第3話 邂逅Ⅰ
私は件の廃墟の前にいる。
やはり、これは廃墟としか呼びようのない建造物だ。
意外にも、電気は通っているようだ。電線がつながっている。
これは、インターホンだろうか?扉の横にボタンを見つめる。
中の人物と連絡をとる手段を持ち合わせていないため、このボタンを押すしかないようだ。
舞「あまり気が進まないが…」
仕方がないので、インターホンを押すことに。
ジリリリリリリリリ…
反応がない。もう数分待っている。
やはり、ただの廃墟なのだろうか?
何度も押してみたが、反応がない。
仕方がないので、扉に手をかけた。
扉が開く。
舞(インターホンの意味!!)
思わずつっこみたくなってしまった。
舞「お邪魔しまぁす…」
私は恐る恐る中へと歩みを進めた。
中には広めのスペースがあり、そこには机と椅子が並べられ、パソコンや書類が置いてあった。
ほかにはキッチンや冷蔵庫なんかもあった。
初めて施設が生きていることを実感した。
舞「あのぉ…」
私の声がやたらと響く。誰もいないのか?
舞「すいませーん!!」
つい大声を出してしまった。
??「わわっ!!」
奥のソファのあたりでドシーンと大きな音がした。
目を凝らしてみる。
すると、女の子がひょっこり顔を出した。
16、7くらいの女の子だろうか、とにかく若く見えた。
よく見ると警察官の制服を着ているではないか。コスプレ…?
女の子「わわっ!お客さんですかぁ!久しぶりでびっくりしちゃいましたぁ!!」
寝起きなのか目をこすりながらあくびをしている。なんて無防備なんだろうか…
真琴「わわっ!ご挨拶しないとっ!私っ対能力者犯罪取り締まり係で事務員をしていますっ!佐伯真琴と申しますっ!!」
舞「かわいい…」
ぎこちない敬礼につい、本音が出てしまった。
真琴「へっ!?」
顔を真っ赤にしている。
本当にかわいらしい。
庇護欲というものを人生で初めて感じた瞬間だった。
とりあえず挨拶を…
舞「あ、いえ、すいません。私、本日付けで対能力者犯罪取り締まり係に配属されました、栗栖舞と申します!」
真琴「はひっ!!」
…
お互い敬礼をしたまま数分がたった。
舞「あのぉ…?」
たまらず声をかけた。
真琴「わわっ!すいませんっ!そうでしたねっ!今日からでしたねっ!よろしくお願いしますっ!」
ほんとにかわいい。
天使の笑顔と表現しよう。
この子は今日から私の天使に任命します!
真琴「あっ!お荷物重たいですよねっ!私っ持ちますっ!」
舞「お構いなく。これもトレーニングの一環なので。」
真琴「はいっ!栗栖さんのお席はこちらになりますっ!」
天使…いや、真琴に案内され、席に段ボールを置き一息ついた。
と、不意に冷たい飲み物が目の前に。
真琴「お疲れですよねっ?ここっ町から遠いですからっ!タオルもどうぞっ!」
パアアと音が聞こえてきそうな笑顔をこちらに向けてくる。
まぶしい。
やはり天使は存在した。
私は冷たい飲み物を飲み干した。今日は真夏日ということもあり、結構汗をかいていたのでタオルもありがたい。
真琴「ささっ!部長にご挨拶ですよっ!」
真琴に連れられ4階へあがる。階段は外の非常階段しかないようだ。うん、完全な欠陥住宅だな。
真琴「部長っ!例の新人さん来られましたっ!」
中から声が聞こえる。
??「入りたまえ。」
きれいな声だ。
扉を開けるとまずはじめに年季の入った机と椅子があり、大量の書類が置いてあるのが目に入った。
部屋全体の雰囲気としては綺麗とは言い難いが、妙に落ち着く。
書類の山でみえずらいが、椅子には一人の女性が座っている。
この人がここの最高責任者のようだ。
女性「やあ。元気かい?」
舞「はっ!」
癖になっている敬礼。
??「ふふっ。この部署じゃその”ポーズ”をする者は少ないから久しぶりに見たよ。綺麗な敬礼だ。」
席から立ちあがった彼女は思わず息を飲むほどの美女だった。
壊れているシャッターの隙間から朝日が入り込み、彼女を照らしていた。なんとも幻想的だ。
彼女は日本人なのだろうか、髪は黒いがその瞳は綺麗な赤だった。
玲「おっと、申し遅れた。私の名前は黒田玲。対能力者犯罪取り締まり係の部長だ。年齢は聞かないでくれたまえ。」
微笑んだ玲の瞳に私は飲み込まれそうだった。