオムライスのセットをお持ちしました。 (*^_^*)」
またまた先程のウエイトレスさんが、とびきりの笑顔 (o^-^o)で、料理をテーブルに並べます。
「温かいうちに召し上がれ(*^_^*)♪ うふっ」
ウエイトレスさんは小首をかしげニコニコしています。
美佳ちゃんと夏海ちゃんは「有難うございます」と笑顔でお礼を言いましたが、卓也君と要君は、まだクスクス笑いたいのを堪えていました。
「ところで、皆はここに来て不思議に感じなかった? この星って日本に似てるでしょ」
ウエイトレスさんが言うと、子供達全員が
「似てる~」と言いました。
「実は、さっきも話してたところだったんです」
美佳ちゃんが言いました。
「それはね。うふふ…、大空君のアイデアなのよ。 ケイン王子の誕生日に、地球の子供達を招待する話は聞いてるわよね」 」
子供達は頷きます。
「円盤で超高速で行けば、10分ほどで『雲の王国』に行くことは出来るんだけどね。 大空君が綺麗な星を眺めたりしながら、空の旅も楽しませてあげたいと言ったので、その意見が採用されたって訳なの。 そうすると時間がかかるから、途中で休憩する所が必要になってくるでしょ。 途中にこの小さな星があったので、ここに決めたのよ。この星の全てのレイアウトは私達日本人が担当したから、日本風になったってわけ」
「ええっ、ウエイトレスさんも日本人だったんです…か?」
子供達はもうビックリです。
「他にも日本人はいるのよ…」
ウエイトレスが言いかけた所へ、上〇彩似の綺麗な女性が来て、
「こら‼ 健太郎、おしゃべりばっかしてないで仕事をしなさい ( ̄~ ̄;)。今、忙しいんだからね」
そう言うと、また急いで行ってしまいました。
だいちゃんたちがこの星に着いたばかりの時は、他に誰もいなかったけど、いつの間にか世界中から子供達が来ていて、ウエイトレスさん達はとても忙しそうです。
「今、さっきの女性が健太郎って言ってたけど… (^_^;)」
美佳ちゃんが言うと、
「うふっ…私こう見えて男なのよね。ビックリしたでしょ?」
やっぱりね。 男の子達は思いました。
「分かったわよ。今、行きますよ~だ。 あの子、上田アヤって言うんだけどね。何かにつけていばるのよ。きっと、私の美しさに嫉妬してるのね」
はっ(・・?) 子供達の頭に疑問符が浮かび上がりました。
男性だったのね。随分体格がいいとは思ったけど。気づかなかったわ」
「お姉ちゃん、誰が見たってあれは男でしょ~が」
呆れるように言う拓也君。
「だって、スカートはいてたら女の人だと思っちゃうよね。確かに脛毛が濃いな~とは思ったけど…」
夏海ちゃんはにやけながら言いました。
「でもこの星が日本風な訳は分かったね。ひょっとしたら、この星全体が観光地みたいになっているのかしらね」
美佳ちゃんの話を聞いて、夏海ちゃんは嬉しそうに言いました。
「もしそうなっているならこの星も観光したいね」
「空飛ぶ円盤か~。僕も乗りたいな~」
だいちゃんが言うと、他の子供達も瞳を輝かせて
「乗りた~い (^O^)/」 と言いました。
「あ~、ケーキ美味しかった。 もう1個食べっちゃおうかな」
要君の顔が幸せそうに、ニヤケて (o^-^o) います。
「ええ~っ、まだ食べるの? 要君、これ以上食べるとお腹壊すよ。 そしたら、遊園地で遊べなくなっちゃうかもしれないよ。それでも良いの?」
夏海ちゃんに言われて、要君は6個目のケーキを注文するのはあきらめました。
世界中の中で、だいちゃん達がこの夢の里という星に来たのが一番早かったようです。 最初このファミレスに入った時は誰もいなかったのですが、いつの間にか店の中はほぼ満席の状態になっています。 世界中から子供達が集まっているようですが、よく聞いていると、皆の話している言葉が分かります。 不思議な感覚です。
「どう? 世界中の人が同じ言葉で話すのって不思議な気持ちになるでしょう?」
また健太郎です。
「他の星からも観光客はたくさん来るんだけど、ここにいる間は、皆知らずにドリームスターの言葉で話しているのよ。 どうしてかと言うとね…。 この星全体が魔法のベールで包まれていて、いつものように話しているつもりでいるのに、気づかずに同じ言葉で会話してるというわけなの。面白いでしょ (^o^) 今日は、地球からの子供達の貸しきりだから、他の星からの観光客は来ていないけどね」
言われてみれば、客は子供ばかりです。この星のことをもっと知りたかったので、皆は黙って健太郎の話に耳を傾けました。
「初めの頃は、私も同じ言葉で会話してるのを聞いて不思議な気持ちになったわよ」
「私も今、不思議な気持ちがしてる(・・?)」
美佳ちゃんがそうつぶやいいてため息をつきました。 他の子供達もまだポカンとしています。 だいちゃん達の後ろの座席にいる黒人の子供達も、やはり同じような事を言っている声が聞こえました。
「こんな時に大空さんはどこに行ってるのかしら。他の国の子供達の所には、ちゃんとリーダーがいるのに…」
夏海ちゃんが不満げに言います。
「きっと大事な用があるのよ」
美佳ちゃんがなだめるように言いました。
「大事な用って何よ。私達を放っといて…」
夏海ちゃんは、ほっぺたを膨らませて、プンプン怒っています。
すると健太郎が、
「あ~っ、(;゜0゜)忘れてた‼ 実は私、大空君に伝言を頼まれていたのよ。 ちょっと急ぎの用ができたから、地球に戻って来るって」
「な~んだ、そうだったの~? もっと早く思い出して欲しかったわ(-_-;)」
子供達の冷たい視線を受けて、健太郎は
「あ~、忙しい忙しい」
と言って逃げるように向こうに行ってしまいました。
「美佳ち~ゃん、夏海ち~ゃん」
どこからか、聞き覚えのある声が聞こえてきました。 声のする入口の方を見ると、萌ちゃんが嬉しそうに手を振りながらこちらに走って来ます。 そして、その後ろから大空さんが笑顔で歩いて来ました。
「ええっ、どういうこと?」
子供達は全員頭の中が真っ白になってしまいました。
「遅くなっちゃってごめんなさい。地球に戻って来るからと、健太郎君には伝えておいたんですけど、伝言聞いてますか?」
「たった今聞きましたけど…。 それより萌ちゃんが、どうしてここにいるんですか?」
美佳ちゃんが信じられないと言うように尋ねました。
「お母さんは一緒じゃないの?」
夏海ちゃんも萌ちゃんと手をつなぐと尋ねました。
「萌、1人で来たの。」
萌ちゃんはニコニコしながら言いました。
「大空さん、どういうことなんですか? 萌ちゃんだけで大丈夫なんですか?」
美佳ちゃんは心配顔です。
「まさか誘拐してきたんじゃないでしょうねぇ」
要君が冗談っぽく言いました。
「ハハハ…。 反対に…萌をよろしくお願いしますと、お母さんに託されたんです。 まずは、どうしてこう言うことになったのかお話しします」
大空さんは空いた席に腰をおろすと、ゆっくり話始めました。
「この『夢の里』に到着して、皆さんが店のある方に行った後、僕は空飛ぶ円盤に向かいました」
「ええっ、空飛ぶ円盤? 僕達ひょっとしたら…これから空飛ぶ円盤に乗せてもらえるの?」
要君は、身を乗り出して大きな声で言いました。
「そうですよ。ここから先は円盤に乗って行くんです」
「やった~‼」
「嬉しい‼」
「楽しみ~」
子供達は飛び上がって喜びました。 その時、
「あ~、皆…あんな所にいた~‼」
翔君が皆の所まで、走って来ました。
「ゲームは楽しかった?」
美佳ちゃんが笑顔で話しかけました。
「うん、凄く楽しかったよ。…ねえ、何の話をしてたの?」
翔君が小首をかしげながら言いました。
「ウッシッシー。実はね、俺達これから…」
拓也君が言いかけると、
「空飛ぶ円盤に乗せてもらえるんだって~」
だいちゃんが興奮して言いました。
「ホントに?」
翔君は目を丸くして驚いています。
大空さんが笑顔で頷くと、
「ホントに…ホントなの?」
優太君は感激して涙ぐんでいます。 優太君は、空飛ぶ円盤の絵をよく自由帳などに上手に描いていました。
「1度でいいから乗ってみたいな~」
と、いつも夢見ていました。そんなことは無理だと分かっていても、乗ってみたいという夢をあきらめるこてが出来ずにいたのでした。
その事を美佳ちゃんは知っていたので、
「優太君良かったね。夢が実現出来て…。まずは座って話を聞こうよ」
とにっこり笑って言いました。優太君と翔君は、空いている席に座りました。 このファミレスは日本にあるものを参考に作られましたが、座席だけは12人ずつ座れるようになっています。 1つのグループが10名前後になるからです。
「さて、これで全員揃ったので…」
大空さんが話し始めようとすると、
「ちょっと、待ってよ~。僕達も仲間に入れてよ」
そう言ってやって来たのはふうせん達です。 7人のふうせん達は、床をビュ~ンビュ~ンと弾みながらやって来ました。
「ゴメンゴメン(^_^;)」
大空さんは謝りました。
「それでは、萌ちゃんも参加することになったので、子供が8人、ふうせんさん達が7人の合計15人になりました。」 「あれっ、萌ちゃん。いつ来たの?」
翔君が驚いたように言いました。
「うん、さっき…」
萌ちゃんは恥ずかしそうにうつむきました。
「僕も、今気がついた」 優太君も驚いたようです。
そんな様子を見ながら、大空さんが言いました。
「まずは、萌ちゃんがどうして参加することになったか…と言うことからお話ししましょう」
「僕が円盤に行くと、どこからか子供の泣く声が聞こえるんです。それも、円盤の中にこだまするように感じます。 鍵をかけて入ったのだから、円盤の中には誰もいないはずです」
「おかしいな~と思いつつ、円盤に備え付けられたコンピューターの前に座ると、電源を入れたままになっていた画面の中で、女の子が泣いていました」
「それが、萌ちゃんだったのね」
美佳ちゃんが、萌ちゃんの頭を撫でながら言いました。
萌ちゃんは恥ずかしそうに、隣に座っている美佳ちゃんの胸に顔を押しつけてしまいました。 萌ちゃんは、夢の中で一足先にお母さんと『雲の王国』に行っていました。 夢だと一瞬で行けてしまうんです。
はじめの頃は楽しく遊んでいたようなのですが、夢の中にはお母さんと萌ちゃんだけしかいません。 しだいに寂しくなって来たようで、泣き出してしまったんです。
「美佳ちゃんや夏海ちゃんと遊びたい~‼」
と大きな声で泣き出してしまい、お母さんがオロオロする姿が映し出されていました。
「こんなに大きくて広い遊園地で、待たずに好きなだけ遊べるのよ。 素敵じゃない?」
いくらお母さんがなだめても、萌ちゃんは泣き止みません。 そこで僕は、萌ちゃんと萌ちゃんのお母さんの夢の中に入って行くことにしました。
「こんにちは」
僕が2人の前に行くと、2人ともキョトンとしていました。
「どなたですか?」
お母さんが尋ねました。
「僕は大空雄大と言うものです……」
自己紹介の後、僕はこれまでの話をすべて話しました。
「そうだったんですか?」
萌ちゃんのお母さんはにっこり笑いました。
「そう言えば、私はるいちゃんと散歩をしている時に空飛ぶじゅうたんを見ましたが、あの時のじゅうたんはあなたが魔法で姿を変えていたのね」
お母さんは納得したようです。
「萌が美佳ちゃんや夏海ちゃんと遊びたいと泣き出して…。どうしてよいやら分からず困っていたんです。 私は夢の中で構わないんですが、萌だけでも…雲の王国という遊園地に連れて行っては貰えないでしょうか」
萌ちゃんのお母さんに言われ、僕は「分かりました」と答えました。
「雲の王国は子供しか参加出来ないんですが、お母さんもここで1人で遊ぶのは心細いでしょう。 夢の中にはなってしまいますが、仲良しの友達を誘っても構いませんよ」
「ホントですか? 10人以上誘っても構いませんか?」
「100人でも1000人でも大丈夫です(^o^)。誘いたい人を心に思うだけで、その友達がここに来てくれます」
「それじゃ、まずはるいちゃんを誘っちゃおうかな。それから…ええと…」
萌ちゃんのお母さんは、子供のようにはしゃいでいました。
「現実の世界は時を止めてありますが、夢の中では3日間遊ぶことが出来るので楽しんで下さい。 それでは、萌ちゃんをお預かりします」
僕がそう言うと、萌ちゃんのお母さんは深々と頭を下げ、
「萌のことよろしくお願いします」 と言いました。
…まあ、かいつまんで説明するとこんな感じです。 僕は萌ちゃんを円盤に乗せて、この『夢の里』に戻って来たんですが、このファミレスに来る前に円盤に備えてあるコンピューターを覗いて見たら、萌ちゃんのお母さんはお友達や町内会の人達を大勢誘ったみたいですよ」
「あ~、お腹すいたぁ~」 優太君が言いました。
「僕もお腹ペコペコ。皆は何を食べたの?」
翔君も皆の方を見ながら言いました。
「俺はカツ丼でね。お姉ちゃんがラーメン。それからだいちゃんがカレーで…要君は何だっけ…」
首をかしげる拓也君。
「僕はミートスパゲッティだよ。それからデザートにケーキ5個も食べたんだぜ」
得意気に言う要君。
「ええっ、( ; ゜Д゜) ケーキを5個も食べたの?すご~い‼」
翔君はビックリです。
「オムライスも美味しかったよ」
夏海ちゃんが、萌ちゃんに笑顔を向けました。
「わぁー、どれも美味しそう…」
3人がどれにしようかと迷っていると、
「他にもメニューはたくさんありますよ。」
いつの間に来たのか、長身のウェイターがメニューを広げてくれました。 美佳ちゃんと夏海ちゃんは思わず顔を赤らめました。
スラリと足が長く、かなりのイケメンです。 笑顔も話し方も優しくて素敵です。女の子なら誰でも憧れてしまうカッコいい男性です。
「僕はお寿司がいいな」 優太君が言いました。
「僕は…っと、オムライスにする」
翔君も決まりました。皆が萌ちゃんの方を見ると、萌ちゃんは恥ずかしそうに、
「ラーメンにする」
と言いました。 大好きな美佳ちゃんと同じものを注文したかったようです。
「ご注文はお寿司とオムライスとラーメンでよろしいでしょうか」
「はい」
3人が返事をすると、
「デザートも注文されますか? 本日は全て無料になっていますよ」
ウェイターは笑顔で言いました。3人は相談して、食べ終わってから注文しますと答えると、
「かしこまりました」
と言って頭を下げると、行ってしまいました。
そのウェイターの後ろ姿を見ながら夏海ちゃんが言いました。
「ねえ、美佳ちゃん。 今の人超カッコいい ヾ(=^▽^=)ノと思わない? アラーシの桜井翔太君に似てるよね」
「うんうん、似てる似てる。ステキだよね~(//∀//)」
そんな2人を見て、拓也君は冷やかに一言。
「2人とも目がハートになってるよ」
「ええっ、ホントに?」
夏海ちゃんは頬に両手を当てると、はにかんだようにうつむきました。
「冗談に決まってるだろ」
あきれたように言う拓也君に、
「ふん、拓也君なんか~、だいっ嫌いだもんね ( ̄□ ̄;)!!」
夏海ちゃんはあかんべーをしました。
「お待たせしました。」
そう言って料理を運んできたのは、健太郎でした。 美佳ちゃんと夏海ちゃんは、ちょっとガッカリです。 (-_-;)
「あ~ら、可愛い子ね。ひょっとしたら…大空君が地球に戻って連れてきた子かしら?」
健太郎はニ~ッと笑うと、萌ちゃんの頭を手で軽くトントン ヾ(=^▽^=)ノしました。
萌ちゃんは、不思議そうに (・・?)健太郎を見ると、
「この人お兄ちゃん? それともお姉ちゃん?」
首をかしげながら言いました。
「まあ、嫌だわ。お姉ちゃんに決まってるでしょ (⌒‐⌒)うふふ…」
健太郎が手で口元を隠すようにしながら言いました。
「うわっ、キモイ ( ̄~ ̄;)」
拓也君が隣にいるだいちゃんに小さな声で言いました。 それを聞いただいちゃんも、
「確かに…」
と、ニヤケながらて頷いています。
「そこの2人。何ひそひそ話しているのよ。私に見とれていたの?」
「う…うん。お…お姉さん、き…きれいだなって。ねっ、だいちゃん」
拓也君がウインクすると、だいちゃんも
「そ…そうなの。き…きれ…きれいだなって…ハハハ」
だいちゃんは突然ふられたので、ドキマギして、どもってしまいました。
「そう? 私そんなに綺麗? でも、…私の事好きになってもダメよ。 だって彼がいるんですもの…うふふ( 〃▽〃)」
恥ずかしそうにうつむく健太郎を見て、子供達は全員顔を見合せました。 健太郎に彼氏? 一体どんな男性なんだろう。子供達は興味津々です。 そこへ先程のイケメンが来て、
「健太郎、サボってるんじゃない!! 料理が冷めてしまうだろう。早くお客様にお配りしなくちゃ」
「はぁ~い。桃花ちゃん」
健太郎の言葉を聞いて、子供達全員がポカンとした顔をしました。
「桃花って…もしかして、このウェイターさんは女性なんですか?」
美佳ちゃんは、さすがにショック( ̄□ ̄;)!!を隠せないようでした。
「ウフフ…。 大正解!! 桃花ちゃんはこう見えて女性よ。そして、私の彼氏なの。ウフフ (//∀//)」
健太郎は照れまくっています。
「そんなこと大きな声で言うなよ。照れくさいだろ (//∀//)」
桃花さんも赤い顔をしています。 美佳ちゃんと夏海ちゃんは、とてもガッカリしました。
桃花さんと健太郎は、仲良く料理を配ると、向こうに行ってしまいました。
「お姉ちゃん、ゲキチーン!!(^m^)」
拓也君の言葉に、さすがの美佳ちゃんも怒ったようで、ジロリとにらみました。
「拓也君なんて大嫌い!! もう…サイテー!!」
「いただきます(^O^)/」
3人はそれぞれに言うと食べ始めました。
「あ~美味しい (⌒‐⌒)。いつも食べる回転寿司と違って、すご~く美味しい」
優太君は満足そうです。
オムライスも卵がトロットロで美味しいよ(⌒‐⌒)✌」
翔君も嬉しそうに、ニコニコしながら食べています。
「ラーメンもおいしいよ (^o^)」
萌ちゃんも満足そうに、ニコニコしながら食べています。 萌ちゃんが美味しそうに食べている姿を見ながら、美佳ちゃんが言いました。
そう言えばね、昨日面白い事があったのよ」
すると、拓也君が焦ったように言います。
「お姉ちゃん…、あの話なら絶対しないでよ 」
美佳ちゃんは、『ふん』といった感じで…拓也君の声を無視しています。
「わあ、聞きた~い (^∇^)」
夏海ちゃんが催促します。
「昨日、お母さんが美容室へ行ってたのね。ちょっとパーマがかかり過ぎちゃったって、落ち込んでいたのよ。 そこに拓也が帰って来て、
「お母さん、頭の上にラーメン乗せてどうしたの?」 と言ったの」
「ひど~い」
夏海ちゃんは、拓也君をチラッと睨むようにすると、
「ねえ、それからどうなったの?」
夏海ちゃんが続きをうながします。
「そしたらね、お母さんがすご~く怒って、
『拓也のおやつ、今日は抜きよ( ̄□ ̄;)!! 美佳、拓也の分も食べていいわよΨ(`∀´#)』
って言ったの」
「あ~あ~、言わないでって言ったのに…。お姉ちゃんのいじわる~(-_-;)」
「さっき意地悪言ったんだから…自業自得でしょ (`へ´)」
夏海ちゃんは、さらに続けます。
「拓也君って…。ほんとデリカシーが無いのよね。ラーメンだなんて、お母さんが怒るのは当然よ」
夏海ちゃんは、そう言いながらもプッと吹き出し、ついにはゲラゲラ笑い出してしまいました。
いじける拓也君以外は、皆大爆笑です。
「拓也君、笑っちゃってごめんね。…でも、想像すると可笑しくて…」
だいちゃんは笑い転げています。 拓也君はいじけて、テーブルに顔を伏せています。
「拓也君…お母さんを怒らせちゃったみたいですね。 これからは気をつけましょうね(^_^;)」
大空さんは、慰めるように言いました。
「さて、それでは…。 食べている人は食べながら聞いて下さい。 食事が終わったら、円盤に乗って、まずはこの夢の里の観光をします」
「やった~‼ いよいよ…円盤に乗れるのか。た~のしみ~(^.^)」
要君はニヤニヤしています。
「この夢の里は小さな星ですが、日本の絶景を集めて配置してありますので、見ごたえ十分ですよ。 北海道から沖縄までの、観光人気スポットばかりですからね」
「すご~い‼ 早く見てみた~い(^-^)」
「たのしみ~(^o^)」
美佳ちゃんと夏海ちゃんは、手を握りあってはしゃいでいます。
「この星のユニークなところは、1ヶ月で四季が全て体験出来るんです」
「それはどういうことですか?」 優太君が、不思議そうに尋ねます。
「つまり、最初の1週間が春になるわけです。次の1週間が夏と言うように、1週間ずつ季節がかわるので、旅行者の中には1ヶ月間滞在する人もいるんです」
「凄いね。でも日本は広いから北海道が春になる頃は、沖縄は夏になっているんじゃないの?」
だいちゃんが疑問に思ったことを言いました。
「それは大丈夫です。 春は北海道から沖縄まで、全部春です。これが魔法パワーです」
「ますます楽しみになって来ちゃった。 でも、よく考えてみると、ここには長い時間いられないから、1つの季節しか見られないね」
要君が、ちょっとガッカリしています( ̄~ ̄;)」
222
「それでもいいんじゃないの? 僕達の本来の目的は『雲の王国』に行くことなんだからさ」
いつの間にか元気を回復した拓也君が言いました。
「ご心配なく。 それなら大丈夫ですよ。何せ、今はケイン王子の誕生日のお祝いです。 ここにいる短い時間に全ての季節を体験出来るようになっています」
「本当?」
「やった~‼」
子供達は飛び上がって喜びました。
「皆さ~ん、こんにちは。遠い地球からようこそ~」
若い女性の声がしたので、子供達は声のする方を見ました。 広いファミレスの奥にステージがあり、そのステージの上から、若い女性がマイクで子供達に語りかけていました。
「夢の里へようこそ。私は皆さんと同じ地球から来て、こちらで働いている星野恵と言います。 これから皆さんに少しお話がありますので、こちらに注目してくださいね」
「リーダーの人から聞いていると思うけど、今日はドリームスター星のケイン王子の10才の誕生日です。 ケイン王子はお誕生日を地球のお友達と過ごしたいと言うことで、それを実現するために私達も頑張って来ました」 子供達は、黙って聞いています。
「ここにいるお友達は、世界30ヶ国から集まった300人のお友達です。 国は違っていても、ここにいる間は、言葉が通じるので皆仲良くして下さいね」
「はーい」
「はーい」
ほーい」
子供達は元気いっぱいです。いつの間にか遠くに座っていた子供達も、集まってきています。
「皆さんをここに連れて来てくれたリーダーさん達は、世界の国々の中から子供達のリーダーとして協力してもらえそうな人を選びました。 その人達の大変な努力があって今回の企画が実現しました。
この夢の里まで『虹色のじゅうたん』に姿を変えて、連れてきてくれたリーダーさんの皆さん、ステージに上がって下さい」
30人のリーダーがステージの上に上がり、1人1人国の名前と自己紹介をしました。 子供達は大きな拍手をし、お礼を言いました。特に自分の国のリーダーの時は歓声が上がりました。
「ほとんどの人が『求人募集』のチラシを見て、この仕事を始めるようになりました。実は私もそうなんですけどね」
恵さんはそう言ってクスッと笑いました。
「これまで大変だったんですよ。魔法の特訓もしましたし…。 ドリームスターと雲の王国と、ここ夢の里に何度も足を運んで、打ち合わせもしました」
あまりにも現実の生活からかけ離れたことの連続に、子供達はポカンとしています。 でも、すべての子供達の瞳は明るく輝いています。
「ここからは、空飛ぶ円盤に乗って雲の王国へ行くという話は聞いていると思いますが、その前に… 私達が今いる、この夢の里の観光をする予定です。 この星は、日本という国の美しい観光地をコンパクトに集めたもので、とっても素晴らしい美しい風景ばかりなので、ゆっくり楽しんで下さいね」
「憧れの円盤に乗れて、おまけに日本一周旅行も出来ちゃうなんてお得だね~」
だいちゃんが優太君に言うと、優太君はもうウルウルしています。
「今度は僕も皆と一緒に観光を楽しみますよ」
ステージから戻って来た大空さんが笑顔でウインクしました。
「それでは、次にこのファミリーレストランで働いているスタッフの紹介をします。スタッフの皆さんステージに上がって下さい」
恵さんが明るい声で言うと、ウエイレスやウェイターがステージに上がって行きます。 健太郎や桃花さんもステージに上がっていました。他にも様々な国の人がいて、自己紹介をしていきます。
健太郎がマイクを渡されました。
「皆さんこんにちは。ウフフ…。私はこんなに可愛いけど、実は男なの、ウフフ…。名前は健太郎って言いま~す。ヨロシクね(o^-^o)✌」
健太郎はウインクしました。
健太郎さんって、幸せな人だね。自分の事可愛いだって…」
だいちゃんは、にやにやしながら言いました。
「自分は不細工だって暗い顔してるより、良いんじゃないの? でも、自信過剰って気もするけど…(^_^;)」
拓也君が言いました。前に座っていたアフリカの子供達も、クスクス笑っています。 次は桃花さんがマイクを受けとると、女の子達がキャーキャー騒ぎだしました。
「わぁ~、ステキ!!」
「ハンサム~!!」
「カッコいい!!」
女の子たちは、ため息をついています。 桃花さんはやりづらいな~という顔をして頭をかくと、 「桃花です。よろしく」
と言いました。日本人なら名前を聞いただけで、桃花が女性であると分かるのですが、他の国の人達には分かりません。
「キャー、笑ったわ。笑った顔もステキ!!」
なんて言って騒いでいます。
「えー、以上で夢の里で働いているスタッフの紹介は終わりです。他の店の店員さんは全てドリームスターの人達で、人数も多いので自己紹介は省略させて頂きます。 この後は、グループ毎に別れて、これからの事を相談して下さい。」
恵さんはにっこり笑って言いました。
「大空さん、 地球からこの星に働きに来ている人って…結構いるんですね。 皆、この星に住み込みで働いているんですか?」
美佳ちゃんが尋ねました。
「住み込みで働いている人もいるし、通勤している人もいますよ」
それを聞いて、子供達はビックリです。
「エエッ ((((;゜Д゜)))、つ…通勤なんて、出来るの(^o^;)?」
だいちゃんは驚いて言いました。
「円盤通勤だと、超高速で10分で来れるんです。」
「エエッ( ; ゜Д゜)、 …10分で…?」
皆、もう…ビックリです。
「まあ、今回は夜空の星なども楽しんで欲しかったので、ゆったりコースですけどね」
「な~るほど…そう言うわけだったのかぁ~。 確かに星…綺麗だったよね」
要君は感慨深げに言いました。そしてそれは皆も同じ思いでした。
「日本の絶景ばかりを集めた星があるって事は、世界の絶景を集めた星もあるんですか?」
夏海ちゃんが質問しました。
「ありますよ」
「ええっ、ホントに? それなら、そっちも見たいな~」
夏海ちゃんは甘えるように言います。
「あるにはあるんですが、そちらはとっても広いので、空から観光するだけでも3日位かかってしまうんです。 どうせ旅行するなら、円盤から降りて、ゆっくり観光したいでしょ? そうすると、最低でも2週間は必要になってしまうんです」
「そうか。それじゃ、雲の王国には行けなくなっちゃうものね」
だいちゃんが腕を組んで、考えるポーズをとっています。
「遊園地へは絶対行きたいよ~」
翔君は口をへの字に結んで泣き出しそうな顔になってしまいました。
「大丈夫だよ、翔君。 雲の王国には絶対行くんだから…心配しなくてもいいんだからね」
美佳ちゃんは、翔君の顔をのぞきこむようにしながら頭をなでました。
「良かった~(^.^)」
翔君は安心したように、にっこり笑いました。