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第2話 経緯

 ー数日前、東京日本軍国警視庁5階ー


 「おい。あれが噂の…」


 「指さすなって。」


 「また上官が殉職だって。」


 「”上官殺し”…」


 ??「…」


 私は目的地へと歩みを進める。


 周りの声など今の私にはまったく入ってこない。


 心臓の音がやたらと五月蠅い。


 私はある人物に呼び出されている。


 緊張、怖いとさえ思っている。


 …


 コンコン,私は小気味よく扉をノックする。


 ??「入りたまえ。」


 女性の声だ。


 扉を開けた先、威圧感を放つ男、元東京日本軍大総統であり現警視総監”村神武王”御年68がどっしりと華美な椅子に座っている。


 左目を失っているのか、眼帯をつけている。


 服の上からでも分かる。筋骨隆々でまさに軍神のあだ名がしっくりとくる。


 左右にも尋常ではなさそうな男女が控えている。


 右に控えている男、副警視総監九条宗慶くじょうそうけい


 一見温和そうな優男に見える。


 狐のような目と表現するのが正しいだろうか?ニコニコと微笑んでいる。口元は笑っていない。


 左には警視長である佐竹梨華さたけ りか


 若くして警視長に上り詰めた実力派の女性である。


 同じ女性ということもあり、私の目指すべき憧れの存在である。


 40歳になるというが、20代後半と言われても疑うものはいないだろう。


 凛々しいその姿にみとれてしまいそうだ。


 この3人に呼び出されるということがどれほど非常な事態であるか一捜査官である私、栗栖舞くりす まいにも容易に理解できる。

 

 九条「栗栖舞巡査、なぜここにいるか分かるかい?」


 九条副警視総監の表情は変わらない。


 舞「…私には分かりかねます。」


 本当だ。私は真面目に職務を全うしてきたつもりだ。ただ…


 佐竹「心当たりが全くないかね?」

 

 こういうのを圧迫面接というのだろうか?


 緊張で尋常ではない手汗をかいている。


 舞「…”上官殺し”ですか…」


 聞こえるか聞こえないか曖昧な声で囁いた。


 私に関して、そういう噂があるとこは知っている。

 

 佐竹「君…分かっているなら初めから答えたまえ。」


 私は決して上官を殺してなどいない。否定しようと口を開く。


 舞「私はっ…!!」


 私が発言しようとしたが、九条に制止された。


 九条「悪いね。別に我々も君を責めようというわけではない。分かっているさ。君は殺しもしていないし、むしろ職務に全うで非常に優秀だと聞いている。実力も折り紙付きだとね…」


 舞「ではなぜ…!」

 

 九条「ただね、君、巻き込まれ体質っていうのかな…特に厄介な事件に遭遇する。能力者に関する…ね。君よりも強い上官をつけてあげられなかったのはこちらのミスだ。そこは謝らせてもらおう。何度も人の死に目に合わせてしまって申し訳ない。」


 舞「…いえ、私は…」


 これほど輝かしい経歴、実力を持つ人から謝られるという経験がなかったので、正直困惑してしまった。


 九条「そこで提案だ。異能に関する事件を専門に取り扱っている部署を知っているかい?」


 私には心当たりが一つだけある。


 舞「対能力者犯罪取り締まり係…ですか?」


 あまりいい噂は聞かない部署だ。


 なにかを企んでるだとか、上官が”人間じゃない”だとか。


 九条「よく勉強しているみたいだね。素晴らしい。」


 舞「私自身能力者と戦う機会が多かったもので…」


 九条「君にはそこで働いてもらいたい。お似合いだと思ってね。」


 冗談のつもりだろうか…正直気が進まない。


 舞「私には分かりかねます…」


 村神「わっはっは!君、まじめだねぇ。そう深く考えずに気楽に生きなさい。君くらいの年のころは無茶したものだよ。」


 ここで村神警視総監が初めて口を開いた。


 思いのほか、豪快かつ気色のいい人だった。


 九条「そんなわけだ。よろしく頼むよ、栗栖君。」


 誰の意向だとしても私は上官命令に従うほかないのだ、組織に属している限りは。


 舞「はっ!」


 私は敬礼をした。


 警察学校では癖になる程練習した動作だ。


 佐竹「退出してもよいぞ。君には同じ女性としても期待している。がんばりたまえ。」


 私は再度敬礼をし、退出しようと扉に手をかけた。


 九条「どうも彼ら、きな臭いんだよね。君には期待しているよ。」


 …

 

 そして、今に至る。


 私は段ボール一つ分の荷物を持ち、雑木林の中を歩いていた。


 舞(本当にこんなところに建造物があるのか…?)


 雑木林の獣道をひたすら進む。


 まだこんなに自然が残っていることに関心しつつまだ進む。


 舞「あれか…?」


 困惑からかつい独り言を囁いてしまった。


 そこにはぼろぼろの廃墟のような建造物がポツンと佇んでいた。

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