闇夜
カオルたちの会話は一段落した。だが、参加者たちの長い夜は続く。
明かり一つない町は真っ暗で、物音一つ聞こえない。どこまでも深い漆黒の闇は、まるでプレイヤーたちの不安や悪意を映し出しているかのように混沌としている。
この黒く染まったおぞましい空気に紛れ、自分を襲いに来る者がいるのではないか? プレイヤーたちは皆、そんな思いに駆られながらも何とか体を休めようとする。
闇は平等に恐怖を与える。
あるいは、この烏羽玉の夜に勝機が隠されているのではないか? そんな思いが鎌首をもたげても、死神の誘いではないかという疑念がなかなか行動には移させてくれない。
そんな中、一人の能力者だけはわかっていた。誰一人として、今夜襲撃を行おうとしている者はいないということを……。
その能力者は、まだ眠っていなかったカイの脳内へと言葉を送る。
「哀れだな。眠れない程にまで不安か」
「そりゃあ、誰かさんと違ってね。いいねえ、襲ってくるタイミングがわかる人は」
「私には不意打ちなど一切通用しない。全てはお見通しだ」
「それはよかったですねえ……」
カイは皮肉な笑い声を上げ、わざとらしく丁寧な口調で返した。
「で? わざわざからかうために話しかけてきたのかな?」
「用ならある。明日、面白いものが見られるだろう。期待しておくといい」
「こんな悪趣味な人が言う面白いものっていうのが、果たして本当に興味が湧くものなのか。甚だ疑問ではあるけどねえ……」
「見たくなければ別に構わん。もっとも、それは戦況を確認しないということになるが……」
「ああはいはい。わかったから」
カイはその言葉を遮った。
「わかればよろしい。まあ、お前の望み通り、いずれ対等の取り引きをするつもりだ。それまでの見せ物としては充分だろう」
「よく言うよ。最後に残す予定のプレイヤーはあいつだろう?」
「さあて、誰のことやら……」
「とぼけちゃって。自慢のその能力を使えば誰のことかなんてすぐわかるでしょ?」
「好きなように考えてくれればいい。それに関してこちらから渡す情報は何もない」
「まあ、どっちでもいいさ。所詮みんな敵同士なんだから、いずれは殺し合うことになる。それが早いか遅いかだけだ」
「間違いないな」
カイはフッと笑いを漏らし、空を見上げた。
「さて、それでは私はこれで失礼させてもらおう」
「寝るのかな?」
「さあて、どうだろうな」
「がっかりだなあ。安心して寝ようとしているのか否かだけでもわかれば、今夜に襲撃があるかどうかの目安になると思ったんだが……」
「お前と私は敵同士なのだろう? ならば、そのような情報を期待するのは虫が良すぎる話だ」
「それくらい教えてくれてもいいだろうに。まあ、最低限の備えはしておいたし、私もそろそろ寝るとするよ」
「そんなことを話してしまっていいのか? 私が能力を使って全プレイヤーへ伝えるかもしれないぞ? お前が今から寝るということ、お前のいる位置、その能力は何なのか、そしてお前の言ったその備えとやら、全部晒してやることもできるのだぞ?」
「私が言おうが言うまいが同じことだよ。何たって、私が寝たのか起きているのか、その能力があればすぐにわかるんだからね」
「そうか……」
能力者は苦笑を漏らした。
「まあ、せいぜいゆっくりと眠るんだな」
「お前のおかげで、とてもそうできそうにないよ」
会話はそこで終わりを告げる。
そして、そんな夜の町を死体が徘徊していた。
「これで一気に4体だ!」
マンションの一室で、オサムは狂気の笑みを浮かべていた。




