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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無題終末都市

作者: 合成獣

───────これは僕の始まりだ。

───────これは私の終末だ。

───────始まってしまったら終わりまで一直線

───────終わってしまえば消滅まで一直線

───────これは僕が理想を叶える物語

───────これは私の現実が終わる物語



───────ただ、何かを失う物語


2017年8月10日午後1時30分


ある世界は終わりを告げた。

それは、劇的なものではなく。それは、映画のような素晴らしい終わりでもない。けれどそれは、ただゆっくり終わりを迎えるようなそんなものでもない。

ただ、唐突にラジオから世界が終わるという事を言われただけ。これを聞いたものは嘘だと決めつけた。別にこの終わりを止める方法なんて存在していたわけではないが。止めることが出来たところで少し速度が緩むだけ。速歩きが歩きに変わるといったところだろう。

さて、前書きはこの程度で充分だろう。ならこれからは世界が終わるそれまでの過程を書くとしよう。華やかでもなければ美しくもない世界の終わりを迎える過程を出来るだけそのまま書いていく。


これは一人の少年と少女が、終末を迎える物語


2016年8月10日午後1時30分


一人の少年が闇のなかで嘆いていた。最愛の妹……だったものを抱いて。辺りを見れば二人の男の死体が転がっている。そう、妹の死因は簡単だ、家に居たら強盗が入ってきて殺された、それだけ。実に簡単でよくあることだ。しかし、少年は仕方がないとは思わなかった。少年は人間を恨んだ。二人の男が強盗をするまでにいたらせた人間を全て調べ殺してやると誓った。それが少年の始まりだった。


一人の少女が光のなかで微笑んでいた。過ぎ去った思い出を抱いて。辺りを見れば数えきれない程の人に囲まれながら、微笑んでいる。理由は簡単だ、少女は来年のこの時間に終わるのだ。それは決定された結末で、少女は仕方がないと思っている。だからこれまでの楽しかった思い出を抱きながらいつか来る終末に思いを馳せる。少女は笑顔で死ぬと誓った。それが少女の結末だ。


少年は関係した人間を半分殺した。そして少年は思った。終わりはどこだ、と僕が理想を叶えて終われるのは何時なんだと、そこにはいない誰かに聞いた。知っている、答えはないと、終わりはないと、そんなこと始めから知っている。けれど始まったのなら終わりまで一直線だ。少年にはもうその道しか残されていなかった。だから少年は存在しない終わりを信じ終わりまで一直線に進んでいく。


少女の残り時間が半分を切った。そして少女は思った。終わればどうなるのだろう、と私の現実が始まるのは何時なのだろうと、そこにはいない誰かに聞いた。分かっていた、答えは返ってこないと、現実はないと、そんなことだろうと思っていた。だから終わってしまえば消滅まで一直線だ。少女にはもう消滅しか残されていなかった。だから少女はいつかくる始まりに希望を寄せる。


少年は結末を見ていた。光に包まれ微笑んでいる少女の姿を見ていた。何故、その少女に辿り着いてしまったのだろうか。何故、妹と瓜二つの少女が最後の一人なのだろうか。


少女は終末を見ている。闇に沈んだような顔をしている少年を見ている。どうして、この少年は私に辿り着いたのだろうか。何故、兄と瓜二つの少年が私の最後を見届けているのだろうか。



その時、ラジオからこのような声が流れた。「唐突だが世界は終わる。だが、これは止められない。ただ、決まっていたことなのだ。だから諦めて残りの時間を過ごして欲しい」

そんな声が流れた。ラジオはそれ以上なにも言わず世界の機能が止まり、終わりが始まった事を宣言した。


少年は笑っていた。妹が死んで以来したことのない穏やかな笑顔だった。そして少年はこう言った

「やっぱり、終わりはあるじゃねぇか」


少女は泣いていた。自分の終わりを知って以来したこともない程の嘆きだった。そして少女はこう言った

「やっぱり消えるのは怖いよ」


少年はゆっくりとナイフを少女に突き刺していく


少女はゆっくりと刺されているナイフを見ている


少年は自らの終わりを笑顔で迎えている


少女は自らの消滅を泣きながら迎えている


そして、終わりは迎えられる。二人を祝福するように、二人を馬鹿にするように。当たり前に世界は機能を終わらせる。そこで生きていた生物は全ての機能が終わった。


2017年8月10日午後1時30分


少年は終わりを迎えた。誓いを成し遂げて笑顔で終末を迎えた。


少女は消滅を迎えた。誓いを成し遂げないまま泣きながら終末を迎えた。


二人は誓いを失った。そして、終末を獲た。結末を獲た。それが全く違うものであっても、それが望まないものであっても、世界はそれが結末だ。


2017年8月11日午後1時30分


カチリ、カチリ、と時計は虚しく時を刻む。

ただ、当たり前のように何もなかったように何もない世界で時間を刻む

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