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お嬢様、僕は行きません。

「えー!シアンは来ないの!?」

 シェリカの声が宮殿の客間に響く。パーティが始まるまで、待合室として使わせてもらっている部屋だ。

「僕は第三貴族ですから」

 シアンは内心うんざりしている。というのも、ミューヘーン家でも、さんざんこのやり取りをしてきたのだ。相手はルキナだったが。屋敷を出るまで、攻略対象の貴族が集まる場で不安だと、シアンも一緒じゃないと無理だとごねていた。無理なものは無理だ。

「でも、招待されてるって聞いてますが」

 ティナの鋭い言葉に頭を悩ませる。そう、実はシアンも招待されている。おそらくノアルドが気を遣ったのだろう。シアンはノアルドの顔見知りで、彼にとっては婚約者の親族のようなものだ。充分、王族の関係者といえる。

 だが、第二貴族であっても招待されていない者もいる。そんな中、第三貴族のシアンが出席したとなれば、反感をかいかねない。面倒ごとは極力避けたいシアンからしてみれば、招待されていようが、出席しないのが一番なのだ。

「シアンがいないのならつまらないな」

 マクシスがチグサを連れて、待合室にやってきた。シアンはまた説明しなければならないとわかり、とうとうため息をつく。

「シアンいないの…?」

 チグサまで残念そうだ。シアンの服装はたしかに出席者のように整っている。だから、不思議に思うのも無理はない。

 これはあくまで失礼のないように正装しているだけであって、パーティに出席するためのものではない。シアンはそう思っていたのだが、実はハリスは彼が出席することも考えている。この服を用意したのはハリスで、きっちり身なりを整えるよう指示したのもハリスだ。

「ともかく、僕はここで待っているので」

 シアンは笑顔で押し切ろうとする。

「もう!ルキナが文句言う奴らからシアンを守れないからいけないのよ」

「なんですって!?」

「シアン、うちにくるなら、シェリーが守ってあげる」

「第二貴族のあんたが何を言ってるのよ。第一貴族のほうが身分は上なのよ」

 この部屋には仲の良い六人の子供たちとその親がいるだけだが、あまり大声出すと外に聞こえてしまう。こんな口喧嘩を見せるのはみっともない。

 ティナがシェリカをたしなめようとするが、聞き耳を持たない。ルキナも同じだ。それは最初からわかっていたので、シアンは仲裁に入ろうとはしない。あまりにひどくなったら、メアリが叱りに来るだろうし。

 チグサが不意に部屋の出入り口に目を向ける。ノアルドだ。ルキナを迎えに来たのだろう。

「ノアルド様、お久しぶりです」

 ルキナもノアルドに気づき、上品に挨拶する。ノアルドは、時々ミューヘーン家に遊びに来ていたが、ルキナが初等学校に入学してからは、遠慮してか、あまり会いに来ない。前回会ったのは、去年の夏くらいか。

「何か問題でも?」

 ノアルドが優しくルキナに尋ねる。

「聞いてください。シアンったら、パーティに参加しないって」

 ルキナは隠すことなく報告した。ノアルドを味方につけるともりなのだろう。

(余計なことを)

 ノアルドに何か言われたら、さすがに逆らえない。

「別に好きにしたら良いと思いますよ」

「え!?」

 驚いた声を出したのはルキナだが、シアンもたいそう驚いている。

「招待されたからと言って絶対に出席しなければならないわけではないですし、それに招待したのは僕ではありません」

 ルキナの驚き具合を見て、ノアルドがシアンを招待したと勘違いされていることに気づき、訂正する。シアンはさらに驚く。

「じゃあ、誰が…」

 マクシスが首を傾げている。

「今日は兄の誕生日ですよ。兄がシアンに会いたがってるんです」

 シアンはルイスに会ったことがない。第三貴族であっても招待された理由として考えられるとしたら、シアンがリュツカ家の人間だからだろう。リュツカ家は王族との関係が深かったと聞く。それで、ルイスもリュツカ家に興味をもったというところだろう。

「まあ、兄が招待しないようでしたら、僕が招待状を送ったんですけどね」

 ノアルドが微笑み、そろそろ時間だと言う。ルキナの手を取り、待合室を出ていく。

 ルイスの招待とあらば、シアンは断るわけにはいかない。ルキナたちについて会場へと移動する。

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