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予言

 一方、トウヤたちは……。


「戦いに集中してると思って油断してた。まさかこっちに気づくなんて……」


 早鐘を打つ左胸を押さえつつ、トウヤは冷や汗を滲ませた。


「危ないところだったわね。迂闊うかつに近づくのは危険だわ」

「僕も同意見だ。カイはこのままでは倒せないし、死体を操る能力は強力過ぎる。あいつらの戦いに飛び込んでいくのは命を投げ捨てるのと同じだ」

「でも、だからと言って全く関わらずにもいられないわ。この戦いの行方を見届けておかないと、次の作戦も立てられないもの」

「そっか……」


 トウヤは数秒間床を見つめ、それから意を決してサヨへと向き直った。


「少し怖いけど、監視に徹していれば大丈夫かな?」

「絶対とは言えないけど、無理に参戦しようとさえしなければ問題ないんじゃないかしら?」

「……わかった。行こう」


 トウヤはサヨと共にテレポートで学校の屋上へと戻り、辺りを注意深く見回す。先程よりも警戒を強めてじっくりと確認したことにより、あるものに気がついた。


「委員長、あれ何だろう……?」


 トウヤが指さした先のフェンスに、紙が縛り付けられている。


「罠かもしれないわ。気をつけて!」

「う、うん。でも、誰かへ書き残したメッセージかもしれないし、無視してそれが敵同士でやり取りされるのもしゃくじゃない?」


 そう言ってトウヤはテレポートし、その前まで向かった。


「あ、ちょっと! ……もう!」


 止めようと手を伸ばしかけたが、それよりも先にトウヤは移動してしまう。勝手に行動したトウヤに対して、サヨは頬を膨らませた。


「ごめんごめん。でも、特に問題なさそうだよ? ほら」


 トウヤは紙を広げて見せた。そこには文字が書かれている。


「ええと? ……これは!?」


 そこに書かれていたのは簡潔な文章だった。


『危険! すぐにここから立ち去って! 10分後、9時28分にアキラ襲撃!』


 赤い文字でそう書かれている。

 トウヤは慌てて携帯を確かめた。


「……9時18分。紙に書いてある通りだ! 一体これはどういうことだ!?」

「考えるのは後よ。とにかく、まずは場所を移しましょう」

「そ、そうだね。屋上の様子がわかるように、なるべく近くへ隠れよう」


 トウヤはテレポートを使用し、道路を挟んだ向かいにある建設中のビルへと移動した。


「……ここは」


 サヨは辺りを見回しつつ首を傾げ、それから窓の外を見た。


「もしかして、工事中の?」

「うん。初日に軽く調べておいたんだ。それより、このメッセージって……」

「物体を動かす能力はレイジがすでに使用していたし、変身能力のカオルも既に死んでいるわ」

「でも、死体を操る能力者がそれを使った、とかは?」

「自分がカイに命を狙われている今、そんな余裕があるかしら? それに、私たちがここへ来ることも、アキラが攻め込むこともまるで最初からわかっていたような書き方だわ」

「それってつまり……」

「そう、予知能力よ」


 恐るべきその能力を聞き、数秒間の沈黙が流れた。


「で、でも、だとしたら何で僕らのために?」

「トウヤ君を最後の相手に選ぼうとしているのかもしれないわ。移動先さえ読めてしまえば倒せると踏んでるのよ、きっと」


 トウヤは目を閉じ、思考を巡らせた。


「確かに、自分が勝つための作戦なのかもしれない。けれど……」


 トウヤは一呼吸おき、俯いたまま呟きだした。


「もしそうだとしても、それまでの間は僕の味方でいてくれるなら、それでもいいと思ってる。こんな考え、甘いかな?」

「ダメよ! いつ考えが変わって襲いにくるかわからないわ!」


 即座に猛反発を受け、トウヤは黙り込んでしまう。

 と、その時。


「見て! ドアが開いたわ!」


 サヨは窓の外を指さした。屋上の入り口のドアが開いているが、誰の姿も見えない。


「慎重に様子を窺っているのかな?」

「さあ、わからないわ」

「ここにも何か書き残しがないのかな? 僕たちが来るとわかっていれば……」


 トウヤは辺りを見回し、壁に貼ってある紙を見つけて中身を確認した。


『アキラは透明人間。こちらに気づき、向かっている!』


 それを読んでトウヤは顔が青くなり、サヨへと紙を見せた。


「まずいよ委員長、こっちにアキラが向かっている!」

「逃げましょう! いつどこから襲ってくるのかわからないなんてが悪すぎるわ!」

「う、うん……! ん? 待てよ……?」


 そう言ってサヨの手を取った瞬間、ある考えがトウヤにひらめいた。


「委員長。逃げるのには同意だけど、ここであいつを倒しきっておこうと思う」

「どうやって!?」

「タイチを倒した時のこと、覚えてる?」

「……まさか!」

「そう、今度も建物ごと崩壊させる。けれど、そのためにはあいつを上の階まで誘い込まなければならない。うっかり移動先で鉢合はちあわせたりなんかすれば、気づかない内に一方的にやられてしまう!」


 言いながらトウヤは携帯で時間を確認した。


「9時31分……。屋上から3分もあれば、階段を数段飛ばしながら降りたと仮定した場合、もうビルを上り始めているかもしれない!」

「どうするの? トウヤ君!」

「何か方法が……」


 トウヤは思考をフル回転させ、ある答えに行き着いた。


「そうか……! 透明でも、音までは消せないはず。なら、駆け込んでくればタイミングがわかるし、忍び足でこっちに向かってる場合、少し時間がかかる。だから、もう少し待ってギリギリで1階へ向かおう!」

「わかったわ」


 トウヤは実際に自分がゆっくり上った場合をイメージすることにより、その速度を導き出す。

 そして、数分が経ったところで……。


「今だ!」


 そう叫び、テレポートを発動した。さらにそのままサヨを外へと逃がし、自らは柱を一本ずつ除外してゆく。ビルがきしむ音を立てながら揺れだし、4階にいるアキラは慌てる。


「な、何だこれは!?」


 急いで階段を駆け下りようとするも、揺れのせいで踏み外してしまう。


「く……! 何でだ? 透明人間になれば、最強なはずなのに! このインヴィジブルという能力さえあれば、誰にも反撃されずに無双できるはずじゃなかったのかよ!?」


 アキラの痛烈な叫びが響く中、トウヤは柱をもう一本外すのと同時に脱出した。その直後、轟音と共にビルは崩れ落ちてゆく。


「……委員長」


 トウヤはサヨへと駆け寄った。


「大丈夫? 怪我はない?」

「うん」

「アキラは……ちゃんと倒せた?」

「途中、上の階から声が聞こえてきた。かなり遠くから聞こえてきたから、たぶんもう生きていないと思う」

「そう……。今回もお疲れ様」

「ありがとう。さて、邪魔が入ったけど、カイたちの監視に戻ろう」


 そう言ってトウヤたちは学校の屋上へと向かった。


 一方、その様子はカイにも伝わっていた。


「おやおや、何かな今の音は。誰かさんたちが派手なことをしてくれているようだね。お前、何か知っているでしょ?」


 伝達能力者へと問いかけるも、返事はない。


「相変わらず私のことは眼中になし、ということかな。まあいい、こちらもそろそろ全ての部屋を確認し終わるので、そこで改めて問いただすこととしよう」


 カイは不敵な笑みを浮かべつつ、残りの部屋を全て開け放った。

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