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正体不明の能力者

 その頃、公園では……。

 先程の黒い鳥が到着し、木の葉に姿を変え紛れ込んだ。

 そして、レイジ襲撃時のことを思い返す。



 ――数十分前、カオル周辺の出来事。


「さあ、どうするのか選べ」


 能力者がカオルの脳内へ言葉を直接流し込む。


「そんなこと言っても……私……」

「ほう、いいのだな? お前も先程の様子を見て知っている通り、レイジとテツヤは攻撃的な能力者だぞ?」


 その揺さぶりに、カオルはビクッと体を震わせた。


「お前がいくら隠れようと、町中に火をつけて回るか、あるいは目に映る全てのものをお前ごと振り回すだろう。今彼らがそうしないのは、まだ他のプレイヤーの存在があるからだ。その不安がなくなった後では、お前などすぐに殺されるだろう」


 その脅しを聞き、カオルは涙を零した。


「何でっ!? 何で私をそんなに殺したいの!?」

「何を言っている。私はお前の生き残る道を示してやっているだけだ」

「うそよ! どうせあなたも私を利用して殺そうと思っているだけなんだわ!」


 カオルは大声で泣き叫んだ。


「私が何をしたって言うの!? 何でこんなゲームにっ……!」

「甘えるな。全て自分のいた種だろう。お前はミクを陥れただけでは飽き足らず、今度はトウヤまで生贄いけにえに捧げた」


 その言葉にカオルはただ嗚咽だけを漏らした。


「お前は自分をいじめから救ってくれたミクを裏切り、同じ苦しみをトウヤへも与えた」

「仕方ないじゃない! やらなきゃ私、何されてたかわからないのよ……?」

「では、今も同じであろう? 殺さなければ殺される。お前が仕方なくいじめに参加していたと言うのなら、これも仕方のないことだ」

「……やらなかったら、どうする気なのよ?」

「別に? 私からは何もしない」

「……え?」


 予想外の返答に、カオルは目を見開いた。


「本当に……何も?」

「当然だ。何しろ、私がわざわざ手を下さずとも、お前はレイジたちに殺されるのだからな」

「っ……!」

「テツヤもいることを考えると、まず間違いなくお前のような能力者が潜んでいることに考えが至るだろう。もしそうじゃなくとも、今後戦いは激しさを増す。隠れているだけで生き延びられる程甘くはない」


 カオルは極限まで追い詰められ、言葉さえも失った。


「死にたくなかったらお前も学校に乗り込むことだな」


 そう言い残し、能力者の言葉は途切れた……。



 ――そして現在。


 木の葉へと姿を変えたカオルは、自分がレイジを殺したという現実を受け入れられず、震えていた。

 自分をおびやかす存在の始末は、彼女に1ミリの安息も与えず、むしろ後戻りのきかない罪悪感と、ただ漠然とした不安と恐怖をいだかせていた。


「……もう、こんな私なんて嫌だ! 私は、もっと強い人間に生まれてきたかった! いじめなんかに負けないような、強い子になりたかった!」


 カオルの悲痛な叫びが響く。


「私だって嫌なのよ……! 好きでいじめたんじゃない! だから……」


 カオルは嗚咽を交え、そして……。


「もうこれ以上私に酷いことしないでよ……」


 嘆きを静かに呟いた。


 一方、トウヤたちは……。


「変身の能力者は、次も積極的に仕掛けてくるのかな? それとも、今までおそらくそうしていたように、どこかに隠れて戦況を見守ってくるのかな?」

「さあ、わからないわ。トウヤ君は、どうして今回の戦いに乗ってきたと思う?」

「そうか、それがわかれば手がかりになるかもしれないね。ええと……」


 トウヤは自分が変身の能力者だと仮定して考えた。


「まず最初に浮かんだ理由は、今なら勝てると踏んだから、かな。僕と委員長が攻め込むという情報を得たから、数で押せると思ったか。それか、何らかの方法でテツヤが死んだことを知ったか、それ自体そいつが仕掛けた罠による仲違なかたがいだったか」

「いろいろ考えているのね」

「全部憶測に過ぎないけどね」


 トウヤは苦笑した。


「他に考えられるのは、能力の有利不利とかかな? 変身能力なら物体を移動させる能力をあざむけると考えたか。もしくは逆に、今倒しておかないと隠れる際に危険だったから、とか」

「それら複数の理由が重なったのかもしれないわね。それなら、戦う理由が薄れた今、再び動いてくる可能性は低いはずよ」

「いつ何をしてくるかわからないから、早めに倒しておきたかったんだけど……」

「無理そうね」


 サヨが溜息を吐いたその時、ドアが勢いよく開いた。同時に、狂気に満ちた顔が保健室内へと飛び込んでくる。


「なっ!?」


 トウヤは咄嗟にナイフを構え、襲ってくるその者の背後にテレポートし、背中を刺した。

 途端に敵は煙のように揺らめき、消えてしまった。


「今のって……」

「ああ、タイチだ。表情がまるで別人だったけど」


 トウヤはナイフを持つ手を見つめた。確かに刺した感触はあったのに、血は付着していない。


「幻だったのかしら?」

「いや、確かに実体を持っていた」

「じゃあ、煙になる能力?」

「わからない……。けど、もしそうならもっと上手く奇襲をかけられただろうし、追撃がないのも不自然だ。おそらく、もうここにはいないはず」

「そうね……。一体何の能力かしら?」


 サヨは首を傾げた。


「……答えの糸口が見つからない。何か手がかりをつかむまで、奇襲に備えて警戒するしかない」

「そうね。タイチが何かボロを出すまで待ちましょう」

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