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銃声と死

 乱れ飛ぶボールの大群をどうにか避けられないかと、トウヤは必死に頭を回転させる。だが、確実な手などあるはずもなく、結局は天命に全てをゆだねるしかなかった。


「……委員長はここにいて」

「そんな! 私も一緒に……」

「ダメだ!」


 トウヤの叫びがサヨの言葉を遮った。


「委員長は能力を持っていないんだから、あんな危険な場所に連れていけない。大丈夫、何かあったら校舎から見えるから、すぐに助けに向かうよ」

「私のことなんかより、トウヤ君が心配だわ。一人で乗り込むなんて無茶よ!」

「わかってる。けれど、委員長と一緒に向かって、その結果もしものことがあったら……」


 トウヤは言葉の途中で俯き、そして……。


「その方が、僕にとっては怖いことなんだ。それに、楽に死ねるのなら僕はそれでいい」


 トウヤは顔を上げると悲しげな笑みをサヨに見せ、その直後、テレポートを使用しその場から消えた。

 そして、レイジの背後に移動したトウヤは、そのまま不意打ちを狙うが……。


「うあっ!」


 丁度飛んできたボールにぶち当たり、倒れた。


「お? そこにいたのか」


 レイジはボールを止め、振り向いた。


「さてと、テツヤの次はお前が死ぬ番だ。ここに丁度いい武器があるんだが、どうしてやろうか」


 レイジはポケットに引っ掛けていた拳銃を取り出し、銃口をトウヤへと向けた。

 倒れた衝撃で頭を打ったトウヤは、目を閉じたままで応戦することができずにいる。


「さっきボールを暴れさせてた時に見つけたんだ。これでお前は終わりだ!」


 その言葉にトウヤはハッとし、目を見開いた。だが、もう引き金は引かれている。

 咄嗟のことで上手く対応できず、ただ顔を手で覆うトウヤ。だが、いつまで経っても何事も起こらない。


「……あれ? そんなはずはない! 確かに銃弾が入っていることは確認したのに、どうして!?」


 レイジが慌てた様子を見せたその時。銃の持ち手より上がくるりと180度回転し、レイジを向いた。


「は? え、何?」


 驚きのあまりレイジは固まり、直後にバン! という銃声が鳴り響いた。そして、拳銃はレイジの手からこぼれ落ち、程なくしてレイジ自身も崩れ落ちた。その脳天には風穴が開いている。


「い、一体何が……?」


 意味がわからず呆然と立ち尽くすトウヤ。その視線の先には、じ曲がった拳銃とレイジの死体が転がっている。

 と、そこへ……。


「トウヤ君!」


 銃声を聞いたサヨが階段を駆け上がってきた。


「委員長、僕は大丈夫だから……」


 そう言いかけた時、トウヤの視線を黒い鳥が横切った。それは、まっすぐサヨの方へと向かう。


「キャア!」


 サヨはそれを避けようとし、階段から転落した。

 黒い鳥はその上を通り過ぎ、ガラスを割って外へと逃げ去った。


「委員長!」


 トウヤは慌ててサヨのもとへ駆け寄った。


「大丈夫!? 委員長!」

「し、心配ないわ。頭は打ってないから……。痛た!」


 サヨは腕を押さえた。足もくじいており、立ち上がれずにいる。


「保健室に行こう。包帯とか残ってるかもしれないから」


 トウヤはサヨの手を取り、テレポートを使用した。

 そして、サヨをベッドへそっと座らせる。


「……ごめんね」

「何言ってるんだよ。僕のことを心配して来てくれたんでしょ? ありがとう」


 トウヤは包帯や冷却材を探しながら返事をする。


「トウヤ君が死んでもいいなんて言うから……私……。それに、突然銃声が聞こえて、トウヤ君が撃たれたんじゃないかって思って……」

「大丈夫、僕は撃たれてないよ。僕が撃ったわけじゃないけどね」

「え? それってどういう……」

「まずは手当てが先だよ」

「……うん」


 トウヤはサヨへと応急処置を済ませた。

 そして……。


「それで、さっきのことについて説明してくれる?」


 サヨが切り出し、本題へと入った。


「僕にも何が起きたのかわからないんだけど、レイジがどこからか見つけてきた拳銃を僕へと撃ったんだ。なのに銃弾が発射されなくて、レイジ自身も驚いてた。そして……」


 トウヤは少し考えた後、再び口を開いた。


「見間違いじゃなければ……銃の上半分だけが捻じれて、レイジを撃ったんだ」

「それって……」

「おそらく、また別なプレイヤーによるものだと思う」


 トウヤは先程起こったことを整理しつつ、自分の考えを話し始める。


「レイジはものを動かす能力で間違いない。あいつ、テツヤを殺したみたいなことを言っていた。既にテツヤはいないのにボールを動かし続けることができたのだから、やはりレイジがその能力で合っている。それなのに、あいつの持っていた拳銃は捻じ曲がった。他にも物体へ干渉することのできる能力者がいるのかもしれない」

「でも、それって能力の被りにならないかしら? それに、さっきの鳥も何だったのかわからないわ」

「そういえば……。まさか!」

「……トウヤ君?」

「ちょっと確かめてくる。すぐに戻るから」


 トウヤはテレポートで先程レイジと戦った場所へ移動し、すぐに戻ってきた。


「……なかった」

「どうしたの? なかったって何が?」

「さっきの拳銃……消えていた」

「それって……!」


 サヨはハッと息を呑んだ。


「すごくバカげた仮説を聞いてくれるかな? もしも、何にでも変身できる能力があったとしたら……さっきの出来事は全て辻褄つじつまが合うと思うんだ。委員長、鳥は拳銃をくわえてなかったよね?」

「ええ。はっきり見えたけれど、何も持ってなかった。それに、あの鳥はトウヤ君の背後に急に現れたわ。拳銃の落ちていた場所って、レイジが倒れていた場所から考えてもその辺りよね?」

「ああ、委員長の言う通りその場所だ……。ってことは、どこにでも容易に隠れることができて、委員長や僕に化けることも可能な敵がいるってことになる」

「それに、自分が武器に変身することができるのなら、攻撃面でも優秀な能力だと言えるわね」


 サヨのその言葉は、トウヤの不安をあおった。


「早めに何とかしないといけない……。このまま放っておいたら危険だ!」

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