表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

苦戦! タイチのゾンビ作戦

 トウヤたちは足を踏み外さないよう、一段ずつ慎重に地下へと向かう。敵に気づかれないように、携帯のライトは手で覆うことにより調節する。

 そして、二人は下りきった先にあるドアの前へと立った。


「いい? 合図と同時にドアごと外して、私が電気を点ける。トウヤ君はすぐにテレポートできるように集中して」

「わかった」

「それじゃ、行くわよ……? 3、2、1……突撃!」


 サヨの声と同時にトウヤはドアを外へとテレポートさせた。その無音の奇襲開始に合わせ、サヨは手筈通り電気をつける。

 その瞬間、目の前にいたドッペルゲンガーの姿が照らし出され、両者の顔に緊張が走った。


「っ……!?」


 ドッペルゲンガーがナイフを突き出す。そのモーションがトウヤの脳内でゆっくりと流れ、瞬時の判断によりその腕へと敵より早く触れる。そして、そのままドッペルゲンガーを学校までテレポートさせた。


「やった! 上手く行った! これでじっくり地下の探索をしてタイチの能力を……」


 言いかけて、サヨが驚愕の表情を浮かべているのに気づき、トウヤもその視線を追った。倉庫と化している地下室で、物陰から様子を窺う顔があった。


「なっ!? 確かに遠くへ飛ばしたはずなのに、もう戻ってきている!?」

「トウヤ君、もう一度タイチを!」

「わかった!」


 トウヤは周りの景色を瞬時に頭へ入れながら、タイチへと駆け寄った。


「た、助けて!」


 タイチは両の手で持ったナイフを震わせ、目をつむった。

 と、その時。


「おっと! こいつには指一本触れさせねえぜ!」


 ドッペルゲンガーがタイチの前へと現れ、襲いかかってきた。


「タイチが二人!?」


 驚きつつもトウヤはその攻撃をテレポートでかわし、サヨのいる入り口まで戻った。


「そういうことだったのか……! 保健室で倒したあれは、タイチの能力によって作り出された偽物だったわけか!」

「そのようね。ということはきっと、タイチ本人を殺せば済むはずよ!」

「よし! そうとわかればこっちのもんだ!」


 トウヤはナイフを構え、突進した。


「わかったところでお前たちが死ぬことに変わりはない! 俺を倒せるもんならやってみやがれ!」


 そう言うとドッペルゲンガーもナイフを構え、トウヤへ向かって飛びかかった。

 だが、トウヤは冷静にテレポートで数歩下がり、相手の空振りに合わせて飛び込み返す。

 ナイフはドッペルゲンガーを確かに捉えた。だが、それに対しドッペルゲンガーは苦痛の表情を一切見せず、不敵な笑みを浮かべると煙のように消えた。

 そして、再度タイチの目の前で復活し、すぐさまトウヤへと襲いかかる。


「さあて、無限に戦い続けられる俺と、一度でも刺されれば致命傷となるお前……どちらが有利かな?」


 トウヤは必死にナイフを避け、そして攻めに転じる。

 しかし、いくら応戦しても、倒したそばから復活される。タイチ本体へと辿り着けないどころか、ずるずると後退させられてゆく。


「ほら! もう一人の俺の目の前まで瞬間移動してみろよ! その代わり、あの女の命は頂くけどな!」

「そんなこと……できるわけ……!」

「私はいいから、タイチを倒して!」


 サヨの悲痛な叫びが響いた。


「そんな! 委員長を犠牲になんかできない!」


 その様子を見てドッペルゲンガーは乱暴な笑い声を上げた。


「まあ、そういう手段もあるってだけだ。可能なら飛び込んできたお前自身を殺す。さっきの発言を勝手に解釈して、女を見殺しにすれば勝てるだなんて思わねえことだな」


 トウヤははなからサヨを見捨てるつもりなどなかった。だが、だからといって何か策があるわけでもない。

 ナイフをかわしながらもどうするべきかと頭を回転させるトウヤ。床に転がるダンボール箱に足を取られないよう気をつけるが、激しい攻防の末、ついにトウヤはつまづいてしまった。


「これで終わりだ!」


 思いっきり顔面を打ったせいでもがき苦しんでいるトウヤへと、ドッペルゲンガーは容赦なく襲いかかる。


「死ね!」


 何とかうつ伏せの状態から態勢を立て直しかけたそこへ、ナイフの切っ先が迫る。

 しかし、すんでのところでテレポートが間に合い事なきを得た。


「トウヤ君、大丈夫!?」

「うん、ギリギリだったけどね。でも、ダンボール箱が邪魔で上手く戦えない!」


 そう言って、トウヤは自分の言葉に引っかかりを覚えた。


「ダンボール箱……。そうか!」


 トウヤは瞬時にテレポートでダンボール箱の目の前へ移動した。散乱するそれらの内、一番ドッペルゲンガーから離れた位置、なおかつサヨのいる入り口に一番近い位置のものだ。つまり、敵に襲われにくく、サヨに矛先が向かった際に助けに向かうのにも最適の位置のもの。


「覚悟しろ、タイチ!」


 トウヤはそう叫ぶとダンボール箱へ触れ、タイチの頭上へと転移させた。


「なっ!? うわあ!」


 タイチもそれに気づき頭を手でかばう。

 そこへ重たいダンボール箱が直撃しようとしたその時。


「オラァ!」


 かけ声と共にドッペルゲンガーがそれを突き飛ばした。


「そんな……!」


 まさかの失敗にトウヤは呆然と立ち尽くす。


「言ったはずだぜ? こいつには指一本触れさせねえってな!」

「ダメだ……。これじゃ勝ち目がない……!」


 トウヤは頭を抱え込んで膝から崩れ落ちた。


「あきらめないで! まだ何か方法が!」

「ダメだよ委員長……。ここは一度逃げるしかない」


 トウヤは絶望に染まりきった顔をサヨへ向けた。


「トウヤ君……」


 サヨは悲しげな顔を見せた。


「一度逃げる、だと? 何を言ってやがるんだお前は! どこへ逃げようと俺はお前を殺しに向かう。何度でもな!」


 ここで逃げることは一見冷静に見える。だが、それはただ問題を先送りにするだけで、展望などが存在しているわけではない。

 それどころか、タイチ本体を追い詰めたというアドバンテージも、奇襲に成功したという優位性も失うこととなる。

 つまりは、ただこの場から逃げたいというトウヤの悪い癖でしかなかった。


「トウヤ君、ダメよ! 確かに危険を感じたら一度撤退しようと言ったけど、今はタイチも追い込まれているわ! 相手の立場になって考えればわかるはず。何とかして私たちを退けたいだけよ!」

「だって……勝てそうに思えないんだから仕方ないだろう!? 他にどうしようもないじゃん!」

「ここで退いたら、また暗い地下へ突入するところからやり直しよ!? 手口がバレた今、同じことが二度通用するかはわからないわ。第一、別な場所に拠点を移される可能性だってあるのよ!」

「そんなこと言ったって!」

「地下に追い詰めている今がチャンスよ! 戦って、トウヤ君!」

「どうやって……」


 絶望に染まりそうなトウヤの瞳の先で、ドッペルゲンガーが不敵な笑みを浮かべた。


「無理に決まってる! 臆病者のお前はそうやって逃げることしかできねえんだよ!」


 勝機を見出せないトウヤと、その様子を見て嘲笑あざわらうドッペルゲンガー。

 だがその時、またしてもある言葉がトウヤの頭に引っかかった。


「……あった。一つだけ、勝つ方法が!」


 トウヤの目の前に一条の光が射した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ