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魔のささやき

 その日はもうそれ以上の動きはなく、深夜を迎えた。

 トウヤたちは交代で見張ることにし、他のプレイヤーも身をひそめている。

 そんな中……。


「昼間の出来事が気になるようだな」

「っ!?」


 カオルの頭に声が響いた。


「……何か知っているの?」

「ああ、もちろんだ。私には全てのプレイヤーの思考が見えている。直接目にしていなくとも、そこから答えを導き出せる」

「それを教える代わりに、私に何をさせるつもり!?」

「そう身構えるな。私はただ教えるだけだ。その見返りなど求めていない」

「……だったら何のために!?」

「それが、自動的に私の得へつながるからだ。お前はただ聞くだけでいい」


 カオルはしばらく考え込んだが、やがて……。


「わかったわ。聞くだけよ」


 そう返事した。それが罠だとも知らずに……。


「よろしい。ならば教えよう。デュアルカンパニーを破壊したのはトウヤだ」

「トウヤ!? あいつが!?」


 あれ程の事件を起こしたのが、臆病者だというレッテルを貼られたトウヤだという事実。その予想外の真実にカオルは驚愕した。


「お前も知っての通り、あそこはタイチが拠点としていた。そのタイチを、デュアルカンパニーごと潰したというわけだ」

「テツヤとレイジに続いてタイチまで……」


 テツヤを殺したのはレイジであるが、そのことをカオルは知らなかった。


「ついでに言っておくと、トウヤは昨日の深夜にハルカも殺している」

「昨日……。それって、あの悲鳴のあった夜!?」

「ああ、そうだ。トウヤはお前が思っている程弱くない。加えて、サヨまで味方にしている。彼女はプレイヤーではなく能力を持たないが、それでも協力者の存在は大きい。あの時、お前はまとめて殺しておくべきだったな」


 あの時というのが、拳銃に化けてレイジを殺した時のことだとカオルにはすぐわかった。


「私は……委員長も襲おうとした。けれど避けられて、それ以上の深追いは危険そうだったから……」

「結果として、今お前に危険が迫っている。それはお前の落ち度だ、自覚しろ」


 カオルは何も言い返せず黙り込んだ。


「だが、別に私はそれを咎めたりはしない。もう一度殺しに向かえなどと言うつもりもない」

「……言わなくても、私自身がそうしなきゃ困るからでしょ!?」

「話が早くて助かる。少しは物わかりがよくなったようだな」

「……好きなだけ言ってなさいよ! あなたなんて、絶対に殺してやるんだから!」

「楽しみにしておくとしよう。それはそうと、お前に一つ知恵を授けてやろう。また拳銃に化けようとしている浅はかなお前にな」

「何が問題なのよ! 銃弾は唾液を変形させればいくらでも作り出せる! 私のトランスフォームは無敵よ!」

「それがトウヤたちにとって一番予想しやすいところが問題なのだ。奴はテレポートで被弾を避け、不意打ちを狙ってくるだろう」

「だったらどうすれば……」

「簡単だ。不意打ちされても殺される心配のないようにすればいい。体を鋼鉄にでも変えれば、何度ナイフで刺されようと問題ない」


 カオルはその作戦を聞き、ハッとして目を見開いた。


「それなら安全に勝てるかも……」

「実行に移すかどうかはお前次第だ。強制するつもりはない」

「……やらなきゃトウヤを野放しにしておくことになって、余計に危険なことになるって言いたいんでしょ?」

「その通りだ。健闘を祈っているよ」


 そう告げると、能力者は静かにほくそ笑んだ。

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