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第9話 黒田二色

 二色「仕方ない。飯食ったら、俺の部屋にこい。」


 テーブルには夕食が並んでいる。


 誰が作ったのだろうか。おいしそうだ。


 舞「って、どうして初めて会う男性の部屋に行かないといけないんですか!!」


 自分の顔が真っ赤に染まっているのがわかる。


 二色「?お前、今日から俺の相棒なんだろ?色々教えてやるから来い。分かったか?」


 舞「色々って…それに命令口調…むかつく…」


 最後のほうは聞こえるか聞こえないくらいの声で囁いた。


 二色は舞に一瞥もくれずに2階へ消えていった。


 なおか「舞っち、結構むっつりだね~…」


 なおかがじとっとこちらを見てくる。


 舞「なっ!そんなのじゃありません!!」


 つい、口調が強くなった。


 なおか「ふふふ…ピュアね…っとそろそろお暇しようかしらね。じゃあね、玲ちゃん、みんな!」


 太一「また!来てください!!」


 ウインクしながらなおかは去っていった。


 にぎやかな人だ。しかし、これが、警部…


 舞「そういや、このご飯だれが用意したんですか?」


 久遠「こんなうまい飯作れるのは…」


 …


 コンコン、私は扉を叩く。2階が男子のフロアになっていて、その一番奥の部屋が二色の部屋だ。


 二色「おう。入れ。」


 声がしたので、入ることに…


 舞「なっ…!」


 そこには上裸の二色がいた。


 舞「全然大丈夫じゃないじゃないですか!!」


 私は目を背ける。


 二色「これくらいで動じるなよ…俺はただの人間だからケガの治療してんだよ。ほらこれ。」


 よく見ると腹部に包帯を巻いている最中だった。


 まだ、新しいのか巻いた包帯の上から血がにじんでいる。


 舞「ほんとに無能力者なんですね。」


 包帯を巻き終えたのか二色は座っているベッドの横をポンポンと叩く動作をしつつシャツを着ている。


 隣に座れってこと…?


 二色「ああ、こんなくだらない傷も致命傷になりかねない。これが毒を塗っているナイフだったら?傷を受けたあと、強力なウィルスのもとにさらされたら?」


 考えるだけで恐ろしいことだ。


 死には普通の人より慣れているつもりだった。


 二色「どうした?座れよ。…正直言う、お前の戦闘見せてもらった感想だ。」


 私は二色の隣に腰を掛けながら、唾を飲んだ。


 羞恥心などは消え去っていた。


 二色「お前は強い。」


 舞「!?」


 驚いた。本当に意外だった。まさかこの言葉が出るとは。


 二色「どうした、意外か?」


 舞「ええ…意外…本当に…」


 二色「俺たちみたいに昔から殺し合いを経験したわけでもないだろうし、見た目は普通の女の子だ。ちょっと筋肉質だけどな。」


 舞「…傷触ってもいいですか?思いっっきり。」


 二色「やめてくれ…さっきの訂正のようで悪いが、一般的な無能力者の捜査官としてはという意味だ。」


 舞「でしょうね…吉野さんに手も足も出ませんでしたから…」


 二色「だが、お前は強くなろうという意志がある。だから、俺も引き受けた。」


 …


 沈黙が少しつづいた。


 私には確認しなければいけないことを思い出した。


 舞「…殺し合い…なんですか…?」


 二色「…ああ。もちろん確保が最優先だ。だが、能力者同士の戦闘において、無傷で確保は難しい。お前が今日出会った奴全員が誰かを殺している。」


 舞「…」


 あの天使のような真琴も誰かを殺めているのだろうか。


 二色「お前が確保した能力者たちは手錠をはめただけで止まったか?そうじゃなかっただろ。太一は何度も死にかけている。一度や二度じゃない。お前が相手してきた能力者は所詮その程度だったということだ。」


 みんな本当の意味で”必死”なんだ。


 二色「…すまんな。別にお前をけなしているわけじゃない。わかってくれ。」


 …

 

 また、沈黙の時間が流れる。

 

 時刻は午後10時を回っている。


 舞「っあ!ご飯おいしかったです。お料理上手なんですね。」


 私は思い出したかのように言う。冷静なふりをして。


 二色「まあな。飯作るのが好きなんだ。そういう顔が見れるからな。」


 舞「なっ!!」


 なんだこれ、こんな地味顔の笑顔のどこが!


 私、どんな顔してた?

 

 いや、これは任務だ!落ち着け私!まだ彼らを完全に信用するな!


 でも、なんだろうこの部屋の匂い…落ち着く…


 ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!


 サイレンが鳴り響いた。


 二色「行くか。お前に見せてやるよ。無能力者の戦い方。」


 そういって彼は装備を手際よく着用していく。


 彼は最後にコートを羽織った。


 私は、その美しい一連の動きをずっと見ていたい気持ちだった。

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