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奏者が紡ぐは魔法の音色  作者: 翡翠
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3話 異世界到着

第3話


人1人が生活するには十分な大きさの家は紙とよくわからない道具で溢れかえっており、手狭に感じる。乱雑に積まれた紙の束、幾つかは崩れ床に散らばっているそ内の1枚を手に取り目を走らせると魔法のことが書き殴ったように書かれている。当然日本語ではなくアルファベットのような文字で初めて見るのにすんなりと読めた。軽く見て回り家主から聞いていたとおりだと確信する。どうやらドゥイリオの家で間違いないようだ。

幼女神により異世界に転移した場所はドゥイリオの家だ。因みにドゥイリオは既に死亡しているしどうやらその身体ごと代償としていたようで死体は残っていない。ならばその財産を奏斗に譲ろうとドゥイリオから言いだしたのだ。幼女神も行き成り街中や草原に転移させるのは気が咎めてたので直ぐさま賛成した。幼女神は気を利かせて奏斗の身体を通常より頑丈にしたがそれでも危険なのは変わりないからだ

奏斗はドゥイリオからの頼み事を澄まそうと聞いていた物を探して壁に手を添わせる。すると1カ所だけ石のように固くツルツルした感触を見つけた。そして石に魔力を注ぎ込む。すると石を中心に1本線が走りまるで自動ドアのように開き、地下に続く階段が現れた。奥の方は暗くて見えない

「隠し扉って定番だけど実際に見ると感動するな~。魔法も問題なく使えるみたいだし」

魔法の引き継ぎをするとは、その魔法に関する知識も当然ながら入っていた。頭の中には幾つもの魔法が浮かんでおり、どれか1つを思い浮かべるとそれに関する情報が流れてくる。しかし頭で理解していても実際にやってみたら想像と違うことなどよくある話。少しだけ不安だったのだ

「え~っと…『灯り』」

奏斗が唱えた瞬間、真っ暗だった地下への階段がまるで電気をつけたみたいに明るくなった。どうやら思ったよりも階段は長くはないらしく、少し降りた先に床が見えた

地下は高校の教室くらいの大きさの空間が広がっていた。その真ん中に大きな魔法陣が描かれており、その近くに無造作に置かれた紙には異世界召喚に関する考察が書き殴ったように書かれている。上で見た文字と同じ癖があるからドゥイリオの文字で間違いない

奏斗が頼まれたのはドゥイリオが編み出した魔法に関する全てをこの世から消すこと。

ドゥイリオの望みは人生を掛けて追求し続けた魔法を誰かに受け継いで貰うこと。それは1人だけだと決めていた。もし、ドゥイリオの知識が心ないモノに渡った場合何に利用させるか分かったものではない。ドゥイリオが引き籠もっていたのはこういう理由もあった。奏斗のお陰で望みを叶えた今、残しておく気は皆無であった。幼女神もドゥイリオの研究所を見た誰かが彼のような事をしない保証はないため破棄するべきだと主張

奏斗はまず魔法陣を何とかすることにした。近付いてみると陣の真ん中に光る宝石が見えた。足りない魔力を補助する目的で使用したモノだろう

(多分、あの宝石を壊せばこの魔法陣は維持出来ずに消えると思うけど)

奏斗は陣に足を踏み入れ宝石に手を添える。掌に収まるサイズの微かな光を放つソレを見て少し考えた後、宝石を握り締め力を込める。パキンという軽い音をたてながら粉々になったと同時に魔法陣は掻き消えた。魔法を使わなかったのは魔力を感じ取って発動しないとも限らないからだ


次に為べきはあの紙の束を破棄すること。地下に家中に散らばっていた研究書と思われる紙の束を集め暖炉の中に突っ込む。魔法で火をつけようかと思ったが、加減を間違えて家が燃えては大変なので隣にあった火付け石をカチカチとならす。初めてだったが要領の良い奏斗はすぐにコツを掴んだ。炎が燃えるのを眺めながら奏斗はこれからのことを考える

(取り敢えずはこの家から出て街とかあるならそこを目指そうかな…こういう時は冒険者になっておくと便利だろうし。その前に魔法の練習しないとだから数日はこの家に居るけど。ご飯は近くに川とかあったら魚釣って、出来れば肉も欲しいけど捌き方は分からないしな~)

色々と懸念はあるが異世界転移なんて滅多にない機会だ。楽しまなくては勿体ない

「まぁ何とかなるかな~」

相変わらずマイペースな奏斗はのんびりと笑う。一段落したからか妙に眠くなり欠伸をするとそのまま眠ってしまった



どうやらこの家は森の中にあるらしく何処をどう見渡しても木々ばかり

「『索敵』」

『索敵』とは名前の通り周囲を調べる魔法だ。本来なら決められた範囲─例えば半径20メートル等─を設定するのだがこの森がどれ程の大きさなのか見当もつかないので大雑把に森全体に設定。そして対象は生き物。予想通りだがこの森は大きく奏斗以外の人間、若しくは対話可能な生命体の反応はない。人間の手が加えられていない自然なだけあって動物は結構居るようだ。しかしその動物の大雑把な数と位置は分かってもその状態までは分からない。続いて奏斗はソナーのよう波として辺り(半径10メートル程)に放つ。するとその範囲に居た動物の心音、息遣い、健康状態まで手に取るように分かった。恐らくこれはトレースに近いのだと思う。基本的には機械などに行うものだがこれは色々と使えそうだ



家から少し歩いたところに川はあるのは既に分かっている。

「『転移』……?」

『転移』で川まで行こうと思ったが魔法は発動しない。不思議に思いつつそう遠くないので歩くことにした

(行ったことある場所じゃないと駄目なのかな?)


耳をすませると遠くから上から下に落ちる水の音がする。遥か遠くの音など常人では聞こえるはずもないが奏斗の聴覚は問題なくその音を拾っていた。川の水はすんでおり可笑しな匂いもしない、試しに毒物反応がないか調べてみても問題はない。よく冷えた水は飲み慣れた水道水よりも美味しかった

奏斗はトレースで魚が何処にいるのかを把握しつつ魚を二、三匹囲うように水魔法を展開し上に上げる。水の球体の中では状況が理解出来てないのか魚が悠々と泳いでいた。生きている魚を間近で見るのは初めてだからか将又この世界特有の魚なのか、何の魚かは分からない。


その辺に落ちていた木の枝を削って魚に刺す棒を作ってみた。残りの枝は1カ所に集めて薪にする。奏斗が念じるとパッと火がついた。燃えすぎないようにと思っていたからかその火は小さい。少しずつ火を大きくして調整し、棒を刺した魚を周りに配置する

「うま~」

とれたての魚は新鮮で程よく脂がのっていて予想以上に美味しい。やはり食べ物は出来たてほやほやに限る


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