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 それから2時間程が経過し、トウヤとサヨ、テツヤとレイジはそれぞれの作戦を練り、両者共に準備は整った。


「それじゃあ、今から乗り込むことになるけど……」


 トウヤは数秒間俯き、再び顔を上げた。


「本当に委員長も来て大丈夫なの? 殺し合いへ巻き込むことになるけど……」

「当然じゃない。トウヤ君を守るって約束したのは私よ。それに、深夜の戦闘で既に私はトウヤ君と一緒に戦っているわ。今更確認なんて必要ないわよ」

「そっか。ごめん……」

「トウヤ君こそ、怖くない? まだ殺すのを躊躇ためらっている?」


 トウヤは再び床を見つめ、数秒の間沈黙した。だが、意を決してサヨをまっすぐに見つめ、口を開いた。


「正直に言うと、怖いよ。それにやっぱり、心のどこかでまだ殺人に対する抵抗が残っている。けれど、逃げても何も解決しないってこと、少しだけわかった気がするんだ」


 トウヤは目を閉じ、深夜の残像を頭に浮かべた。


「ハルカさんの目を見て思ったんだ、きっと怖いのはみんな一緒だと。そしてそれは委員長も同じなはず。なのに、委員長は僕と戦ってくれている。だったらせめて、これ以上心配はかけたくないんだ」

「トウヤ君……」

「ごめん。変なことばかり言って。それじゃ、学校に行こう」

「うん」


 トウヤはサヨの手を取り、テレポートを発動した。

 移動先は第2特別授業室。選択科目など、同じクラスの生徒たちが別々な授業を受ける際に使用される部屋だ。例えば、物理を習う生徒は第2特別授業室、生物を習う生徒は自分たちのクラス、といった感じに。

 二人が移動先をそこへ選んだのは、なるべくレイジたちに気づかれないように侵入したかったからだ。玄関からバカ正直に入るなど以ての外だし、自分たちのクラスへ入るのも予想されやすい。また、理科室や音楽室などは罠を仕掛けられている可能性が高い。


 以上の理由からここ第2特別授業室へ移動したトウヤたちは、まず外の様子を確認する。正午に奇襲をかけられた時同様、浮遊しながら学校内を窓から見回っている可能性があるからだ。


「……いないみたいね」

「やっぱりどこかで待ち伏せしてるんだ。委員長、作戦通りの順番で見て回ろう」

「うん」


 二人は廊下へと出て探索を開始した。


 一方、その頃テツヤとレイジは……。


「あいつら、いつになったら来るんだ?」

「わからない。本当に来るのかどうかも、今日中に来るのかどうかも……」

「はあ? 冗談じゃねえぞ! 俺たちはそれまでずっと襲撃に備え続けろってか?」


 レイジは思わず立ち上がり、さらに言葉を続ける。


「大体、何で俺たちの本拠地へ招かなきゃならねえんだ! 俺たちはここを拠点としているんだぞ? これじゃ落ち着いて寝られないじゃねえか!」

「仕方ないだろう。そう命令されたんだから。逆らえば他のプレイヤーに情報を流される。それは僕らにとって大きく不利に働く」


 レイジは舌打ちし、顔をそむけた。


「まあ落ち着け。厄介なプレイヤーが減ってくれば、あいつは脅威でなくなる。その時があいつの命日だ」


 テツヤは握りしめたナイフをじっと見つめ、それからレイジへと視線を戻した。


「ところで、ちゃんと準備はできてるんだろうな? いつトウヤたちが来ても戦えるようにしておけよ」

「言われなくてもわかってら! 理科室に残ってた薬品は言われた位置に置いといた。実験用の硫化鉄と希塩酸、それに水素も少しだけあったからちょっとした爆発は起こせる。それと、音楽室にあった楽器も階段に設置しておいた」

「ご苦労。奴らがもしその場所を通ったらポルターガイストを使って反応を起こしてくれ」

「ああ。任せとけ」


 テツヤたちが罠を仕掛けたのは普段通っている自分たちのクラス、そして現在身を潜めている3階へと通じる階段の二か所だ。

 トウヤたちが警戒している理科室と音楽室にはあえて何も仕掛けず、要所となる位置に設置したのだった。


「どうにかして奴らの動きを見ることができたらいいんだけど、監視カメラみたいなものはないし、エレメントを利用して光を屈折……なんてことをしたらさすがにばれる」

「結局は受け身の態勢を取るしかないってことか。性に合わねえな」


 レイジは舌打ちした。


「まあ、向こうだって何が待ってるかわからない場所へ乗り込むんだ。気分的にはよくないだろう。恐る恐る進まなければならないんだし、僕らばかりが損しているわけではないさ。それに……」


 テツヤは不敵な笑みをレイジへと向けた。


「監視カメラはなくても、携帯ならある。そろそろ一巡してここに戻ってくる頃だろう?」

「さすがテツヤ。よくわかったな」


 レイジは窓をポルターガイストで開け、同じくポルターガイストにより外から写メを撮って回らせていた携帯を部屋へと入れた。


「文明の利器と超能力、それから僕の頭脳を使ってもこれが限度とはね。常にリアルタイムで見張ることのできる監視カメラには遠く及ばない」

「けどこれでわかったぜ? ほうら、奴らの姿がちゃあんと映ってら!」


 レイジはニヤリと笑い、画面をテツヤへ見せた。


「ようやく来たか。そして、その位置からその方向へ進んでいるということは……」


 テツヤは言葉を溜め、そして……。


「今だレイジ。罠を作動させろ」


 冷酷な笑みと共に、その宣言は静かに放たれた。


 そして、トウヤたちは……。


「いよいよ3階ね」

「ああ。委員長の読みが正しければこの先にレイジたちが……。うん? 何だ!?」


 階段を見上げていたトウヤたちに、突如楽器の雪崩なだれが襲いかかった。


「トウヤ君!」


 咄嗟にサヨは手を差し伸べ、トウヤはその手を握る。

 そして、間一髪のところで少し離れたところへとテレポートし、事なきを得た。


「やっぱり、この先にいるんだわ……。だから妨害のためにここへ罠を仕掛けたのよ」

「ああ。きっとその通りだと僕も……」


 トウヤのその言葉を遮り、教室から爆発音が響いた。


「まだ罠が!?」

「ここは一度隠れた方がいいわ」

「わかった!」


 トウヤはサヨと共にすぐそばの職員室へと入り、鍵をかけた。

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