第1話 事件A
西暦20XX年、人類の増加に対し、少なくなった資源や食料問題を巡り、第三・四次世界大戦を繰り広げ、世界は核の炎に包まれた。
大戦は各国の首都圏を避けるという条約の元行われたが、被害は甚大。人間の住める土地は大戦前の10%ほど。
ここは東京日本軍国。
大戦を制し世界統一を果たした国家である。
東京日本軍国、最強の軍事力を誇ってはいるものの、その実態は旧東京都付近を中心とした国家であり、その軍事力も首都に偏っており、海を越えた土地まで完全に制御できているとは言えない状態である。
当時、東京日本軍最高司令官である、大総統”村神武王”の全世界に向けた世界統一宣言より25年、資源問題解決の目途はたたず、各地で反乱、指導者が現れ様々な組織が暗躍し、世界の均衡は早くも崩れかけていた。
ー東京都4区地下10層ー
警報が鳴り響いている。
A「おい、早くしろ。この扉の向こうに大量の原油があるはずだ。」
黒ずくめの服を着た2人の男が重厚な鉄の扉の前で会話をしている。
B「ちぃ、分かってるんだよ!そんなこと!加減を誤ったら資源ごと大爆発だぜ?」
手袋をした一人の男の指の先からどういう訳か炎が噴出している。
一点に集められた炎は余程火力が高いのか青い光を放ち扉を穿とうとしている。
集中力がいる作業なのか男の額からは汗が滲み出ている。
A「ああ、だがもう侵入には気づかれている。上層で仲間が暴れているとはいえ、時間がない。火力をあげて扉を溶解しろ。ある程度溶けたら俺がぶち破る。」
こちらの男が指揮官なのか、命令口調で作業を促す。
B「どうなっても知らねえぞ!!うおりゃああああああああああ!!!」
Bは激しい性格なのか、上官に対しても言葉使いが荒い。
重厚な鉄の扉が真っ赤になり、炎が集まっている部分が徐々に溶けだしてきた。
??「なあ、知ってるか?」
二人の黒ずくめははっとしたように振り返る。
そこには、黒のスーツに黒のコートを羽織った男が一人立っていた。
腰には日本刀を帯刀、そして背中には男の体格には不釣り合いな大剣を背負っていた。
??「何重にもそれと同じ扉があるんだ。お前の火力じゃあと数時間はかかるだろうな。」
刀の男は呆れたように言う。
A「いつの間に?お前…警察の者か?上層の連中はどうした?…まあいい、一人なら好都合だ。お前を殺して扉をぶっ壊して資源を持ち帰る!お前は引き続き作業してろ。俺一人で十分、こいつからは”力”を感じない。」
??「そうだな、お前らの言う”力”は持っていない。」
Aは銃を懐から出し構え、迷うことなく引き金を引いた。
一連の動作に無駄がなく洗練されており、間違いなく軍人であることがうかがえる。
放たれた銃弾はまっすぐ刀の男のもとへ…いや、そこに刀の男の姿はなかった。
と思うと、ガンと鉄と鉄のぶつかり合うような音が響いた。
刀の男は日本刀で、しかし、Aはなんとその右腕で刀を受け止めていた。
??「やはり”土”か…少し面倒だ。」
Aが左腕で拳を繰り出す。岩をも穿ちそうな威力の拳、当たればひとたまりもない。
しかし、刀の男には当たらない。
Aは流れるように右足で蹴りを、当たらない。
先ほど放った蹴りの遠心力を利用し、回転しながら左足で裏蹴りを…当たらない。
一連の動作の後、体の隙間から発砲、当たらない。
一見すれば当たっているように見えるほどすれすれで躱していた。
刀の男が大剣の柄に手をかけ、振りかぶる。
剣先は音速を超える速度でAに迫り、Aが再び右腕で受け…られない。
Aの右腕が吹き飛ぶ。
A「ぬっ!!」
両者距離をとる。
ここまで、刹那のできごと。
Aは自分が強者であることを自覚していた。それゆえに焦る。
A「…お前…聞いたことがあるぞ…最強の無能力者の警察官がいると…名は…黒田二色!!」
二色「自己紹介がいるか?対能力者犯罪取り締まり係所属巡査部長黒田二色だ。」
Aの腕が土のような物質で形成されていく。先ほどの会話は時間稼ぎのようだった。
一度は右腕を失ったとはいえ非常に冷静である。さすがは軍人といったところか。
A「おいB、お前も戦え、さっさとやっちまわねえと、逃げることもできねぇ。」
B「くっそ、もう計画もくそもねえ!!こいつ殺してずらかるぞ!!!」
二色「勝手に話を進めるな。お前らはここで俺に捕まる。もう逃げられないっ!」
二色が地面を蹴り、一気に距離を詰める。
B「くらいやがれっ!!」
Bが腕から炎を噴射。広範囲の炎の前に二色は近づくことができない。
その後、炎の中からAが追撃を仕掛けてきた。
その姿は異様、全身土に覆われ炎など意に返さないといった様子だ。
Bは炎の範囲をしぼめ、二色を炎により追撃。Aは相変わらず的確かつ鋭い攻撃を繰り出す。
攻撃をかわしつつ二色は思考する。
二色(やっかいだな…炎で行動を制限されながら近接兵と戦闘か…)
二色は方針を決めたようで、口を開いた。
二色「なあ、お前”丈夫”だろ?」
A「?」
Aは二色がなにを確認したのか分からず、少し困惑した。もちろん攻撃の手は止まらない。
二色「60%くらいか…」
AとBの攻撃の隙を見出し、二色の回し蹴り。少し様子が違う。Aはその違和感を感じ取った。Aもまた、強者。しかし…
…
Bは唖然としている。Aははるか遠くの壁まで吹き飛んでいた。ぶつかったのであろう壁はひび割れ一部砕け散っていた。
Aが纏っていた土はひび割れ粉々に散乱してた。
意識は刈り取られており、右腕はあり得ない方向に折れ曲がっていた。
二色「60はちとやりすぎたか。」
B「ば…化け物…」
二色「どっちが化け物だよ。手から炎だの土だの出しやがって。」
二色がBに歩み寄る。
B「ひぃい!来ないでくれ!!俺は近接兵じゃないんだ!一人じゃなにもできねえよ!!抵抗しねえから命だけは!!」
二色「殺すつもりなんてない。どこの手のものかは知らんが洗いざらい話してもらうぞ。」
二色は素早くBに手錠を掛けた。
二色「7月30日午前4時05分マル被確保。一人は無傷、一人は…重体、救急案件か?面倒だ…」
けだるそうな様子で二色は誰かと連絡を取っている。
B「この手錠本当に能力が使えなくなるんだな…上層の連中はどうした?」
二色「…捜査官が単独で動くと思うか?軍人上がりなら分かるだろ?当然、組織で動いてる。」
B「ちっ、完全にお手上げ状態かよ…政府の犬が…能力者の犯罪組織と戦い続けていつか死にやがれ!!」
二色「…ま、いい死に方はできないだろうな。死ぬまでは気楽にやってくよ。」
B「くそったれ…」
そう、この世界は今や銃火器や兵器よりも能力こそ最大の武器なのである。
能力を使った犯罪を専門的に取り扱っている部署がある。対能力者犯罪取り締まり係。
これは、対能力者犯罪取り締まり係の捜査官たちが世界の闇に立ち向かう物語なのである。
*ネタバレ要素を含みます。
初めまして。私、東雲晋と申します。
初めての作品ということもあり至らない点はご容赦くださいませ。
さて、本作の主人公ですが、2話より登場致します。
生真面目な性格で23歳になったばかりの女の子です。(年齢は変更するかも。)
彼女の成長の物語でもあるので、どうか温かい目で彼女を見てあげてください。
また、本作は中盤までは情勢はあまり動かさない予定です。飽くまで予定ですけどね(笑)
大変長編になる予定ですので、気長にお付き合いいただければと思います。