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パッシブスキル


 ここ数日は俺は完全に駄目になっていた。


 というのもラフィッカさんが過保護モードになってしまったのだ。


 朝畑に行こうとするとラフィッカにもう畑に水はあげておきましたからと言われ、料理を作ろうとすると私が作りますと言われ果ては夜は冷えますからと二階の居間のかまどの側に一階からテントを移住させられた。


 どうやら自分の風魔法の影響で俺が傷を負ってしまったのを相当気に病んでいるようだった。


 ちなみにここで俺が負った切り傷はその後ラフィッカにもらった切り傷に効くらしい塗り薬を塗ったら翌日には傷跡も残らず完治していた。

 年々傷の治りが遅くなっていくなとしみじみと加齢を実感しているおっさんにとっては信じられないことだった。

 ぶつけた後頭部もその後特に異常は無い。



 しかしこの異世界についてから3週間もたったであろうか。

 段々と農業生活が板についてきて身体を動かしていないと返ってなんだか落ち着かない。


「もう大丈夫、体調も万全だし傷もこの通りラフィッカの薬のおかげで完全に治ったしな。

そろそろ畑もの様子も見ておきたいし」


 というわけでまだ若干心配そうなラフィッカの背を押すように外に出た。




 しばらく引きこもっていたので太陽光のまぶしさに目を細める。


 久々の畑だ。


 頬をなでる心地よい風と土の匂いを懐かしいとすら感じた。



 畑の様子に特に変わったところは無いようだ。


 じゃがいも達も今日もかわらず元気だ。そろそろ収穫してもいいかもしれない。

 そういえば種から育てたDAIKONの方が生育が早い気がする…。


 そのDAIKONたちは次の種を取るためすべては収穫せずに少し残してある。

 いくら剣のように見えてもちゃんとした食べれる野菜だ。

 植物であるのならきっと花も種も出来だろう。

 と思う。


「こっちにも種を蒔いたんだよね?」


「んー、そうなんだけどなー…」


 しかしDAIKONと共に植えた他の種たちからはまだ芽が出ていない。

 じゃがいもとDAIKONの生育は順調だったのだが…


 ここ数日は雨が降っていなかったのでラフィッカと共に小川から水を汲んできて畑に水を撒く。


 やはりはじめて農作物を育てているのだ。

 いくら農業適正S+の技能があったとしてもすべてが順調とはいかないのかもしれない。


 そんなことを思いながらお前達も元気に育ってくれよとぽんぽんと土をたたく。


 すると


 にょきっ!


 芽が生えてきた。


「え?」

「は?」


 その瞬間を見ていたらしいラフィッカも俺と同時につい間の抜けた声を上げてしまう。

 見ると種を蒔いた畝にそって一列、ちいさなかわいらしい芽がぴょこぴょこと生えてきている。


「えっと・・・魔法・・・かな?」

「いや、たぶん違う・・・と思う」


 土魔法【隆土】を使えば確かにあらかじめ出ていた芽をこのように急に生えてきたように見せることもあるは可能かもしれない。

 だが俺は魔法を使ってないし、何よりそんなことする意味も無い。

 となると恐らく…


 実際俺もまだよくわかっていない、単に野菜が元気に早く育つ能力ぐらいにしか思っていなかったのだが。

 俺はラフィッカに農業適正S+とそのパッシブスキル【土地潜在能力向上】の能力をしどろもどろに説明する。


「えーっと、つまりイクトはすごい農家さんってことかな…?」


 いくらすごい農家さんでもこんな芸当は出来ないと思う。


「ま、まぁそういうことだな」


 そういうことにしておいた。

 俺自身もこの技能とパッシブスキルについてはまだ謎なことが多い。いきなり畑から”剣”が生えてきたりもするしな。

 何にせよ農作物たちが早く育つのはいいことだ。

俺とラフィッカは生えてきた新芽たちに改めて水をやり、畑を後にしたのだった。



 ◆◇◆



 所変わって目の前には完全に崩壊してしまったトイレの小屋跡。

 真ん中に穴が開いた形状で膝の高さほどに石を組まれたトイレ(便器)が野ざらしとなっていた。


 俺の農業スキルS+を持ってしても流石に小屋を生やせというのは無理な相談だろう。

 畑に家は生えない。

 剣っぽいものは生えてきたがあくまでアレはああいう見た目のDAIKONである。

 よく人の顔に見えるじゃがいもや人の形に見える大根などが話題になるがそれと似たようなものだと思う。

 この世界の自然の奇跡はもっと精巧なのである。


 というわけでトイレの壁の修復は己の手でしなければならない。

 俺の勘違いの妄想によるラフィッカの風魔法の暴走によって元のトイレの壁となっていた木材はばらばらに吹き飛んでいた。

…これではもう再利用は出来そうにないな。



 となると。。。



 この廃村には俺達が住んでいる比較的ましなボロ家(最初に比べるとだいぶ片付きはした)のほかに完全倒壊してしまっていた家が何軒かあった。


 そこから廃材を貰って来ることにする。


 大工道具は家の倉庫の中にあったな。


 金槌、鋸、釘・・・あ、なんかでっかいハンマーもある!かっこいい!


 とりあえず必要そうなものを全部持って行こう。



 ラフィッカにも手伝ってもらい廃材と道具を持ってトイレ小屋建設予定地に到着。


 まぁ小屋を作るとはいっても人が住む家を作るわけではない、雨露をしのげる程度のあれば何とかできるだろう。

 元々掘っ立て小屋のような感じだったし。


 イメージとしては四隅に柱を立て、横木を渡して柱を固定し、壁をはり、屋根をつけるといった感じだ。

 数日の引きこもり生活の間に脳内でイメージは完成させていた。



「【落土】!」


 久々の魔法の感覚。

 俺は土魔法を使って柱が立つ四隅の地面に穴を掘っていく。


 その中に柱を立てるのだが流石にこのままではぐらぐらするので多少は地面に打ち込まなければならないらしい。

 ラフィッカに柱を押さえていてもらい上からでかいハンマーで叩くことにする。



「【隆土】!!」


 俺は仁王立ちになり某騎士王のように両手をハンマーの上に乗せ、土を隆起させる魔法を唱える!

 ずもももっと地面の隆起とともに俺自身も持ち上げられる。

 俺自身の体重も加わったせいか相当疲れたが。

 おお…!かっこいい…!

 思わすドヤ顔になりそのポーズのまましばらく感動に立ち尽くす。



「……何してるの?」



 ラフィッカさんが柱を支えたまま早くしろといった表情で言ってきた。

…どうやらこのロマンは女の子には通じなかったようだ。




 そんなこんなで無事4本の柱を立て終える、まだ多少ぐらぐらしているが壁をつければ安定するだろう。


 鋸で廃材を柱の間隔に切りそろえて壁材としていく。

 柱も壁の材も元々は家だった廃材をそのまま使っているのでかなり楽だ。

 ちなみに扉は廃屋の玄関の扉が残っていたのでそのまま使うことにした。

 


 最後は屋根を斜めにつけて無事完成だ。何回か強めに押してみてもびくともしなかったので大丈夫だろう。

 見た目は中々立派な建物だ。

 小屋の小ささに比べて扉だけがやたらと存在感を放っていた。



 ラフィッカと一緒に作業したので昼前に作業を始めてなんとか日が沈む前には完成した。

トイレは日常的に使うものだからな。

 早くできたことは喜ばしいことだ。

 トイレ大国日本に住んでいたものとしては綺麗なトイレというのは離れがたい文明だっのだ。


 たとえ外見だけだとしても

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