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兄弟を作ろう!

作者: しいたけ

 一人っ子の俺は、他の友達のお兄ちゃんや弟の存在がとても羨ましかった。


 共に同じご飯を食べ、共に遊び、共にお風呂に入り、共に布団で寝る。


 幼少期に母親を亡くし、忙しなく働く父のお陰で俺は、昔から何をするにも一人ぼっちだった……。一度親父に『弟が欲しい』とせがんだ事があったが苦笑いで誤魔化され相手にされなかった。


 まあ、父のお陰でこうやって二十歳になれた事には感謝している。




「お待たせ」

「何だか緊張してきたわ……私、髪型とか服装とか変じゃないわよね?」

「……大丈夫。さあ行こうか…………」


 今日は父に婚約者を紹介する日だ。付き合って半年になる同い年の彼女。きっかけは営業先の受付。俺の一目惚れだった。そこからとんとん拍子に話が進み今に至るって訳さ。

 真夏の暑さの中遠路遥々と来てくれた彼女には感謝している。



 自分の家に入るだけなのに、彼女と一緒だと何だか俺も緊張してきたな……。


「ただいまー」

「お、お邪魔致します……」


 彼女はぎこちない動きで我が家の敷居を跨いだ。


 そして父が現れ、彼女を一目見るなり動きが止まり固まってしまった……。


「親父?」

「……あ、ああ、すまない。彼女さんが母さんの若い頃に瓜二つだったから……」

 親父は照れながら彼女を迎え入れてくれた。


 親子で女性の趣味は似るのだろうか?俺は母親の顔を殆ど覚えておらず、写真に写るのが嫌いだった為、記念撮影等も殆ど残っていない。唯一残っているのが結婚式の時の一枚だけである。それも親父が持っていて俺は見たことが無い……。


 親父と彼女は、最初こそちぐはぐだったが徐々に慣れ、最後の方は和やかに談話していた。俺としてはこの家で彼女と生活したいと思っていたので、親父と意気投合してくれたのはありがたい事である。安月給は家を借りる余裕すら無い…………。




 彼女を駅まで見送り、俺は親父に感想を聞いた。


「本当に母さんの若い頃にそっくりだ。声や仕草、服の趣味まで……」

「ふぅん……」



 そして俺は彼女と結婚した。


 貯金無しの新人の俺じゃあ式は挙げれなかったが、頑張ってそこそこ豪華な指輪をあげた。彼女は泣いて喜んでいた。


 俺の家に親父と3人で住むことに関して、彼女は快く受け入れてくれた。マイホームとか、せめて借家とかアパートとかで二人暮らしが出来ないのは、とても申し訳なく思っている。仕事が順調にいけば給料も上がる。そしたらマイホームを建てよう!俺はそう心に誓い毎日を過ごしていた。



 金曜日の夜、親父が晩酌をし寝静まった後、ようやく俺達の夜が始まる。

「今週もお疲れさま♡」

 妻の甘い言葉で始まり、俺が心ゆくまで妻を抱く。


 しかし、この日は襖の裏に誰かの気配を感じていた。

 俺は気のせいかと思いいつも通り妻を愛したが、気配が無くなった後の襖の裏と畳には、確かな温もりが残されていた……。



 実に悪魔的な閃きだと思うかもしれない。誰しも好奇心から犯罪的な発想をする物だ。だが理性や道徳観がそれを躊躇わせる。だが俺はその時、試さずにはいられない衝動にかられていた。

 何故なら兄弟の存在は子どもの頃からの悲願だったから…………。



 次の金曜日、俺は出張と偽って家に帰らなかった。

 今ごろは嫁が親父に酌をしているだろう。たまにはしてやってくれと、俺がお願いしたからだ。


 そして俺は知っている。親父は飲み過ぎると人が変わり抑えが効かなくなるという事を。昔から飲み過ぎて店でよく喧嘩をしていたからな。





 暑い夏はビールに限る!特に息子の嫁さんが注いでくれたビールは尚美味い!!

「お義父さん、もう一杯如何ですか?」

 彼女の首筋から滴る汗が、薄手のブラウスへと染みこんでゆく……。俺は正直に言うと激しく興奮していた。


 俺の目の前にいるのは『息子の嫁』である。しかし、その見た目や細部に至る仕草は完全に『息子の母』つまり『俺の嫁』と同じなのだ!!


 俺はやり切れない想いを胸の奥へ乱雑に押し込むと、勢い良くビールを流し込んだ。普段以上に飲んでいるせいか、俺の思考は鈍っていて視界も覚束ないでいた。


「あらあら、お義父さん?お休みになるならお布団へ行きましょうか?」

 俺は情けなくも息子の嫁さんの肩を借りながら布団へと向かった。密着した時の汗の匂い、華奢な腕、そして触り心地……全てが遠き日の思い出と重なった……。


「よいしょ……っと」

 そしてその時が訪れる。


 屈んだ息子の嫁の胸元が露わになり、俺の視界に究極の誘惑が飛び込んできた……。


 気が付けば俺は息子の嫁をの服を剥いでいた!


「ああ!お義父さん!?お止めになって!!」

 抗う女の声が俺の理性をより狂わせた!

 もう俺は如何なる事があっても止まらない!

 今だけは『俺の嫁』だ!!


 啜り泣く嫁に口づけをし、零れる涙を荒々しく舐め取る。

 久し振りの女の味に俺の心はどん底まで狂い果てた…………。






 次の日俺が家へと帰ると、家の様子はあからさまにおかしかった。

 嫁は努めて明るく振る舞うが、どう見てもぎこちない。親父に至ってはまるで口を開かず、ずっと下を向いている。


 その日の夜、珍しく嫁の方から誘ってきた。

「あなた…………」

 俺は何も言わず嫁を抱いた。きっと嫁の頭の中に昨日の事がフラッシュバックしている事だろう……。誰にも、勿論俺にも言えず、嫁は今まさに昨日の痕跡を消そうとしているのだ……。


「……今日は……生で欲しいの……」

 薄暗い部屋で贖罪を懇願する嫁に、俺は分からない様に避妊具を付けた……。




 月日が経ち、嫁は妊娠している事が発覚した。

 当然、親父の子だろう……。


 つまり俺の兄弟になるわけだな。


 『兄ちゃん』と呼ばれる日まで、今から待ち遠しくて溜まらない。


 弟か妹か。生まれるまでの楽しみにしておこう……。

 もう少しの辛抱だ……。

 念願の兄弟まで…………。

読んで頂きまして、ありがとうございました!

感想等、節にお待ちしております!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] そう言うことだったんですね! なるほど、これは怖い。 兄弟のためにあえて嫁を置き去りに……。 嫁も証拠隠滅を図ろうとすると言うのも、親子に波風を立たせないための優しさなのか? 霊的ではない…
感想一覧
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