表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/30

動き出す者たち

 一方、その様子を見ていたカイは……。


「これがお前の言っていた私に見せたいものか」


 溜息を吐いた後、能力者へと話しかけた。


「何か不満でも?」

「ああ、大ありだとも。こんな惨劇見せつけようだなんて、悪趣味にも程がある」

「だが、そんなお前もいじめっ子であることには違いない。お前には、人の趣味をとやかく言う資格がないのだ」

「随分な言われようだね。仕方がないじゃないか、オサムに脅されたんだから。それに対して私は賢い選択をしたまでで、それこそお前にとやかく言われる筋合いはない」


 カイは両の手を肩の横まであげ、やれやれとせせら笑った。


「お前は微塵も反省をしていないようだな」

「当然じゃないか。私は極めて合理的な判断をしたに過ぎない。もし次に同じ選択肢を与えられても、私は誰かを犠牲にしてでも逃げ延びるよ」

「そうか……。まあ、私も否定する気はない」

「そりゃあそうだろうとも。だってあんたは、裏でいつも笑って見てた一番の屑だもの。あんたは俺と違って、トウヤをいじめなければならない理由なんかない。なのにいじめた。それはなぜか?」


 能力者は黙り込んだ。


「察するに、お前はいじめを楽しんでいる。いや、それだけならまだ救いようがあるか……。お前はトウヤをいじめるという行為に依存いぞんしている。いや、トウヤをいじめているという状況下の自分へ依存している」

「……さあて、どうだろうな」

誤魔化ごまかしても無駄だ。あんたの行動には奇妙な点が多い。異常なんだよ、あんたの動きは」


 能力者は閉口した。


「まあ、だからと言って私にはこれ以上追及するつもりはない。ただ、お前だって私をとがめる身分じゃないってことだ」

「元よりそのつもりはない」

「ならいい。さて、それじゃあ私もそろそろ行動開始といきますかね」

「オサムは厄介な能力を持っているぞ? 本当に行くのか?」

「ああ。その厄介な敵をこれ以上野放しにできないのでね」

「そうか。なら健闘を祈る」

「邪魔さえしなければそれでいい。もし何かたくらむようなら……わかっているな?」

「心配せずとも、大人しく見守ってやるつもりだ。面白い試合を期待しているよ」

「私は生憎あいにくだが悪趣味ではないのでね、それに応えるのは無理そうだ」


 カイはせせら笑いつつ立ち上がる。

 そして、拠点としていた空き家を出たその時。


「っ!?」


 その左胸へナイフが突き立てられた。しかも、そのナイフを含め敵の姿は一切見えない。

 カイは驚愕のあまり目を見開くが、数秒の後に口元を歪ませた。

 そして……。


「随分なご挨拶じゃないか」


 その見えない腕を瞬時につかんだ。


「押し出されるような感覚があったから、ナイフだけでなくプレイヤーもここに存在していると思ったんだ。それに、物体を操る能力はレイジが使っていたのを見たからね。消去法でもすぐに答えに辿り着ける」

「……何でだ? 何で平気でいられる!?」

「その声はアキラか。どうやらお前は透明人間になったようだね」

「質問に答えろ!」

「おやおや、自分の立場がわかっていないようだ……」


 カイはアキラの腕ごとナイフを引き抜く。


「血がついていない!?」

「ああ、そうだとも」

「確かに深く刺したはずなのに……。お前の能力によるものだな!?」

「ご名答。私は不死の能力者に選ばれてね。能力名はイモータルだ」

「そんなバカな!?」


 アキラは思わず叫んだ。


「いくら何でもそこまで強すぎる能力、あるはずがない! そもそも、それじゃあゲームにならないだろうが!」

「ゲームにする必要がないのだよ。お前らは黙って私に殺されればいい」

「うそだ……。もし……本当にもしもだ、仮に百歩譲ってお前が不死の能力者だとしても、必ず制限があるはずだ!」

「なら逆に、もしも何らかの条件があったとしても、クリア済みだったとしたなら?」

「あり得ない……。そんなことっ!」

「だが、現実に今、私は心臓を刺されても平気でいる。それどころか血一滴流してすらいない。これがその証明だよ」


 カイはアキラの握るナイフを彼の顔へと押しつけようとした。

 だが……。


「う、うわああ!」


 手を振り解かれ、そのまま逃げられてしまった。

 カイはやれやれと両の手を肩まで上げる。


「殺し損ねたようだな」


 能力者がカイの脳内へ話しかける。


「仕方ない。心理戦では勝てても、腕力は向こうが上だからね」

「それにしても、不死の能力イモータルとは……。質の悪い冗談だ」

「だが、全て見通せるお前と違い、あいつは他のプレイヤーの能力におびえている。半信半疑だとしても、わずかでも可能性があれば途端に恐怖が心を埋め尽くす。目の前にいる相手が不死身だと考えたら、一目散に逃げるのも頷ける」

「実際には、そんなことあり得ないのだがな」

「まあ、そう言うな。バレにくいというのはこの能力の長所でもあるのだから。レイジやテツヤのように大胆に暴れ回ることができない分、どんな能力なのか判別するのは容易でない。使い勝手や用途も申し分なく、私は満足しているよ」

「それはよかったな。だが忘れるな。お前の弱点の在処ありかは常に私が把握している」

「だが、お前は接近戦で私に勝ち目がない。つまるところ、お互いの目論見のどちらが上手くいくか、最初から勝負はその一点に委ねられている」


 能力者とカイは、まるで火花が散るような視線を交わすごとく、前方を睨んだ。そこに実際に相手はいなくとも、実際に視線は交わしていなくとも……。


「まあいい。せいぜい今の内に楽しむがいい」

「ありがとう。それじゃあ、お言葉に甘えてオサムを殺させてもらうとするよ」


 カイはナイフを構えつつ、ゆっくりと歩み出した。その様子は、まるで散歩でもするかのようにさわやかだった。

 カイの能力のヒントは既に出ています。

 予想してみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ