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同窓会で――君に会いたい  作者: 矮鶏ぽろ
3/7

生ビール

周りの席からは楽しそうな笑い声が聞こえる。決して楽しくないわけではないのだが……。

 生ビール


 他の席からワ~っと盛り上がる声が聞こえる度に、そわそわした気分になる。

 その中に女性の声が混じっていたりすると、思わずビールをがぶ飲みしてしまう。他の二人は全然そんな素振りすらなく、おでんを突いたり、スマホをいじったり、俺をいじったりしている……。

「宮前は結婚しないわけ?」

「ああ。別に興味ないよ」

 ニヤニヤしながら聞いてくるのがハラ立つ。

「じゃあ彼女は?」


 聞かれたくないこところをズカズカ聞いてくる。

 だから今まで同窓会になんか来たくなかったんだ――。


「いたけど別れた」

「おおー! それっていつの話だ?」

「忘れた――!」

 またビールを一気に傾ける。

 ああ、嘘さ! 嘘に決まっている! 察してくれっ!。

「お前、高校の時は結構モテてたのにな」

「なんだって!」

 俺より先に七木が河崎に食い付く!


 俺だって驚きだ! モテていたなんて実感はない――。

「宮前は主将していただろ。後輩から結構モテてたんだぜ」

「嘘を言うな嘘を! 俺なんかより、河崎がダントツでモテてたじゃないか。……彼女もいたし」

 

 河崎は一年の終わり頃から、同い年の(さわ)()由香(ゆか)と付き合っていた。全員が知っている、まさに公認ってやつだった。

 ずっと片思いしかしてこなかった俺にしてみれば、羨ましいことこの上なしだ。

 ただ……、高校を卒業してから河崎と沢江がどうなったのかは知らない。いずれは結婚するんじゃないかと噂もされていたのだが、河崎の結婚式の写真には、沢江由香とは似ても似つかない女性だったのをよく覚えている。


「実は宮前、三年の時、二年の女子に手紙渡されたことあったんだよな~。名前は確か……」

 ……あのことか……俺の事なのによく覚えていやがる……。感心する。

「面治だ! (めん)()(おり)()だ。変わった名前だったから覚えてるだろ?」

「――ええ! 面治が宮前に手紙渡しただって? ちょお、聞いてねーぞ」

 七木は知らなかったようで……ふてくされている。十五年も前の恋話(こいばな)なんてどうでもいいじゃないか、どうでも!

「で、どうしたんだ? もしかして、知らないところで付き合ってたわけ?」

「河崎じゃあるまいし、そんなことするもんか」

 同じ部活内で堂々と付き合えるほど、俺は人間が成長していないさ。今もだけれど……。

「こいつ、手紙を受け取らず、泣かしたんだよな」

「うわ、ひっどお。っていうか、勿体ね~。お化け出るぞ!」

「もう昔の話はいいだろ!」


 ――俺だって、いきなりだったからどうしていいのか分からなかったんだよ。

 それにあの時、近くにいたんだ――。

 ――俺がずっと好きだった、乃中(のなか)美恵(みえ)が見ていたんだ――。



 俺が今日、同窓会に来た本当の目的は、その乃中美恵に会うこと。ただそれだけだったんだ……。



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