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お嬢様、第一ミッションクリアです。

「すごい!やっぱり竜の血って本物だったんだ!」

 マクシスが目を輝かしている。シアンの常人離れした動きを目の当たりにして、興奮しているようだ。シアンが気圧されていると、マクシスが急に静かになった。

「ごめん。生まれたときから持っているもので人をはかってはいけないと言われてたのに」

 父親から言われた言葉を思い出し、自分の行動を反省している。肩を落とし、本当に申し訳なさそうにする。

「大丈夫ですよ。アーウェン様は褒めてくださったのですから。僕は嬉しかったですよ」

 シアンは、マクシスを慰めるように言う。その言葉を聞いて、表情がぱっと明るくなる。

「ほんとに?」

「本当です」

「ほんとに、ほんと?」

「はい」

 シアンは、満足げなマクシスを連れて移動する。人がさらに増え、その場に立ち止まっているのは邪魔に思われそうだ。二人は、空いているテーブルに向かい合って座る。

「あ、ちょっと待ってて」

 席についたと思ったら、マクシスが料理を残してどこかに行ってしまった。シアンは目の前の誰もいない席を見つめる。料理に手もつけず、ただマクシスを待つ。

 しばらくすると、マクシスが新しいトレイを持って現れた。一瞬、マクシスが二人分食べる大食いなのかと思ったが、後ろに手ぶらの少女がいることに気づき、そうではないとわかる。

「待たせちゃってごめん」

 マクシスは、自分の隣にもう一つのトレイを置き、少女を座らせた。

「リュツカ君に紹介したい人がいるんだ。姉のチグサです」

 マクシスが姉と紹介した少女は、中庭で見た黒髪の少女だった。やはり片目に眼帯をつけている。白いような灰色の瞳の左目は、眠そうに目が半開きだ。

 出会って間もないシアンに、自分の姉を紹介するところを見ると、マクシスが姉を大切に思っていることに間違いはないようだ。しかも、積極的に世話をしたがっているようで、そわそわとタイミングを見計らっている。

(お嬢様が言っていたことは本当かもしれない)

 シアンがチグサと関わることはないと思っていたため、彼女の性格等を聞いてこなかった。帰ったら、ルキナに聞いてみようと心のうちで考える。

「えっと…チグサ様、はじめまして。シアン・リュツカです」

 何と呼べば良いのか迷ったすえ、チグサと呼ぶことにした。名字で呼ぶと、姉弟が揃ったところでは、二人とも反応してしまうかと思ったからだ。失礼かと心配したが、チグサは特段気にする様子はなく、頷くだけ。シアンに興味を示さず、黙々と料理を食べている。

「姉様だけずるいです。リュツカ君…シアン、僕も名前で呼んで。様もなしで」

 マクシスがぐいぐいとシアンに迫る。

「流石にそれは…」

「身分をわき…わまえる…ことは大事だが、今の時代、身分の壁を越えた付き合いも大事だって、お父様が」

 マクシスは、父親の教えをよく守る。彼の考え方、性格は、父親の影響を強く受けている。

「だから、ケーゴもいらない」

「しかし、それはお互いに不利に働く可能性もあります。マクシス様の立場が危うくなるかも…」

 アーウェン家がリュツカ家にナメられていると捉えられかねない。シアンは、マクシスの今後に心配をしているのだが、うまく伝わっていないようで、マクシスはポカンとしている。

「わかった。マクシスの父上は、そういう一般常識を変えたいんだよね」

 シアンがそう言うと、マクシスは嬉しそうに大きく頷いた。

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