Raffica'Sキッチン
☆~ラフィッカ特製ロックボアの燻製肉~☆
材料:ロックボアの肉
塩
胡椒
シナモン
コリアンダーシード
クミン
クローブ
これにセージやタイムやローズマリーなど加えると更においしくなるそうなのだがそれらが入っていたであろう麻袋の中は完全に風化してしまっていた。残念。
1、ロックボアの肉を5mmくらいの薄さにスライスします。
できるだけ脂身の部分は取り除いて、赤身の部分がおススメだよ。
2、大きくて肉付きのいい足部分の肉はそのまま燻製にします。
香辛料がよく馴染むようにナイフや串などでざくざくと刺しておきます。
2、香辛料をつぶしながら混ぜ合わせオリジナルクレイジーソルトをつくります。
分量は適量、直感と経験で。
3、2で作ったオリジナルクレイジーソルトをスライスしたロックボアの肉にまぶしてよく揉みこみま す。
4、冷暗所で一日寝かせます。
5、水気をよく切り網などの風通しのよいところに重ならないように並べて風魔法で乾燥します。
6、しばらく風乾して余分な水分を抜いたら燻製器の中に入れて燻せば完成です。
燻製に使う木の種類によって出来上がりの香りが違うんだよ。
本当はこれから燻製していくのだがこの前の状態でもある程度乾燥したものなら食べられるらしい。
基本は保存食ということだが味見というのも大事だ。
出来たばかりの乾燥肉を一ついただいてみる。
出来立てということでいわゆる市販のビーフジャーキーなどと比べるとソフトな感じだ。
もうしばらく置いておくと完全に乾いてカチカチになるらしい。
うまい。
乾燥肉と言うだけあって先日食べた猪の心臓のようなジューシーさはもちろん無いのだが
噛めば噛むほど奥から味が出てくる感じだ。
香辛料もしっかりと効いており胡椒の風味とシナモンの甘い香りがいい塩梅にブレンドされている。
これは、ウィスキーがほしくなるな…!
「では次はいよいよ燻製しちゃいましょう!」
こちらも出来立ての干し肉を頬張りその出来栄えにご満悦な様子のラフィッカ。
むぐむぐと乾燥肉を食べつつ早速燻製作りの準備をするようだ。
燻製には密閉性が高い容器が必要とのことで地下倉庫の中にあった樽に細工をして使うことにした。
樽を地下から引っ張り出し小川で中をよく洗い、樽の底を切り抜き中に肉が吊るせるように加工した。
あとは樽の下で木を燃やしながら(出来るだけ煙が出て火がおきないように)肉を燻せば完成だ。
この燻製に使う木もラフィッカには拘りがあるらしく近くの山でお目当ての木を探してきたようだ。
「胡桃の木があったからね!秋になれば胡桃の実も食べられると思うよ!」
と胡桃の枯れ枝を大量に抱えながらラフィッカはうれしそうだ。
手にした鉈で手早く胡桃の枝を細かくしていく。
燻製はどうしても煙が大量に出てしまうので屋外でやることになった。
樽で作った燻製器をセットし胡桃のチップに火をつけ燻していく。
時々炎上してしまうらしく火が立つとラフィッカは木の棒でぺしぺしたたいてその都度消していた。
中々気が抜けない作業のようだ。
この状態で何時間も燻し続けなければならないらしい。
時々ラフィッカと交代しながら、ラフィッカが火の番をしている間俺は畑の様子を見て回る。
じゃがいも達は今日も元気だ。
20平米、およそ俺が前の世界で一人暮らしをしていた部屋ほどの広さの面積に整然とじゃがいも達が植わっていた。
あと10平米ほど開墾しているのだがそこにはまだ何も植えられていない。
これから植えるのだ。
地下倉庫から発見した香辛料。
胡椒などは確か種だったはずだ。
俺の農業適正S+の力があれば栽培も可能かもしれない。
七味唐辛子に入っている大麻が発芽したという話も聞いたことがある。
…よい子は絶対に真似をしないように。
ともかく
俺は拝借した香辛料たちを畑に植えていく。
胡椒
コリアンダー
クミン
まぁこれらは駄目で元々だ。
それより本命は地下倉庫に眠っていた他のものだった。
直径2mmほどの赤茶色のまるっこい種。
直径3mmほどの白くて平べったい種。
米粒のような形と大きさの茶色い種。
はじめはこれも香辛料の一種なのかと思ったがラフィッカは匂いをくんくんと嗅いで
「違うと思う、茶色いのは形がクミンそっくりだけど」
と仰った。
これらは他の香辛料があった棚とは違う場所にあったし何か他の農作物の種である可能性が高いと思う。
というわけで早速これらの種も植えてみることにする。
詳しい種のまき方などはわからないのでとりあえず指で土にぐりぐりと1cmほど穴を空け2、3粒づつ撒いていく。
3つの種類がごっちゃにならないように1畝に1種類ずつ撒いた。
土をかぶせ、元気に育てよと祈りを込めながらたっぷりと水をやる。
◆◇◆
そしてそれから約一週間後。
そこから生えてきたものを見て、改めて俺はここが異世界であることを実感することになった。この世界のじゃがいもも、多少角が生えていたりもしたが動物も、耳と尻尾が生えている少女も、思えばそれらはそこまで現実に”ありえない”と思えるものではなかった。
あくまで異世界のファンタジーとしてそれは”あってもおかしくないもの”であったのだ。
「なん…だ、此れは……?」
そこから生えてきたそれは、この異世界であっても更に”ありえない”ものだった。
呆然としながらも、”それ”を引き抜く。
それは 野菜というにはあまりにも金属的すぎた
一様に平らで 鋭く 鈍く輝き そして精巧把過ぎた
それは 正に”剣”であった
そんな”剣”が整然と。
畑の畝に沿って一列に生えてきていた―――