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第5話 邂逅Ⅲ

 真琴「舞さんさっきの資料もう読んだんですかー!?」


 私は隅々まで資料に目を通す。


 舞「ああ!もっと前のも読みたい!」


 真琴「はい~。」


 資料を運ぶ真琴の目が本当にぐるぐる回っていた。


 そんなことはお構いなしに私はさらに資料を読み進める。


 舞(ここで住むことなんかはこの際どうでもいい!なんだこれ!!こんなこと全く知らなかったぞ!!)


 全く報道されていないし、本部へ報告すらされていない事件が山ほど。


 黒田玲の手によってどれほどの事件を隠蔽されてきたかを思い知った。


 舞(黒田玲はうまく隠蔽している。だが、おそらくそのことに上は気付いている。それに…不自然だ…隠蔽している事件とそうでない事件の違いはなんだ?隠蔽している事件の犯罪者はどこへ?)


 ここはすごい。


 私が遭遇した能力者に関する事件まで徹底的に調べられていた。


 恐らく、他部署にも内通者がいるのだろう。


 …


 不意にドアが開いた。


 先ほど玲の部屋に向かう時に使った階段へ通ずるドアだ。


 時刻は午前11時過ぎ。


 私が出社したのは午前8時40分頃。


 舞「…」

 

 ドアの向こうには一人の男。


 男「おはざいまーす。」


 あくびをしながらキッチンに一直線。


 冷蔵庫を開け牛乳パックを取り出した。


 よく見ると中は牛乳パックだらけだ。


 男はなんと牛乳パックを一気に飲み干した。


 真琴「わわっ!太一くんっ!牛乳飲むとき、コップに入れてください!!もうっ!」


 真琴がプクーと頬を膨らませる。かわいい。


 太一「真琴ちゃん!?起きてたの!?珍しい!ごめんごめんって…君は?」


 真琴「こちらっ今日から一緒に働いていただく来栖舞さんですっ!」


 それに対し太一は素早く反応する。


 太一「私、対能力者犯罪取り締まり係吉野太一よしのたいち巡査であります!!」


 左手で敬礼をする。右手で敬礼をするのが通例である。


 舞「あの…敬礼の手、逆です…」


 太一は顔を真っ赤にして敬礼を直した。


 本当に警察官なのか…?


 髪も青っぽい色に染めている。


 とりあえず、私も挨拶をしないと。


 舞「私、本日付けで対能力者犯罪取り締まり係に配属されました来栖舞巡査であります。よろしくお願い致します。」


 太一「お綺麗ですね!ここの女性はみんな美しい!!」


 ニコニコとしながらこんなことを恥ずかしげもなく言う。


 こういう男をチャラい?っていうのか?


 真琴「舞さんホントキレイですよねっ!私もそう思いますっ!」


 今回は真琴に免じて許すことにし、最も気になっていたことを聞くことに。


 舞「ほかの方は何をされてるんですか?とっくに勤務時間は過ぎていると思うのですが。」


 真琴「太一くんは真面目ですから、いつも一番早く出勤するんですよ♪」


 真面目だと?この男が?


 太一「はははっ!真琴ちゃん褒めすぎだよ!」


 虫唾が走った。


 こんな空気で大丈夫なのか?ここは。


 太一「やっぱり一番仕事がデキるのは巡査部長なんですけどね!負けてられません!」


 舞「キモイ…」


 ぬぐい切れない違和感に感情が零れてしまう。


 太一「…?」


 太一は目を丸くしている。


 舞「こんな時間に出勤してなにが真面目なんですか?今もなお出勤してこない人がデキる?ふざけるのもいい加減にしてください!ここで処理した事件のほとんどが上へ報告が上がっていない!!おかい!!!!この部署は腐っています!!!」


 本気でキレてしまった…しかし、後悔はしていない。


 真琴「えーと、舞…さん…?きっとあれですよっ!疲れてるんですっ!今日はもう上で休みましょう?私と一緒にお風呂入って一緒に寝ましょ?」


 太一「あ、あはは…これは手厳しいな…」


 真琴の提案は素晴らしいがここは言うべき時だ!


 九条副警視総監に報告してこんな部署つぶしてやる…!!


 舞「こんな部署です!きっとその巡査部長もおかしいんです。きっと隠蔽された事件の犯罪者はあなたたちが殺しているんでしょう?だから、隠蔽できている!!ここは腐っています!!」


 太一「今、なんつった…?」


 太一の雰囲気が変わった。


 ここまで来たら私も止まることができない。


 舞「だから!あなたたちは腐っています!!その巡査部長もただの人殺しです!!」


 太一「訂正しろ…」


 舞「訂正しません。上に報告します。対能力者犯罪取り締まり係は腐っていると!!」


 太一「…俺のことを悪く言うのは構わねえ…だが、俺以外のことを悪くいうことだけは許さないぞ!!」


 まさに鬼気迫る表情の太一にハッとした。


 我に返ったとでもいうべきか。


 私は少し間を開け冷静に喋る。


 舞「…すいません。熱くなりすぎました。会ってもいない人のことを悪く言いすぎました。でも、考えはそう簡単には変えられません。深夜帯の勤務なんて我々にはよくあることです。それは遅刻の理由としては弱いと私は考えます。」


 太一「俺のほうこそ強く言いすぎてしまいました。それも女性に対して…本当にすいません。」

 

 太一の雰囲気が温厚に戻った。

 

 太一「あの、俺あんまり事務仕事とか得意じゃなくて、大抵は戦闘に備えてトレーニングしているんです。強力な能力者と対峙することが多く、戦闘に備えて各々で調整しているんです。睡眠も大事な調整なんです。

 まだ、無理かもしれませんが、仲良くしてほしいです。戦闘では連携が大事なんです。」


 真琴がさらにフォローをいれてくる。


 真琴「事務仕事はっ!私にっ!全部っ!任せてくださいっ!私っ!”超記憶能力”を持っていましてっ!スーパー事務員真琴ちゃんを頼ってくださいっ!」


 100点の笑顔を向けてくる。


 太一「真琴ちゃんは超記憶能力の弊害で大抵の時間は眠っていないとダメなんだ。今日は来栖さんの配属初日だから張り切ってるけど、ほんとはそろそろ活動限界だと思うよ。」


 事情…こういうことか。能力の弊害、今までの私とは無縁のものだった。


 舞「すいませんでした。何にも知らないで、悪口ばかり…」


 太一「いや、言ってくれてよかったよ。ため込むことは一番よくないからね。それに、やっぱりここは特殊なんだ。理解するのはむずかしいと思うし、ゆっくりいこう!そうだ!俺と模擬戦してみます?」


 少し間を開け私は答える。


 舞「…お受けします。その勝負。」


 願ってもないことだ。戦闘に特化した部署、どれほどのものか。


 真琴「わわっ!急展開っ!!」

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